71.想いはまだ
夢主名前設定
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「そういえば、お前の誕生日とやらはいつなんだ」
「あ……そうですね……」
斎藤が不意に訊ねた。
率直な質問だ。自分が祝ってもらっているのだ、その相手の誕生日とやらを知りたくなるのが人情。
「わからんか」
「はぃ……」
自分でも自らの誕生日は考えたことが無かった。そういえば沖田の誕生日も祝っていない。斎藤の事ばかり考えていたのだ。
我ながら改めて思うと恥ずかしい。顔を赤らめて斎藤から顔を背けた。
「ふふっ……わからないです、斎藤さんの生まれた日はわかるのに。他のみんなも知っていたはずなのに……斎藤さんの誕生日しか思い出せません……ふふっ、変ですね」
「フン、あぁ可笑しいな。わからんならいい、お前も一緒に祝ってやる。ほら、もう一杯呑め」
「あ……」
自分と一緒に祝ってやると、斎藤は半ば無理矢理、夢主に二杯目を注いだ。
「あの……」
「いいだろう、お前と俺は同じ日だ。もし思い出したならば変えれば良い。それで不都合か」
「いぃえっ……嬉しいです……」
小さな声で言って微笑み、両手で小さな猪口を支えた。
斎藤に猪口を向けて、恥ずかしさから、ちらちらと上目で顔色を窺っている。
「ありがとうございます……斎藤さん……」
「あぁ、おめでとう」
「っ……はぃっ」
斎藤から祝いの言葉を掛けられ、夢主は一気に上気してしまった。
そんな言葉を口にする男だとは思っていなかった。素直に嬉しかった。
細長く鋭く、時に見る者に威圧的な印象すら与える斎藤の瞳が、今は穏やかに自分に向けられている。
特別な視線を感じていた。
「とっても……嬉しいです」
「そうか、良かったな」
こくんと小さく頷くと斎藤がくれた酒を呑み干した。
「美味しいです」
ふふっと色づいた顔で微笑む。
斎藤も隠さずに喜ばしいと顔に表した。
「今年もなかなか面白い年だったな。池田屋はでかかった。その後も色々と続いたもんだ。最後にまた面白い男がやって来るとは」
「ふふっ……面白い人……ですか」
「伊東さんが嫌いか」
「いぇ……でも怖いのは変わりません。思ったより優しい……気はしますけど」
「そうか」
夢主は頷いて話を続けた。
「池田屋は……新選組の意義が京の皆さんに伝わるきっかけだった気がします……」
「お前も頑張ったな」
「はぃ……」
一人屯所に残されて怖い思いをした日もあった。
そういえば蒼紫にも幾度か会った。
剣心に会ったのも今年のこと。刃衛、そして幼い縁、思い返せば様々な人物と出会った。
「桜の花の美しさ……月の……綺麗な夜、素敵な日が沢山ありました……」
夢主はこの一年の出来事を走馬灯の様に思い返した。思えば本当に、様々な事が起きた一年だ。
不意に沖田に抱きつかれた日は、今では思い出して笑うことが出来る。
沖田は夢主を心から大事に思っているのだろう。後にも先にもあれっきり、夢主もすっかり忘れていた。
そして夢主は斎藤に抱きしめてもらったことも思い出した。自分から甘えた夜も。
自ずと顔が上がり、斎藤を見つめてしまう。
「どうした」
斎藤は夢主の表情がころころと変わるのを愉しんで酒を進めていた。
部屋の外は斎藤の言った通り、早くも日が暮れ始めていた。
これから一気に日は落ちる。
「あ……そうですね……」
斎藤が不意に訊ねた。
率直な質問だ。自分が祝ってもらっているのだ、その相手の誕生日とやらを知りたくなるのが人情。
「わからんか」
「はぃ……」
自分でも自らの誕生日は考えたことが無かった。そういえば沖田の誕生日も祝っていない。斎藤の事ばかり考えていたのだ。
我ながら改めて思うと恥ずかしい。顔を赤らめて斎藤から顔を背けた。
「ふふっ……わからないです、斎藤さんの生まれた日はわかるのに。他のみんなも知っていたはずなのに……斎藤さんの誕生日しか思い出せません……ふふっ、変ですね」
「フン、あぁ可笑しいな。わからんならいい、お前も一緒に祝ってやる。ほら、もう一杯呑め」
「あ……」
自分と一緒に祝ってやると、斎藤は半ば無理矢理、夢主に二杯目を注いだ。
「あの……」
「いいだろう、お前と俺は同じ日だ。もし思い出したならば変えれば良い。それで不都合か」
「いぃえっ……嬉しいです……」
小さな声で言って微笑み、両手で小さな猪口を支えた。
斎藤に猪口を向けて、恥ずかしさから、ちらちらと上目で顔色を窺っている。
「ありがとうございます……斎藤さん……」
「あぁ、おめでとう」
「っ……はぃっ」
斎藤から祝いの言葉を掛けられ、夢主は一気に上気してしまった。
そんな言葉を口にする男だとは思っていなかった。素直に嬉しかった。
細長く鋭く、時に見る者に威圧的な印象すら与える斎藤の瞳が、今は穏やかに自分に向けられている。
特別な視線を感じていた。
「とっても……嬉しいです」
「そうか、良かったな」
こくんと小さく頷くと斎藤がくれた酒を呑み干した。
「美味しいです」
ふふっと色づいた顔で微笑む。
斎藤も隠さずに喜ばしいと顔に表した。
「今年もなかなか面白い年だったな。池田屋はでかかった。その後も色々と続いたもんだ。最後にまた面白い男がやって来るとは」
「ふふっ……面白い人……ですか」
「伊東さんが嫌いか」
「いぇ……でも怖いのは変わりません。思ったより優しい……気はしますけど」
「そうか」
夢主は頷いて話を続けた。
「池田屋は……新選組の意義が京の皆さんに伝わるきっかけだった気がします……」
「お前も頑張ったな」
「はぃ……」
一人屯所に残されて怖い思いをした日もあった。
そういえば蒼紫にも幾度か会った。
剣心に会ったのも今年のこと。刃衛、そして幼い縁、思い返せば様々な人物と出会った。
「桜の花の美しさ……月の……綺麗な夜、素敵な日が沢山ありました……」
夢主はこの一年の出来事を走馬灯の様に思い返した。思えば本当に、様々な事が起きた一年だ。
不意に沖田に抱きつかれた日は、今では思い出して笑うことが出来る。
沖田は夢主を心から大事に思っているのだろう。後にも先にもあれっきり、夢主もすっかり忘れていた。
そして夢主は斎藤に抱きしめてもらったことも思い出した。自分から甘えた夜も。
自ずと顔が上がり、斎藤を見つめてしまう。
「どうした」
斎藤は夢主の表情がころころと変わるのを愉しんで酒を進めていた。
部屋の外は斎藤の言った通り、早くも日が暮れ始めていた。
これから一気に日は落ちる。