76.露見
夢主名前設定
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「まぁ、俺がお前のそばにいたとしたら、いいぜ」
「本当ですかっ!」
「あぁ、止めるのは無理だが終わるまで見てやるよ。最初から最後までな」
「えぇっ……」
斎藤は艶めかしく顔をやおら動かし夢主を見下ろして瞳に捉えた。
「お前がいたぶられているのを見ててやる、フッ、流石に気分のいいもんじゃあ、ないだろうな」
「いたぶっ……さ、斎藤さんっ!!」
致し方無しとばかりに顔をしかめて見せる斎藤だが、故意に夢主を困らせようとしているのが伝わってくる。
流し目に捉えられた夢主は、頬を染めて斎藤をきつく睨んだ。
そんなに睨もうが上目遣いになるだけで無駄だぜ、可笑しくて堪らない斎藤は尚も続けた。
「フン、約束は仕方が無かろう、その後俺が慰めてやるよ」
「も、もおっ!もういいです……」
斎藤の言葉に夢主は度が過ぎますと怒り、真っ赤な顔を逸らして目を伏せた。
……でも土方さんの生きる力になってくれるなら……
「嘘は、突き通します。土方さんに生きて欲しいから……」
「そうか」
「ひゃっ」
斎藤はおもむろに夢主の頭をわし掴んで離した。
驚いた夢主は反射的に顔を上げた。
「引越しの準備をしておけよ。荷物は無いだろうが、挨拶を……済ましておけ。お前だけここに残っても構わんのだろうがな」
「一緒に行きます……ここを離れるのは淋しいですが……」
「そうか」
夢主が頷いて斎藤を見つめていると、心なしか優しい瞳に変わっていった。
いつも気に掛けてくれて、たまにやきもち妬きで、頼りになるけれど悪い冗談で頻繁に苛める瞳。
「ふふっ……」
「なんだ」
「いえっ、私の居場所は……斎藤さんの隣です……なんて思っただけですっ!な、何でもありませんっ」
素直に口にしたものの、言葉の意味の恥ずかしさに顔を染めて夢主は顔を逸らした。
すっかり火照って熱くなった顔を隠したまま、衝立の向こうに逃げ込んだ。
「明日……ご挨拶に行きます……」
「あぁ。早い方がいい。赤くなりすぎて熱を出すなよ」
「わ、わかってますっ!お、おやすみなさい……」
「ククッ……おやすみ」
山南と伊東の件で混乱して気落ちしていた夢主だが、斎藤との他愛の無い話ですっかり気分が上向いた。
斎藤はその様子を確認すると聞こえぬように小さくフゥと息を吐いた。部屋の灯りを消して布団の上に腰を下ろす。
そのうちに沖田が戻ってくるだろう、それまでは起きていようと座ったのだ。
「ここを去るのか」
ぽつりと呟くと斎藤は感慨深げに暗くなった自分の部屋を眺めた。
……たかだか二年、だが随分と長くて濃いものだったな……
瞳を閉じると、この屯所に足を踏み入れたあの日からの出来事が一気に蘇ってくる。
……新しい屯所に移ろうが、やることは変わらん……
斎藤は薄すら目を開けると、脳裏に浮かんだ抜刀斎の姿にニヤリと目を細めた。
そうだ、楽しくないはずが無い……
そう心で呟き再び目を閉じた。
周りが全てが固まってしまったかと思うほど、静かな夜の空気に斎藤の気が研ぎ澄まされていった。
「本当ですかっ!」
「あぁ、止めるのは無理だが終わるまで見てやるよ。最初から最後までな」
「えぇっ……」
斎藤は艶めかしく顔をやおら動かし夢主を見下ろして瞳に捉えた。
「お前がいたぶられているのを見ててやる、フッ、流石に気分のいいもんじゃあ、ないだろうな」
「いたぶっ……さ、斎藤さんっ!!」
致し方無しとばかりに顔をしかめて見せる斎藤だが、故意に夢主を困らせようとしているのが伝わってくる。
流し目に捉えられた夢主は、頬を染めて斎藤をきつく睨んだ。
そんなに睨もうが上目遣いになるだけで無駄だぜ、可笑しくて堪らない斎藤は尚も続けた。
「フン、約束は仕方が無かろう、その後俺が慰めてやるよ」
「も、もおっ!もういいです……」
斎藤の言葉に夢主は度が過ぎますと怒り、真っ赤な顔を逸らして目を伏せた。
……でも土方さんの生きる力になってくれるなら……
「嘘は、突き通します。土方さんに生きて欲しいから……」
「そうか」
「ひゃっ」
斎藤はおもむろに夢主の頭をわし掴んで離した。
驚いた夢主は反射的に顔を上げた。
「引越しの準備をしておけよ。荷物は無いだろうが、挨拶を……済ましておけ。お前だけここに残っても構わんのだろうがな」
「一緒に行きます……ここを離れるのは淋しいですが……」
「そうか」
夢主が頷いて斎藤を見つめていると、心なしか優しい瞳に変わっていった。
いつも気に掛けてくれて、たまにやきもち妬きで、頼りになるけれど悪い冗談で頻繁に苛める瞳。
「ふふっ……」
「なんだ」
「いえっ、私の居場所は……斎藤さんの隣です……なんて思っただけですっ!な、何でもありませんっ」
素直に口にしたものの、言葉の意味の恥ずかしさに顔を染めて夢主は顔を逸らした。
すっかり火照って熱くなった顔を隠したまま、衝立の向こうに逃げ込んだ。
「明日……ご挨拶に行きます……」
「あぁ。早い方がいい。赤くなりすぎて熱を出すなよ」
「わ、わかってますっ!お、おやすみなさい……」
「ククッ……おやすみ」
山南と伊東の件で混乱して気落ちしていた夢主だが、斎藤との他愛の無い話ですっかり気分が上向いた。
斎藤はその様子を確認すると聞こえぬように小さくフゥと息を吐いた。部屋の灯りを消して布団の上に腰を下ろす。
そのうちに沖田が戻ってくるだろう、それまでは起きていようと座ったのだ。
「ここを去るのか」
ぽつりと呟くと斎藤は感慨深げに暗くなった自分の部屋を眺めた。
……たかだか二年、だが随分と長くて濃いものだったな……
瞳を閉じると、この屯所に足を踏み入れたあの日からの出来事が一気に蘇ってくる。
……新しい屯所に移ろうが、やることは変わらん……
斎藤は薄すら目を開けると、脳裏に浮かんだ抜刀斎の姿にニヤリと目を細めた。
そうだ、楽しくないはずが無い……
そう心で呟き再び目を閉じた。
周りが全てが固まってしまったかと思うほど、静かな夜の空気に斎藤の気が研ぎ澄まされていった。