69.あの人の好きなもの
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沖田は土方達の声を耳にして振り返った。
再び障子に手を掛けて隙間を作り、遠くを見つめた。立っているのが不思議なくらい、力ない顔をしている。
気になって仕方が無く、山南の部屋の方角を眺めている。
「あれじゃ、ただの喧嘩だ……」
「喧嘩か、喧嘩とは違うだろう」
「えぇ……ですけど、もう違わないのかもしれません、あの二人……昔は違ったのに」
斎藤が宥めるが、沖田は慕う二人がいがみ合う声を聞いて淋しい顔をしている。
「沖田さんまで、思い詰めないでくださいね」
「えぇ、ありがとう夢主ちゃん」
そのうちに伊東が山南の部屋に向かう姿が視界に入ってきた。
暫くすると入れ替わりに出てきたのだろう、土方が視界に入った。機嫌悪く廊下を行く様子が伝わってくる。
「困りましたね……」
沖田の脇から覗いた夢主が呟いた。
まるで二人の立場が入れ替わってしまうようで辛い。
伊東が入隊して間もないというのに、柔軟な参謀を慕い土方から遠ざかる隊士がいるのが実状だ。
隊務の上では従うが気持ちは離れている、そんな隊士を目にすると沖田は怒りと共に淋しさを覚えた。
「土方さん……孤立しなきゃいいけれど……」
心配していると、障子の隙間から小姓が一人やって来るのが見えた。
「土方先生がお呼びです」
張り詰めた空気におどおどと口を開く小姓。
隊士として刀を振るには若過ぎると、近藤と土方を主に、幹部達の世話を任されている少年だ。
「分かった、すぐ向かう」
斎藤が答えると少年は頭を下げて逃げるように立ち去った。
二人は夢主に「大丈夫」、そう頷いて部屋を後にした。
口を閉ざして歩く二人、部屋に着いて中に入ると土方も口を閉ざしていた。
暗い面持ちで一点を見つめている。
斎藤と沖田は土方が口を開くのを待った。
「……駄目だ、山南さんはもう俺の言葉を聞いてくれやしねぇ……すっかり伊東に絆されちまったな」
「そんな、山南さんは土方さんを信頼していますよ」
らしからぬ疲れた声に、沖田は懸命に励まそうとした。
その沖田の懸命なか弱い声に土方は自分の立場を自覚させられ、ふふっと自嘲した笑みを漏らした。
「総司ありがとうよ。お前はいつまでも変わらないでいてくれるな」
「土方さん……」
土方は力を取り戻した声で、今度は斎藤に向き合った。
「斎藤、伊東のことは引き続き頼んだぜ」
「はい」
「お前達のこと、頼りにしてるぜ!」
「土方さん……僕は土方さんについていきますよ!」
「あぁ、俺も土方さんのやり方が好きだ。いくらでも働きますよ」
「頼もしいな、ありがてぇ……」
珍しく気を落としていた土方だが、二人の存在は大きな力となった。
信じてついて来てくれる存在。共に強く頼りになる男。互いに命を預けられると感じる関係は、何よりも力をくれた。
「新しい屯所は西本願寺だ!!年が明けたら準備を始める、そのつもりでいろ」
「分かりました」
斎藤と沖田は声を揃えて頷いた。そしてひとつ斎藤は忘れてはならない問いをぶつけた。
「夢主はどうなります」
その言葉に沖田も土方を見た。
「向こうは寺だからな、俺も色々と考えている所だ。あれこれ無理を通すからな……あいつのことも何とかしてみせるぜ」
そういう問題ならお手のものだとばかりに、ニヤリと元気を取り戻した笑顔を二人に向けた。
再び障子に手を掛けて隙間を作り、遠くを見つめた。立っているのが不思議なくらい、力ない顔をしている。
気になって仕方が無く、山南の部屋の方角を眺めている。
「あれじゃ、ただの喧嘩だ……」
「喧嘩か、喧嘩とは違うだろう」
「えぇ……ですけど、もう違わないのかもしれません、あの二人……昔は違ったのに」
斎藤が宥めるが、沖田は慕う二人がいがみ合う声を聞いて淋しい顔をしている。
「沖田さんまで、思い詰めないでくださいね」
「えぇ、ありがとう夢主ちゃん」
そのうちに伊東が山南の部屋に向かう姿が視界に入ってきた。
暫くすると入れ替わりに出てきたのだろう、土方が視界に入った。機嫌悪く廊下を行く様子が伝わってくる。
「困りましたね……」
沖田の脇から覗いた夢主が呟いた。
まるで二人の立場が入れ替わってしまうようで辛い。
伊東が入隊して間もないというのに、柔軟な参謀を慕い土方から遠ざかる隊士がいるのが実状だ。
隊務の上では従うが気持ちは離れている、そんな隊士を目にすると沖田は怒りと共に淋しさを覚えた。
「土方さん……孤立しなきゃいいけれど……」
心配していると、障子の隙間から小姓が一人やって来るのが見えた。
「土方先生がお呼びです」
張り詰めた空気におどおどと口を開く小姓。
隊士として刀を振るには若過ぎると、近藤と土方を主に、幹部達の世話を任されている少年だ。
「分かった、すぐ向かう」
斎藤が答えると少年は頭を下げて逃げるように立ち去った。
二人は夢主に「大丈夫」、そう頷いて部屋を後にした。
口を閉ざして歩く二人、部屋に着いて中に入ると土方も口を閉ざしていた。
暗い面持ちで一点を見つめている。
斎藤と沖田は土方が口を開くのを待った。
「……駄目だ、山南さんはもう俺の言葉を聞いてくれやしねぇ……すっかり伊東に絆されちまったな」
「そんな、山南さんは土方さんを信頼していますよ」
らしからぬ疲れた声に、沖田は懸命に励まそうとした。
その沖田の懸命なか弱い声に土方は自分の立場を自覚させられ、ふふっと自嘲した笑みを漏らした。
「総司ありがとうよ。お前はいつまでも変わらないでいてくれるな」
「土方さん……」
土方は力を取り戻した声で、今度は斎藤に向き合った。
「斎藤、伊東のことは引き続き頼んだぜ」
「はい」
「お前達のこと、頼りにしてるぜ!」
「土方さん……僕は土方さんについていきますよ!」
「あぁ、俺も土方さんのやり方が好きだ。いくらでも働きますよ」
「頼もしいな、ありがてぇ……」
珍しく気を落としていた土方だが、二人の存在は大きな力となった。
信じてついて来てくれる存在。共に強く頼りになる男。互いに命を預けられると感じる関係は、何よりも力をくれた。
「新しい屯所は西本願寺だ!!年が明けたら準備を始める、そのつもりでいろ」
「分かりました」
斎藤と沖田は声を揃えて頷いた。そしてひとつ斎藤は忘れてはならない問いをぶつけた。
「夢主はどうなります」
その言葉に沖田も土方を見た。
「向こうは寺だからな、俺も色々と考えている所だ。あれこれ無理を通すからな……あいつのことも何とかしてみせるぜ」
そういう問題ならお手のものだとばかりに、ニヤリと元気を取り戻した笑顔を二人に向けた。