71.想いはまだ
夢主名前設定
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「さっきから顔付きがころころと変わってお前、面白いな」
「ぁっ……恥ずかしぃ……」
見透かされていた恥ずかしさから、咄嗟に両頬を手で覆った。
酒のせいもあるのか、部屋の空気は冷たいにも関わらず頬は熱を持っている。
「お前も今年の出来事を思い返していたのか」
夢主は頬を覆ったまま大きく頷いた。
「俺もだ。俺が過ぎ去ったことを考えるとはな、俺もいよいよ焼きが回ったか」
「えぇっ、斎藤さんと私は同じ歳って決めたんですからっ!そんなこと言わないで下さいよっ、まだ……次で二十一でしょう……」
夢主は不満げに眉尻を下げた。
斎藤が自分を年寄りみたいに話すと、自分もそう言われている気になってしまう。
「ははっ、悪かったな、そうかお前も一緒だったな」
斎藤は手にしていた猪口を置くと、ぐっと夢主に近付いた。
「まだまだ若い、若くて綺麗だぜ。お前はきっと歳を取ろうが美しいだろうよ」
「ひゃぁっ……」
斎藤は夢主のうなじ辺りに手を回すと引き寄せ、二人のおでこをコツンとつけた。
夢主は吃驚して動きを止めた。
斎藤の顔を見られない。赤く染まった頬をくすぐる斎藤の前髪がじれったい。
視線を感じるが見つめ返せず、夢主は視線を下げた。
突然斎藤の肌が目に入り、顔は更に赤らんだ。
着流しの胸元が緩み、美しく逞しい胸板が覗いている。咄嗟に目を逸らした。
「ククッ、正直な女だ」
そう笑うと斎藤は夢主を開放し、膳に戻した猪口を再び手にした。
いまだ固まっている夢主を眺めて愉快とばかりに口元を歪めた。
「も、もぉ……」
我に返って口を尖らせた夢主も手酌をした。
酒をなみなみと注いだものの、口に含まず揺れる表面を眺めている。
「どうした」
急に大人しくなってしまったのは揶揄い過ぎたからかと、後ろめたさから気遣う。
「うん……」
夢主は小さく声を漏らしただけで暫く猪口を眺めていた。
時折、口を僅かに開いて何か声を発するのかと思わせる。
だが再び口を閉めると、キュッと口角を上げて微笑むのだ。
「斎藤さん……」
斎藤がじっと見つめていると、ようやく出てきた言葉は己の名前だった。
夢主は顔を上げると斎藤を真っ直ぐ見つめた。
艶やかな唇を少し開いたまま、次に紡ぐ言葉を探している。
静かに見つめられて視線がぶつかり、斎藤はらしくもなく胸の奥に大きな鼓動を感じた。
ドクンと一度大きく脈打ったと感じる衝撃、すぐに大きな鼓動は治まったが、心には動揺が残った。
向けられて動かない夢主の瞳がいやに艶んで見える。
「灯を……つけるか。急に暗くなってきたな」
夢主の視線に戸惑った斎藤が不意に立ち上がった。
部屋が真っ暗になる前に灯りをつけなければ……
言い訳するように夢主から顔を背け、行灯の前に腰を下ろした。
「ぁっ……恥ずかしぃ……」
見透かされていた恥ずかしさから、咄嗟に両頬を手で覆った。
酒のせいもあるのか、部屋の空気は冷たいにも関わらず頬は熱を持っている。
「お前も今年の出来事を思い返していたのか」
夢主は頬を覆ったまま大きく頷いた。
「俺もだ。俺が過ぎ去ったことを考えるとはな、俺もいよいよ焼きが回ったか」
「えぇっ、斎藤さんと私は同じ歳って決めたんですからっ!そんなこと言わないで下さいよっ、まだ……次で二十一でしょう……」
夢主は不満げに眉尻を下げた。
斎藤が自分を年寄りみたいに話すと、自分もそう言われている気になってしまう。
「ははっ、悪かったな、そうかお前も一緒だったな」
斎藤は手にしていた猪口を置くと、ぐっと夢主に近付いた。
「まだまだ若い、若くて綺麗だぜ。お前はきっと歳を取ろうが美しいだろうよ」
「ひゃぁっ……」
斎藤は夢主のうなじ辺りに手を回すと引き寄せ、二人のおでこをコツンとつけた。
夢主は吃驚して動きを止めた。
斎藤の顔を見られない。赤く染まった頬をくすぐる斎藤の前髪がじれったい。
視線を感じるが見つめ返せず、夢主は視線を下げた。
突然斎藤の肌が目に入り、顔は更に赤らんだ。
着流しの胸元が緩み、美しく逞しい胸板が覗いている。咄嗟に目を逸らした。
「ククッ、正直な女だ」
そう笑うと斎藤は夢主を開放し、膳に戻した猪口を再び手にした。
いまだ固まっている夢主を眺めて愉快とばかりに口元を歪めた。
「も、もぉ……」
我に返って口を尖らせた夢主も手酌をした。
酒をなみなみと注いだものの、口に含まず揺れる表面を眺めている。
「どうした」
急に大人しくなってしまったのは揶揄い過ぎたからかと、後ろめたさから気遣う。
「うん……」
夢主は小さく声を漏らしただけで暫く猪口を眺めていた。
時折、口を僅かに開いて何か声を発するのかと思わせる。
だが再び口を閉めると、キュッと口角を上げて微笑むのだ。
「斎藤さん……」
斎藤がじっと見つめていると、ようやく出てきた言葉は己の名前だった。
夢主は顔を上げると斎藤を真っ直ぐ見つめた。
艶やかな唇を少し開いたまま、次に紡ぐ言葉を探している。
静かに見つめられて視線がぶつかり、斎藤はらしくもなく胸の奥に大きな鼓動を感じた。
ドクンと一度大きく脈打ったと感じる衝撃、すぐに大きな鼓動は治まったが、心には動揺が残った。
向けられて動かない夢主の瞳がいやに艶んで見える。
「灯を……つけるか。急に暗くなってきたな」
夢主の視線に戸惑った斎藤が不意に立ち上がった。
部屋が真っ暗になる前に灯りをつけなければ……
言い訳するように夢主から顔を背け、行灯の前に腰を下ろした。