77.俺の初めてをくれてやる
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「新津覚之進様、お願いがありますっ」
「願い」
出会ったばかりの俺に何の願いだ。
不思議そうに顔を向けながらも、比古は聞く姿勢をみせた。
「陶芸を始められるのですよね」
「あぁ、そうだ。そのつもりだ」
「でしたら、最初の作品を……初めての品を譲っては頂けませんでしょうか……」
「何と」
まだ初めてもいない陶芸の作品を欲しがるとは、比古も驚いて眉を浮かせた。
「フン、いいだろう。俺は何でもこなしてしまう男だからな。だがまずは釜から作らねばならん、時間が掛かるぞ、それでもいいのか」
「はい!是非っ」
「ははっ、そこまで惚れ込まれると悪い気はしないな。いいだろう、隠居生活のきっかけをくれた礼だ、俺の初めてをお前にくれてやろう」
「あっ、ありがとうございますっ」
……初めてをって、なんか恥ずかしい……
少し頬を染めながら、得意満面な笑みを見せる比古に礼を告げた。
繋がりを得ることに成功した。込み上げるもので胸の奥が熱くなっいく。
「おい親父、悪いが橋渡しになってくれ。俺がいつか焼き物を完成させたらここに預ける。お前はここで受け取れ。それでいいか」
この酒屋が比古の行きつけなのだろうか、比古の申し出を快く引き受け、店の主人は何度も頷いた。
「はいっ、構いません」
夢主も快く頷いた。
この酒屋にまたやって来ることが分かれば、今はそれで構わない。次の機会が必ず得られるはずだ。
「気長に待っていろ」
比古は歩き出しながらそう言うと、肩越しに夢主に笑いかけて暖簾をくぐった。
通り過ぎる瞬間、黙って見ていた沖田を無表情で一瞥し去って行った。
比古は巷を騒がせている抜刀際が緋村剣心だと既に気付いているのだろうか。
夢主は比古が抜刀斎と対立する沖田に瞬間的に向けた顔を見て胸騒ぎを感じ、喜び浮かれた気持ちは一気に静まってしまった。
「やりましたね、夢主ちゃん」
「はいっ、良かったです……これで繋がりが持てました……」
この店でも沖田は主人への感謝の意を込めて酒を買った。
「お酒こんなに……土方さんに見つかったら怒られちゃいそうだな」
「ふふっ、引越し祝いってことで」
「それじゃあ少ないなっ、あはははっ」
酒をぶら下げ、二人はゆっくり西本願寺に向かった。
「それにしても……あの新津さん、ただならぬお人ですね、すれ違いざま正直生きた心地がしませんでした。あんな感覚は初めてかもしれない……」
僅かに視線を落として歩く沖田は静かに本音を語った。
すれ違いざまに向けられた視線と同時に剣気を浴びたのだろうか、夢主に比古の剣気や殺気は分からなかったが、それでも二人の間に剣呑な空気を感じた。
自分の力を嘆くように語る沖田を慰めるつもりで夢主は呟いた。
「丘の上の黒船……ご自分でそんなことを仰っていました」
「黒船……成る程ね、確かにそれだけの力はありそうなお方でしたね、僕もまだまだだな……あんな所で思い知らされるとは……思いませんでした」
「沖田さん……」
「あははっ、夢主ちゃんが頼りにする人だけありますね!!僕も負けないよう鍛錬しましょう!!」
「ふふっ、沖田さんは頑張り屋さんですね」
「ははっ」
人からはいつも天才だと言われ、子供の頃は木刀を持てば神童とさえ言われた沖田。
誰よりも努力家であることを夢主は知っていた。
「願い」
出会ったばかりの俺に何の願いだ。
不思議そうに顔を向けながらも、比古は聞く姿勢をみせた。
「陶芸を始められるのですよね」
「あぁ、そうだ。そのつもりだ」
「でしたら、最初の作品を……初めての品を譲っては頂けませんでしょうか……」
「何と」
まだ初めてもいない陶芸の作品を欲しがるとは、比古も驚いて眉を浮かせた。
「フン、いいだろう。俺は何でもこなしてしまう男だからな。だがまずは釜から作らねばならん、時間が掛かるぞ、それでもいいのか」
「はい!是非っ」
「ははっ、そこまで惚れ込まれると悪い気はしないな。いいだろう、隠居生活のきっかけをくれた礼だ、俺の初めてをお前にくれてやろう」
「あっ、ありがとうございますっ」
……初めてをって、なんか恥ずかしい……
少し頬を染めながら、得意満面な笑みを見せる比古に礼を告げた。
繋がりを得ることに成功した。込み上げるもので胸の奥が熱くなっいく。
「おい親父、悪いが橋渡しになってくれ。俺がいつか焼き物を完成させたらここに預ける。お前はここで受け取れ。それでいいか」
この酒屋が比古の行きつけなのだろうか、比古の申し出を快く引き受け、店の主人は何度も頷いた。
「はいっ、構いません」
夢主も快く頷いた。
この酒屋にまたやって来ることが分かれば、今はそれで構わない。次の機会が必ず得られるはずだ。
「気長に待っていろ」
比古は歩き出しながらそう言うと、肩越しに夢主に笑いかけて暖簾をくぐった。
通り過ぎる瞬間、黙って見ていた沖田を無表情で一瞥し去って行った。
比古は巷を騒がせている抜刀際が緋村剣心だと既に気付いているのだろうか。
夢主は比古が抜刀斎と対立する沖田に瞬間的に向けた顔を見て胸騒ぎを感じ、喜び浮かれた気持ちは一気に静まってしまった。
「やりましたね、夢主ちゃん」
「はいっ、良かったです……これで繋がりが持てました……」
この店でも沖田は主人への感謝の意を込めて酒を買った。
「お酒こんなに……土方さんに見つかったら怒られちゃいそうだな」
「ふふっ、引越し祝いってことで」
「それじゃあ少ないなっ、あはははっ」
酒をぶら下げ、二人はゆっくり西本願寺に向かった。
「それにしても……あの新津さん、ただならぬお人ですね、すれ違いざま正直生きた心地がしませんでした。あんな感覚は初めてかもしれない……」
僅かに視線を落として歩く沖田は静かに本音を語った。
すれ違いざまに向けられた視線と同時に剣気を浴びたのだろうか、夢主に比古の剣気や殺気は分からなかったが、それでも二人の間に剣呑な空気を感じた。
自分の力を嘆くように語る沖田を慰めるつもりで夢主は呟いた。
「丘の上の黒船……ご自分でそんなことを仰っていました」
「黒船……成る程ね、確かにそれだけの力はありそうなお方でしたね、僕もまだまだだな……あんな所で思い知らされるとは……思いませんでした」
「沖田さん……」
「あははっ、夢主ちゃんが頼りにする人だけありますね!!僕も負けないよう鍛錬しましょう!!」
「ふふっ、沖田さんは頑張り屋さんですね」
「ははっ」
人からはいつも天才だと言われ、子供の頃は木刀を持てば神童とさえ言われた沖田。
誰よりも努力家であることを夢主は知っていた。