73.籤吉凶
夢主名前設定
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「駄目ですよ、斎藤先生!土方先生にきつく言われているんです、誰も入れるなと。風邪がうつったら大変ですし、何より夢主さんが休まらないでしょう」
そう言うと、ぐいぐい両手で斎藤の体を押して無理矢理外まで連れ出した。
鉄之助は相手が先生だろうがしっかり言い聞かせるつもりで、共に外に出て後ろ手で部屋の障子戸を閉じた。
「夢主は寝ているのか。調子はどうだ、布団が欲しいと言ったのか」
「はい、寒いと……」
「そうか……寒いなら、でこを冷やすのは止めておけ。それから」
「はい」
昔から風邪を引くと額を冷やす風習があるが、斎藤は寒がっているならそれはよせと助言した。
そしておもむろに自らの半纏を脱ぎ、鉄之助に手渡した。部屋を去るよう説得するつもりでいた鉄之助は驚いた。
「これも掛けてやれ」
「……はい」
きょとんとした顔で受け取った半纏を見つめる鉄之助、斎藤が歩き出した時にようやく顔を上げた。
「あ、ありがとうございます!夢主さんの面倒はちゃんと見ますからっ!」
「あぁ。熱が下がったら知らせろよ」
「はいっ」
斎藤の心遣いに何故か鉄之助が恥ずかしさを覚えてしまった。
夢主に対する優しさに頬が赤らむ。
「斎藤先生は、本当に夢主さんのことを……」
静かに部屋に戻ると、そっと布団の上に半纏をかけてやった。
すると慣れ親しんだ匂いに安らいだのか、夢主の辛そうな表情が俄かに和らいだ。
「あぁ……良かった……」
鉄之助は朝まで元気だったその姿を思い、早く熱が治まるように、祈る思いでそばに控えた。
その日は夕方までぐっすり眠った夢主、汗を掻いた気持ち悪さで目が覚めた。
汗を掻いて熱が下がったのか、寒気はすっかり引いていた。
このまま大人しくしていれば明日には動けるかもしれない、そんなことを考えながら体を起こした。
「夢主さん、大丈夫ですか」
そばに座っていた鉄之助は起き上がる姿を目にして静かに声を掛けた。
「はぃ……あの、凄く汗を掻いたので着替えたくて……席を外して欲しいんですけど……ごめんなさい」
「もっ、もちろんです!今すぐっ!」
読んでいた本を慌てて床に置き、飛び上がるように部屋の外に出ていった。
着替え出した夢主に、障子の向こうから声が掛かる。
「あのっ、ご飯食べられそうですか?お粥が宜しいですか」
「あ……そうですね、お粥をお願いします」
「はいっ!」
元気な返事を残して鉄之助が勢いよく去って行く足音が聞こえた。
「行っちゃった……」
斎藤であれば着替えの最中は必ず部屋の前から動かずに待っているのだが、着替え途中で置き去りにしてしまうなんて。この辺りは幼さ残る少年だなと、鉄之助が可愛らしく思えた。
そう言うと、ぐいぐい両手で斎藤の体を押して無理矢理外まで連れ出した。
鉄之助は相手が先生だろうがしっかり言い聞かせるつもりで、共に外に出て後ろ手で部屋の障子戸を閉じた。
「夢主は寝ているのか。調子はどうだ、布団が欲しいと言ったのか」
「はい、寒いと……」
「そうか……寒いなら、でこを冷やすのは止めておけ。それから」
「はい」
昔から風邪を引くと額を冷やす風習があるが、斎藤は寒がっているならそれはよせと助言した。
そしておもむろに自らの半纏を脱ぎ、鉄之助に手渡した。部屋を去るよう説得するつもりでいた鉄之助は驚いた。
「これも掛けてやれ」
「……はい」
きょとんとした顔で受け取った半纏を見つめる鉄之助、斎藤が歩き出した時にようやく顔を上げた。
「あ、ありがとうございます!夢主さんの面倒はちゃんと見ますからっ!」
「あぁ。熱が下がったら知らせろよ」
「はいっ」
斎藤の心遣いに何故か鉄之助が恥ずかしさを覚えてしまった。
夢主に対する優しさに頬が赤らむ。
「斎藤先生は、本当に夢主さんのことを……」
静かに部屋に戻ると、そっと布団の上に半纏をかけてやった。
すると慣れ親しんだ匂いに安らいだのか、夢主の辛そうな表情が俄かに和らいだ。
「あぁ……良かった……」
鉄之助は朝まで元気だったその姿を思い、早く熱が治まるように、祈る思いでそばに控えた。
その日は夕方までぐっすり眠った夢主、汗を掻いた気持ち悪さで目が覚めた。
汗を掻いて熱が下がったのか、寒気はすっかり引いていた。
このまま大人しくしていれば明日には動けるかもしれない、そんなことを考えながら体を起こした。
「夢主さん、大丈夫ですか」
そばに座っていた鉄之助は起き上がる姿を目にして静かに声を掛けた。
「はぃ……あの、凄く汗を掻いたので着替えたくて……席を外して欲しいんですけど……ごめんなさい」
「もっ、もちろんです!今すぐっ!」
読んでいた本を慌てて床に置き、飛び上がるように部屋の外に出ていった。
着替え出した夢主に、障子の向こうから声が掛かる。
「あのっ、ご飯食べられそうですか?お粥が宜しいですか」
「あ……そうですね、お粥をお願いします」
「はいっ!」
元気な返事を残して鉄之助が勢いよく去って行く足音が聞こえた。
「行っちゃった……」
斎藤であれば着替えの最中は必ず部屋の前から動かずに待っているのだが、着替え途中で置き去りにしてしまうなんて。この辺りは幼さ残る少年だなと、鉄之助が可愛らしく思えた。