74.其々の退けぬ夜
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新選組に追われていた仲間を逃がすと、緋村は役目を果たし終えたとばかりに一目散に逃げ、姿を消した。
要らぬ争いは望まない……彼の想いが行動に表れていた。
「壬生狼……あの女……夢主殿が戻りたかった場所……いや、今の俺には誰かを気にかける資格すらないんだ……」
立ち去る途中、脳裏に浮かんだ懐かしい姿を無理矢理払拭した。
「大事なものを自ら殺めてしまったこの俺に……」
頭を垂れて目を落とした先で、赤黒い汚れが見えた。
掌に残る汚れ、刀を納める時に一緒に血を拭き取ったはずなのに。
懐紙を取り出す気力を失っていた緋村は、袖口に手を擦りつけて汚れを拭いた。
追っ手がないのを確認し、緋村は暗く冷たい路地を静かに歩き始めた。
緋村の姿を見失った斎藤達も帰路に就いていた。
「あれが人斬り抜刀斎!」
「あぁ凄かったな、だが斎藤先生も流石だ!」
「あのまま続いていたら間違いなく先生が勝っていましたよ!」
興奮冷めやらぬ隊士達は先程の斎藤と抜刀斎との対決を話題にしていた。
そんな高揚した声を聞くが、斎藤は冷静に剣戟の剣筋ひとつひとつを頭の中で思い返していた。
自らの手はどうだったのか、相手に隙は無かったのか、他に対処はあったのか。
ひたすら思考しながら歩いていた。
自然、口元がにやけていた。
「そういえば何時だったか、夢主を助けたのはあいつだったか……礼か、まぁいいだろう」
思い出したように呟くと、緋村の熱い眼差しを思い返した。
「いい目をしているぜ」
思い出すと斎藤の奥で再び熱く滾る物が沸き起こる。
今宵は緋村が早々に引いた為、互いに幾つか小傷を付けただけで終わった。斎藤には足りなかった。
……次だ、早く次が欲しい……
次なる対戦を熱望していた。更なる血を、渇きを埋めるものが欲しかった。
斎藤の渇きを知らない夢主は、沖田と山南を想い眠れずに一人の部屋で起きていた。
夜が明ければきっと二人は戻り、山南の命が失われる……そう考えると、とても眠れない。
部屋に戻ってきた斎藤は気が昂ぶっていたせいか、夜が更けているにも関わらず勢いよく戸を開けた。
手にした刀をすぐに置いたかと思うと、衝立越しに夢主と目を合わせる。
「斎藤さん、ご無事で……」
「寝ていろと言っただろう」
いつも、毎回、出て行く度に告げている筈だ、寝ていろと。起きていても寝た振りをしていろと。
斎藤の声は低く凄んでいた。
斎藤は先程の激闘での昂ぶりに、自らの言いつけを守らないのかとの苛立ちを加え、夢主をじろりと睨んだ。
「斎藤さん……どうしたんですか……」
斎藤の身を案じた夢主は、おかしな視線が向けられるだけで言葉が返ってこず、俄かに不安になる。
要らぬ争いは望まない……彼の想いが行動に表れていた。
「壬生狼……あの女……夢主殿が戻りたかった場所……いや、今の俺には誰かを気にかける資格すらないんだ……」
立ち去る途中、脳裏に浮かんだ懐かしい姿を無理矢理払拭した。
「大事なものを自ら殺めてしまったこの俺に……」
頭を垂れて目を落とした先で、赤黒い汚れが見えた。
掌に残る汚れ、刀を納める時に一緒に血を拭き取ったはずなのに。
懐紙を取り出す気力を失っていた緋村は、袖口に手を擦りつけて汚れを拭いた。
追っ手がないのを確認し、緋村は暗く冷たい路地を静かに歩き始めた。
緋村の姿を見失った斎藤達も帰路に就いていた。
「あれが人斬り抜刀斎!」
「あぁ凄かったな、だが斎藤先生も流石だ!」
「あのまま続いていたら間違いなく先生が勝っていましたよ!」
興奮冷めやらぬ隊士達は先程の斎藤と抜刀斎との対決を話題にしていた。
そんな高揚した声を聞くが、斎藤は冷静に剣戟の剣筋ひとつひとつを頭の中で思い返していた。
自らの手はどうだったのか、相手に隙は無かったのか、他に対処はあったのか。
ひたすら思考しながら歩いていた。
自然、口元がにやけていた。
「そういえば何時だったか、夢主を助けたのはあいつだったか……礼か、まぁいいだろう」
思い出したように呟くと、緋村の熱い眼差しを思い返した。
「いい目をしているぜ」
思い出すと斎藤の奥で再び熱く滾る物が沸き起こる。
今宵は緋村が早々に引いた為、互いに幾つか小傷を付けただけで終わった。斎藤には足りなかった。
……次だ、早く次が欲しい……
次なる対戦を熱望していた。更なる血を、渇きを埋めるものが欲しかった。
斎藤の渇きを知らない夢主は、沖田と山南を想い眠れずに一人の部屋で起きていた。
夜が明ければきっと二人は戻り、山南の命が失われる……そう考えると、とても眠れない。
部屋に戻ってきた斎藤は気が昂ぶっていたせいか、夜が更けているにも関わらず勢いよく戸を開けた。
手にした刀をすぐに置いたかと思うと、衝立越しに夢主と目を合わせる。
「斎藤さん、ご無事で……」
「寝ていろと言っただろう」
いつも、毎回、出て行く度に告げている筈だ、寝ていろと。起きていても寝た振りをしていろと。
斎藤の声は低く凄んでいた。
斎藤は先程の激闘での昂ぶりに、自らの言いつけを守らないのかとの苛立ちを加え、夢主をじろりと睨んだ。
「斎藤さん……どうしたんですか……」
斎藤の身を案じた夢主は、おかしな視線が向けられるだけで言葉が返ってこず、俄かに不安になる。