74.其々の退けぬ夜
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「斎藤さんっ」
思い改まって戻ってきたのかと声高らかに障子を開けた夢主、そこには驚いた顔の土方が立っていた。
「おっ……巡察報告を受けたんだがよ、その件で……詳しく聞きたいと思ったんだが斎藤はいねぇようだな。斎藤じゃなくて悪かったな」
斎藤の姿を期待して戸を開けた夢主に悪戯に笑いかけた。
「そんなっ……斎藤さんは多分……外に……」
「こんな夜によく出て行く気になれるよな」
山南さんが気がかりじゃないのか……土方は切なそうに目を伏せた。
「おっ、夢主っ」
土方は顔を上げて、何かに気付いたように自分の胸元を指差した。
何だろうと夢主も自らの胸元に目を落とせば、先程斎藤に組み敷かれた時に緩められた胸元が、たらん……と緩み、悩ましい隙間が出来ていた。
「あぁっ」
恥じらって慌てて直すさまを笑って見ていた土方だが、笑いをおさめると首を傾げて覗き込むように、だが真面目に話しかけた。
火照った顔に涙目の夢主が気に掛かった。
「何だお前、まさか斎藤に襲われたのか」
「そっ……それは……」
土方を見上げると正直に言ってみろと真っ直ぐ見つめ返されていた。
その視線に敵わず小さく頷いた夢主。
土方はそうかぁ……と参った様子で腰に手をあてた。
「それでどうしたんだ、斎藤は出て行ったんだろう」
「斎藤さんを……叩いちゃいました……」
「っぷっはははははは!!そいつは本当か!!そりゃあいいな!!ははははっ!!」
正直に告げ、仮にも幹部の斎藤を……
怒られると思った夢主だが、目の前で土方は大笑いした。
「お前いいなぁ、最高だぜ。いい女だな」
「なっ、なんでそこでいい女って評価になるのかは分かりませんけど……怒られるかと思いました……」
「怒らねぇよ」
ぽんぽんと肩を叩くと更に笑って言った。
「あいつを引っ叩くとはなぁ、あぁ面白いぜ」
「だって……それしか出来なかったんです……」
「でもそれで止めてくれて良かったな、俺だったら引っ叩かれても止めねぇぞ」
その言葉につい土方を「えっ……」と素直な顔で見てしまった。
土方もすぐに失言に気が付き、誤魔化して話を続けた。
「あー、まぁでも、ほら、きっとまたどうせ死んだような顔で戻ってくるからよ、許してやれよ……」
「また……?」
「おっ、知らなかったのか、こいつはしまったな」
重なる失言に土方は珍しく降参だとばかりに片目を細めて目配せをした。
「俺が言ったって言うなよ、大坂であいつ、女を買って死にそうな顔して戻ってきたんだよ。その様子が可笑しくって周りに笑われたくらいだぜ。きっと今回も後悔に苛まれて暗い顔して帰ってくるさ」
「そっそんなことが……知りませんでした……」
「今更、責めてやるなよ」
「はぃ……でも、そんなものなんでしょうか……」
「あぁ、そうだろうよ」
「そんな思いするなら行かなきゃいいのに……」
してから後悔するのが男ってもんなんだよ……
土方は苦虫を噛み潰したような顔で、夢主の言葉を聞いた。
斎藤への言葉が自分のことのように突き刺さった。
「まぁそう言うな。それで済まねぇのが男の辛い所だなぁ……まぁこんな夜にお前を襲った挙句、ひとり置いて行った斎藤への罰だな、罰!」
「ふふっ、前にも聞いたような台詞ですっ」
「ははっ、仕方ねぇ。しかし斎藤が壊れるとはな……お前は大丈夫か、怖くはないか。淋しくねぇか……総司はもう今夜は戻らねぇぞ」
様々な不安が襲っているだろう。
土方は心から案じて言葉を掛けた。
「大丈夫です……」
「そうか。不安なら俺が……」
「結、構、ですっ」
「いででっ、ちょっと乱暴だぞお前、顎押すなっ、何もしねぇよっ」
夢主はむすっとしながら両手で土方の顎をぐいっと押し上げた。
手を離しても、土方を睨んだ。
斎藤に驚かされたばかりで、そんな冗談を言うなんて酷いと怒っている。
「俺は今夜は屯所にいるから、何かあったら飛んできてやるよ、大丈夫だ。あと、俺は何もしねぇからなっ!今はただ……お前の望むようにと思ってるぜ」
俺を信じろよ、と頭をわし掴んで土方は夢主から離れた。
「お休みよっ、夢主」
「はぃっ……お休みなさい……」
最後は優しく微笑んで部屋を去った土方。
