72.重ねる望み
夢主名前設定
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何か思いを巡らせていたのか、長い時間ざわざわと賑やかな境内を眺めていた斎藤の腕組みが解けた。
体がゆったり動き、夢主は広い背中から顔と手を離す。
斎藤は静かに振り返った。
「戻るか」
いつもの声で訊ねられ、ゆっくりと頷いた。
今はまだ、言葉で伝え合う時ではないのだろう。
それでも互いを想う気持ちに偽りはない。それだけで……今はいい。
「ありがとうございます……」
言葉の真意を問うように斎藤は夢主を見た。
「何がだ、礼を言われることなど何も……」
「いえ……なんでもありませんっ!帰って続き呑みましょうっ」
夢主は弾ける笑顔に変わり、斎藤の背後から飛び出した。
斎藤が目で追うと、くるりと振り返っていつもの笑顔が見えた。
「斎藤さんっ、早くっ」
「フッ……」
気持ちを切り替えた夢主の清々しさが伝わるように、斎藤の気持ちも吹っ切れたものに変わっていた。
斎藤は夢主に追いつくと、隣りに並んだ。
「長いこと付き合わせたな。寒くはないか」
斎藤は石畳の上を歩きながら、ちらりと横目で夢主の様子を確認した。
白い息を吐きだして、いかにも寒そうだ。
「大丈夫ですっ、人出も多いし温かく感じますね」
「そうか」
「あっ……あそこの人だかりはなんでしょう……」
歩みの途中で、周囲より人が集まっている場所を控えめに指差した。
喜んだり気を落としたりする人々がいる。
「あれか、あそこは御籤だな」
「みくじ……おみくじですか?!」
「そうだ」
わぁっを顔を明るくした夢主は斎藤を見上げた。
「引きたいですっおみくじ!」
お願いしますと手を合わせる夢主だが、斎藤は苦い顔でこうべを振った。
「籤なんぞに占わせるな。帰るぞ、あんな人の中、並ぶ気になれん」
「そうですか……」
後ろ髪を引かれつつ夢主は斎藤について歩き始めた。隊士らしき男達も籤の周りに集まって見える。
夢主は羨ましそうに眺めて通り過ぎた。
体がゆったり動き、夢主は広い背中から顔と手を離す。
斎藤は静かに振り返った。
「戻るか」
いつもの声で訊ねられ、ゆっくりと頷いた。
今はまだ、言葉で伝え合う時ではないのだろう。
それでも互いを想う気持ちに偽りはない。それだけで……今はいい。
「ありがとうございます……」
言葉の真意を問うように斎藤は夢主を見た。
「何がだ、礼を言われることなど何も……」
「いえ……なんでもありませんっ!帰って続き呑みましょうっ」
夢主は弾ける笑顔に変わり、斎藤の背後から飛び出した。
斎藤が目で追うと、くるりと振り返っていつもの笑顔が見えた。
「斎藤さんっ、早くっ」
「フッ……」
気持ちを切り替えた夢主の清々しさが伝わるように、斎藤の気持ちも吹っ切れたものに変わっていた。
斎藤は夢主に追いつくと、隣りに並んだ。
「長いこと付き合わせたな。寒くはないか」
斎藤は石畳の上を歩きながら、ちらりと横目で夢主の様子を確認した。
白い息を吐きだして、いかにも寒そうだ。
「大丈夫ですっ、人出も多いし温かく感じますね」
「そうか」
「あっ……あそこの人だかりはなんでしょう……」
歩みの途中で、周囲より人が集まっている場所を控えめに指差した。
喜んだり気を落としたりする人々がいる。
「あれか、あそこは御籤だな」
「みくじ……おみくじですか?!」
「そうだ」
わぁっを顔を明るくした夢主は斎藤を見上げた。
「引きたいですっおみくじ!」
お願いしますと手を合わせる夢主だが、斎藤は苦い顔でこうべを振った。
「籤なんぞに占わせるな。帰るぞ、あんな人の中、並ぶ気になれん」
「そうですか……」
後ろ髪を引かれつつ夢主は斎藤について歩き始めた。隊士らしき男達も籤の周りに集まって見える。
夢主は羨ましそうに眺めて通り過ぎた。