70.大津
夢主名前設定
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短い談笑を終えて鉄之助が去ると、夢主は斎藤と沖田を見た。
陽気な少年が去った後も、余韻で二人の顔はにこやかだ。二人は彼を大変気に入っていた。
「鉄之助君、面白い子ですね」
「あぁ、元気で礼儀もわきまえている、なかなかいい若者だな」
「ふふっ、斎藤さんだってまだ若いのに……」
歳の話に斎藤がぴくりと夢主を睨んだ。
「ごめんなさい、でも本当のことです」
「そうだが」
ばつが悪そうに斎藤は舌打ちをした。
「ははっ、まぁいいじゃないですか……お茶、美味しいなぁ……」
途中、鉄之助は一度三人分の茶を淹れに部屋を立った。
戻った彼は、夢主と沖田の茶は程々に、斎藤の茶は熱々に。しっかりと差をつけた気の利いた茶を渡していた。
「本当に気の効く子ですね……」
「なかなか頼もしい」
「ふふっ、そうですね」
自分が淹れるより美味しいと夢主もゆっくり体を温めた。
「新年……今年は沖田さん、近藤さん達と過ごされたんですよね。今度も……」
「えぇ、近藤さん達とご一緒しようかと」
「そうですか……素敵ですね、ふふっ」
嬉しそうな沖田に夢主も自然と微笑みがこぼれる。
しかし沖田がいないとなれば今年も斎藤と二人きりで年を越すのだ。淡い時間を思い出して俄かにときめいた。
「フン……」
意識するな……斎藤は目が合った夢主に無言で伝えて目を逸らした。
夢主に意識されては堪らんと言うのが本音だ。
「冷えるな……」
「はぃ……雪、降るのでしょうか……」
「かもしれませんね、物凄く冷えます」
「年の暮れ……雪……」
何かが弾けて閃いたように、夢主は顔を上げて立ち上がった。
外を覗くと、空は既に分厚い雲に覆われ、鈍色に染まっている。
時折吹く風が、夢主の体にも容赦なく向かってきた。
冷たい真冬の風に体を震わせる。寒さに反応して、無意識に半纏をぎゅっと握り締めた。
斎藤から貰った藍色の半纏は夢主にすっかり馴染んでいる。
「風邪を引くぞ、夢主」
「はぃ……」
斎藤に言われて振り返るが、部屋に入る前にもう一度空を見上げた。
「降りそうですね……山では積もるのでしょうか……」
「山か。根雪になるだろうな」
「根雪……」
「あぁ。今の雪は残るだろう。冬の間ずっとな」
根雪とは……首を傾げる夢主に斎藤は短く教えた。
冬の始まりに降り積もる雪は、冬の間新たに降る雪の下、温かい風が吹く頃まで静かに眠る。
「……そうですね……」
夢主は思いを馳せていた。
年の暮れ、山に雪が降り続き、すっかり積もって迎える朝。緋村剣心が背負うことになる傷に思い砕いていた。
……大切な人と想いが通じた……そう思ったはずなのに……
「どうした」
寒そうに体を縮めるが部屋に戻らない夢主を案じた斎藤、顔色が変わっていることに気が付いた。
「来い」
「……はぃ……」
二人まで寒さで風邪を引いてしまう……
夢主は障子を閉めて、言われるままに斎藤のそばへ腰を下ろした。
陽気な少年が去った後も、余韻で二人の顔はにこやかだ。二人は彼を大変気に入っていた。
「鉄之助君、面白い子ですね」
「あぁ、元気で礼儀もわきまえている、なかなかいい若者だな」
「ふふっ、斎藤さんだってまだ若いのに……」
歳の話に斎藤がぴくりと夢主を睨んだ。
「ごめんなさい、でも本当のことです」
「そうだが」
ばつが悪そうに斎藤は舌打ちをした。
「ははっ、まぁいいじゃないですか……お茶、美味しいなぁ……」
途中、鉄之助は一度三人分の茶を淹れに部屋を立った。
戻った彼は、夢主と沖田の茶は程々に、斎藤の茶は熱々に。しっかりと差をつけた気の利いた茶を渡していた。
「本当に気の効く子ですね……」
「なかなか頼もしい」
「ふふっ、そうですね」
自分が淹れるより美味しいと夢主もゆっくり体を温めた。
「新年……今年は沖田さん、近藤さん達と過ごされたんですよね。今度も……」
「えぇ、近藤さん達とご一緒しようかと」
「そうですか……素敵ですね、ふふっ」
嬉しそうな沖田に夢主も自然と微笑みがこぼれる。
しかし沖田がいないとなれば今年も斎藤と二人きりで年を越すのだ。淡い時間を思い出して俄かにときめいた。
「フン……」
意識するな……斎藤は目が合った夢主に無言で伝えて目を逸らした。
夢主に意識されては堪らんと言うのが本音だ。
「冷えるな……」
「はぃ……雪、降るのでしょうか……」
「かもしれませんね、物凄く冷えます」
「年の暮れ……雪……」
何かが弾けて閃いたように、夢主は顔を上げて立ち上がった。
外を覗くと、空は既に分厚い雲に覆われ、鈍色に染まっている。
時折吹く風が、夢主の体にも容赦なく向かってきた。
冷たい真冬の風に体を震わせる。寒さに反応して、無意識に半纏をぎゅっと握り締めた。
斎藤から貰った藍色の半纏は夢主にすっかり馴染んでいる。
「風邪を引くぞ、夢主」
「はぃ……」
斎藤に言われて振り返るが、部屋に入る前にもう一度空を見上げた。
「降りそうですね……山では積もるのでしょうか……」
「山か。根雪になるだろうな」
「根雪……」
「あぁ。今の雪は残るだろう。冬の間ずっとな」
根雪とは……首を傾げる夢主に斎藤は短く教えた。
冬の始まりに降り積もる雪は、冬の間新たに降る雪の下、温かい風が吹く頃まで静かに眠る。
「……そうですね……」
夢主は思いを馳せていた。
年の暮れ、山に雪が降り続き、すっかり積もって迎える朝。緋村剣心が背負うことになる傷に思い砕いていた。
……大切な人と想いが通じた……そう思ったはずなのに……
「どうした」
寒そうに体を縮めるが部屋に戻らない夢主を案じた斎藤、顔色が変わっていることに気が付いた。
「来い」
「……はぃ……」
二人まで寒さで風邪を引いてしまう……
夢主は障子を閉めて、言われるままに斎藤のそばへ腰を下ろした。