夢主は結局斎藤の去った部屋でひとり朝を迎えることになった。
思い改まって戻ってきたのかと声高らかに障子を開けた夢主、そこには驚いた顔の土方が立っていた。
「おっ……巡察報告を受けたんだがよ、その件で……詳しく聞きたいと思ったんだが斎藤はいねぇようだな。斎藤じゃなくて悪かったな」
斎藤の姿を期待して戸を開けた夢主に悪戯に笑いかけた。
「そんなっ……斎藤さんは多分……外に……」
「こんな夜によく出て行く気になれるよな」
山南さんが気がかりじゃないのか……土方は切なそうに目を伏せた。
「おっ、夢主っ」
土方は顔を上げて、何かに気付いたように自分の胸元を指差した。
何だろうと夢主も自らの胸元に目を落とせば、先程斎藤に組み敷かれた時に緩められた胸元が、たらん……と緩み、悩ましい隙間が出来ていた。
「あぁっ」
恥じらって慌てて直すさまを笑って見ていた土方だが、笑いをおさめると首を傾げて覗き込むように、だが真面目に話しかけた。
火照った顔に涙目の夢主が気に掛かった。
「何だお前、まさか斎藤に襲われたのか」
「そっ……それは……」
土方を見上げると正直に言ってみろと真っ直ぐ見つめ返されていた。
その視線に敵わず小さく頷いた夢主。
土方はそうかぁ……と参った様子で腰に手をあてた。
「それでどうしたんだ、斎藤は出て行ったんだろう」
「斎藤さんを……叩いちゃいました……」
「っぷっはははははは!!そいつは本当か!!そりゃあいいな!!ははははっ!!」
正直に告げ、仮にも幹部の斎藤を……
怒られると思った夢主だが、目の前で土方は大笑いした。
「お前いいなぁ、最高だぜ。いい女だな」
「なっ、なんでそこでいい女って評価になるのかは分かりませんけど……怒られるかと思いました……」
「怒らねぇよ」
ぽんぽんと肩を叩くと更に笑って言った。
「あいつを引っ叩くとはなぁ、あぁ面白いぜ」
「だって……それしか出来なかったんです……」
「でもそれで止めてくれて良かったな、俺だったら引っ叩かれても止めねぇぞ」
その言葉につい土方を「えっ……」と素直な顔で見てしまった。
土方もすぐに失言に気が付き、誤魔化して話を続けた。
「あー、まぁでも、ほら、きっとまたどうせ死んだような顔で戻ってくるからよ、許してやれよ……」
「また……?」
「おっ、知らなかったのか、こいつはしまったな」
重なる失言に土方は珍しく降参だとばかりに片目を細めて目配せをした。
「俺が言ったって言うなよ、大坂であいつ、女を買って死にそうな顔して戻ってきたんだよ。その様子が可笑しくって周りに笑われたくらいだぜ。きっと今回も後悔に苛まれて暗い顔して帰ってくるさ」
「そっそんなことが……知りませんでした……」
「今更、責めてやるなよ」
「はぃ……でも、そんなものなんでしょうか……」
「あぁ、そうだろうよ」
「そんな思いするなら行かなきゃいいのに……」
してから後悔するのが男ってもんなんだよ……
土方は苦虫を噛み潰したような顔で、夢主の言葉を聞いた。
斎藤への言葉が自分のことのように突き刺さった。
「まぁそう言うな。それで済まねぇのが男の辛い所だなぁ……まぁこんな夜にお前を襲った挙句、ひとり置いて行った斎藤への罰だな、罰!」
「ふふっ、前にも聞いたような台詞ですっ」
「ははっ、仕方ねぇ。しかし斎藤が壊れるとはな……お前は大丈夫か、怖くはないか。淋しくねぇか……総司はもう今夜は戻らねぇぞ」
様々な不安が襲っているだろう。
土方は心から案じて言葉を掛けた。
「大丈夫です……」
「そうか。不安なら俺が……」
「結、構、ですっ」
「いででっ、ちょっと乱暴だぞお前、顎押すなっ、何もしねぇよっ」
夢主はむすっとしながら両手で土方の顎をぐいっと押し上げた。
手を離しても、土方を睨んだ。
斎藤に驚かされたばかりで、そんな冗談を言うなんて酷いと怒っている。
「俺は今夜は屯所にいるから、何かあったら飛んできてやるよ、大丈夫だ。あと、俺は何もしねぇからなっ!今はただ……お前の望むようにと思ってるぜ」
俺を信じろよ、と頭をわし掴んで土方は夢主から離れた。
「お休みよっ、夢主」
「はぃっ……お休みなさい……」
最後は優しく微笑んで部屋を去った土方。
夢主は結局斎藤の去った部屋でひとり朝を迎えることになった。