75.灯火
夢主名前設定
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「巡察帰りの報告で伝えた通りですが、抜刀斎はその名の通り、やはり抜刀術が得意のようです。身が軽く足が疾い、恐らく沖田君と同じくらい足も手も疾いでしょう。今回は仲間を逃がして自らも逃走しました」
「やはりそうなのか。何故向かってこない」
「分かりません、ただ現れた時にしきりに退けと、こちらに告げていました。暗殺家業の抜刀斎が何故急に姿を現したかは分かりませんが、戦い方や目的にも変化があるのかもしれません」
「仲間を無事逃がす事が目的、殺しじゃないってことか」
斎藤は頷いて応えた。
「だが向かって行った時、奴は本気で殺す気で掛かって来た。今度会った時はこの俺が……首を取って見せます」
「頼もしいな。抜刀斎の話はみんなにも伝えておくぜ」
斎藤と対等にやり合えたのならば相当な遣い手だ。
少しでも気構えが出来るように貴重な情報を共有せねば。
「殺るのは俺ですよ」
「まぁ出会った奴が殺るだろう」
「抜刀斎を殺れるのは俺しかいません」
「そうか、」
斎藤の珍しい執着を見て、土方はたしなめるのを止めた。
「思えばお前とは十近くも歳が違うんだよな」
「突然何です」
今更、歳の話を持ち出すなどらしくない。
土方を見ると感慨深げに腕を組んでいた。
「いや、お前は頼りになる。力もある。ただ、つい自分と同じように考えちまうのが……時にお前にとって負担なんじゃねぇかとな、迷うことだってあるだろう。自分の中に沸き起こる理不尽なものも。お前だって人の子だ」
人の子と言われ斎藤は思わず失笑した。
当然だ、誰だって血の通った人の子であるから、考えもすれば時に悩むこともある。
改めて言われたら奇妙な気分だ。
「お前が迷った時や困った時は俺に話せよ、いつも聞いてるばかりでよ、お前も言いたいことは言って来い。夢主のことだって力になってやる。助けて欲しけりゃ、遠慮するな」
助け……か。
斎藤は自嘲するようにフッと鼻をならした。
「お前が壊れるのは見てられねぇ。夢主が傷つくのもな」
散々に傷付けた自分が言える言葉では無いかもしれないが……
話した土方は苦しそうに顔を歪めた。
「その言葉だけありがたく頂戴いたします」
ニッと口角を持ち上げて見せると、土方はやれやれと苦笑いを返した。
「今日中に総司が戻るかもしれねぇ。夢主が起きたら気遣ってやれよ、それによく謝って……」
「分かっています。フッ、ご心配をお掛けしますね」
こんなにもあれこれと個人的な指示を出すのは珍しい。
余程、俺の若さが気になるのか。
斎藤は己がそんなにも頼りないかと、笑いながら部屋をあとにした。
「やはりそうなのか。何故向かってこない」
「分かりません、ただ現れた時にしきりに退けと、こちらに告げていました。暗殺家業の抜刀斎が何故急に姿を現したかは分かりませんが、戦い方や目的にも変化があるのかもしれません」
「仲間を無事逃がす事が目的、殺しじゃないってことか」
斎藤は頷いて応えた。
「だが向かって行った時、奴は本気で殺す気で掛かって来た。今度会った時はこの俺が……首を取って見せます」
「頼もしいな。抜刀斎の話はみんなにも伝えておくぜ」
斎藤と対等にやり合えたのならば相当な遣い手だ。
少しでも気構えが出来るように貴重な情報を共有せねば。
「殺るのは俺ですよ」
「まぁ出会った奴が殺るだろう」
「抜刀斎を殺れるのは俺しかいません」
「そうか、」
斎藤の珍しい執着を見て、土方はたしなめるのを止めた。
「思えばお前とは十近くも歳が違うんだよな」
「突然何です」
今更、歳の話を持ち出すなどらしくない。
土方を見ると感慨深げに腕を組んでいた。
「いや、お前は頼りになる。力もある。ただ、つい自分と同じように考えちまうのが……時にお前にとって負担なんじゃねぇかとな、迷うことだってあるだろう。自分の中に沸き起こる理不尽なものも。お前だって人の子だ」
人の子と言われ斎藤は思わず失笑した。
当然だ、誰だって血の通った人の子であるから、考えもすれば時に悩むこともある。
改めて言われたら奇妙な気分だ。
「お前が迷った時や困った時は俺に話せよ、いつも聞いてるばかりでよ、お前も言いたいことは言って来い。夢主のことだって力になってやる。助けて欲しけりゃ、遠慮するな」
助け……か。
斎藤は自嘲するようにフッと鼻をならした。
「お前が壊れるのは見てられねぇ。夢主が傷つくのもな」
散々に傷付けた自分が言える言葉では無いかもしれないが……
話した土方は苦しそうに顔を歪めた。
「その言葉だけありがたく頂戴いたします」
ニッと口角を持ち上げて見せると、土方はやれやれと苦笑いを返した。
「今日中に総司が戻るかもしれねぇ。夢主が起きたら気遣ってやれよ、それによく謝って……」
「分かっています。フッ、ご心配をお掛けしますね」
こんなにもあれこれと個人的な指示を出すのは珍しい。
余程、俺の若さが気になるのか。
斎藤は己がそんなにも頼りないかと、笑いながら部屋をあとにした。