68.余儀なき酒席
夢主名前設定
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「こっ、これは、成り行きよ、何もしていないわっ」
伊東は誤解を解こうと必死になった。夢主が怖ろしげに顔を強張らせているのは伊東の殺気のせい。斎藤も感じ取った。
だが見覚えのない酒瓶が幾つも置かれた部屋の状態、二人のこの体勢、もしや隙あらば夢主とそのまま帯を・・・
伊東のそんな考えも見受けられた。
「未遂、ですか」
「えっ、何よ、何のことかしらっ!」
「フン、まぁいいですよ、夢主、大丈夫か」
「はぃ・・・」
斎藤が夢主の前で膝をつくと、縋るように動きの鈍い体を寄せてきた。
「仕方の無いやつだ、部屋まで運んでやるからすぐに休め。伊東さん、永倉さんはどうしました」
「あら・・・おかしいわね、厠に出たっきりね、ほほっ」
「でしょうね、あなたの連れが強引にどこかへ連れ出していましたよ。その姿を見たから戻ってきたんだ。伊東さん、俺はあんたが嫌いじゃぁない。だがな、夢主に無理矢理手を出すんなら俺は考えるぜ」
「そんな・・・無理矢理だなんて私がっ」
己の誇りに掛けて!そう叫びたい所だが事実、手篭めにしてしまえるのではと思い始めていた。
そして夢主の滞在する部屋を己の部屋に変えさせ、いずれは身も心も秘密も、全て自在に出来るのでは。
甘い考えを持ち始めていた。
困惑気味に斎藤から顔を逸らした伊東には、脂汗が浮かんでいる。
「そうですか、なら構いません。今回は伊東さんを信じましょう」
そう言いながら斎藤は夢主を慣れた手つきで抱え上げた。
気が緩んで再びまどろみに落ちた夢主は、斎藤の胸で意識を手放そうとしていた。
「酒、強いのを呑ませたんですね」
「御免なさい・・・ま、間違えたのよ」
「そうですか。・・・酒以外の臭いも感じるが、気のせいと信じたいぜ」
斎藤は伊東が夢主から情報を聞き出す為に、判断力が低下する精神に作用する薬でも含ませたのではないかと案じた。
伊東は誤魔化したが、斎藤は真実を見抜いた。
夢主が感じた甘さは伊東が仕込んだ薬。
やがてこの場に戻る斎藤達に悟られてはまずい。薄め具合が分からず、効果を確認しようと必要以上に夢主の顔色を覗き込む必要があった。
夢主がぽつりぽつりと話を漏らしたのはそのせいだ。
だが薬が弱すぎたのか思った以上に口が堅く、引き出せるはずの話がなかなか聞けず、伊東は苛立った。
搦め手よりも良い方法があるのでは、強引な手法に出ようとした時、斎藤が現れたのだ。
「伊東さん、こいつは連れて行く。今日は随分と楽しんだようですから、ゆっくり休ませますよ」
既に眠りに落ちている夢主の顔を眺め、斎藤は小声で伝えた。
「そ・・・そうね、それがいいわっ・・・」
「フンッ」
牽制する斎藤の視線を避わすと、伊東は冷静を装って二人を送り出した。
「もっ・・・本当に驚いたわ、いいわ必ず二人とも私の手駒にしてやるんだからっ。夢主さん、貴女が世話を焼くのは私になるのよっ、斎藤一・・・貴方は美しさを誇って剣だけを振るっていればいい・・・力だけを使いなさい・・・」
伊東は残された部屋の中、遠くを見据えるように凄んだ目で独り言ちた。
「夢主・・・頑張ったな」
廊下を歩きながら斎藤は自分の胸でうずくまる夢主に声を掛けた。
腕の中の軽さが程良く、心地よいとさえ思ってしまう。
「・・・ふふっ・・・やっぱり・・・斎藤さんの腕の中が・・・一番、気持ちいいです・・・」
「おいっ」
起きていたのかと斎藤は若干焦るが、すぐに寝息を立て始めた夢主に、やれやれと大きな溜息を吐いた。
「全く世話が焼ける女だぜ」
「はぃ・・・」
目を閉じた夢主から相槌が返ってくる。
斎藤は苦笑いで部屋へと戻っていった。
伊東は誤解を解こうと必死になった。夢主が怖ろしげに顔を強張らせているのは伊東の殺気のせい。斎藤も感じ取った。
だが見覚えのない酒瓶が幾つも置かれた部屋の状態、二人のこの体勢、もしや隙あらば夢主とそのまま帯を・・・
伊東のそんな考えも見受けられた。
「未遂、ですか」
「えっ、何よ、何のことかしらっ!」
「フン、まぁいいですよ、夢主、大丈夫か」
「はぃ・・・」
斎藤が夢主の前で膝をつくと、縋るように動きの鈍い体を寄せてきた。
「仕方の無いやつだ、部屋まで運んでやるからすぐに休め。伊東さん、永倉さんはどうしました」
「あら・・・おかしいわね、厠に出たっきりね、ほほっ」
「でしょうね、あなたの連れが強引にどこかへ連れ出していましたよ。その姿を見たから戻ってきたんだ。伊東さん、俺はあんたが嫌いじゃぁない。だがな、夢主に無理矢理手を出すんなら俺は考えるぜ」
「そんな・・・無理矢理だなんて私がっ」
己の誇りに掛けて!そう叫びたい所だが事実、手篭めにしてしまえるのではと思い始めていた。
そして夢主の滞在する部屋を己の部屋に変えさせ、いずれは身も心も秘密も、全て自在に出来るのでは。
甘い考えを持ち始めていた。
困惑気味に斎藤から顔を逸らした伊東には、脂汗が浮かんでいる。
「そうですか、なら構いません。今回は伊東さんを信じましょう」
そう言いながら斎藤は夢主を慣れた手つきで抱え上げた。
気が緩んで再びまどろみに落ちた夢主は、斎藤の胸で意識を手放そうとしていた。
「酒、強いのを呑ませたんですね」
「御免なさい・・・ま、間違えたのよ」
「そうですか。・・・酒以外の臭いも感じるが、気のせいと信じたいぜ」
斎藤は伊東が夢主から情報を聞き出す為に、判断力が低下する精神に作用する薬でも含ませたのではないかと案じた。
伊東は誤魔化したが、斎藤は真実を見抜いた。
夢主が感じた甘さは伊東が仕込んだ薬。
やがてこの場に戻る斎藤達に悟られてはまずい。薄め具合が分からず、効果を確認しようと必要以上に夢主の顔色を覗き込む必要があった。
夢主がぽつりぽつりと話を漏らしたのはそのせいだ。
だが薬が弱すぎたのか思った以上に口が堅く、引き出せるはずの話がなかなか聞けず、伊東は苛立った。
搦め手よりも良い方法があるのでは、強引な手法に出ようとした時、斎藤が現れたのだ。
「伊東さん、こいつは連れて行く。今日は随分と楽しんだようですから、ゆっくり休ませますよ」
既に眠りに落ちている夢主の顔を眺め、斎藤は小声で伝えた。
「そ・・・そうね、それがいいわっ・・・」
「フンッ」
牽制する斎藤の視線を避わすと、伊東は冷静を装って二人を送り出した。
「もっ・・・本当に驚いたわ、いいわ必ず二人とも私の手駒にしてやるんだからっ。夢主さん、貴女が世話を焼くのは私になるのよっ、斎藤一・・・貴方は美しさを誇って剣だけを振るっていればいい・・・力だけを使いなさい・・・」
伊東は残された部屋の中、遠くを見据えるように凄んだ目で独り言ちた。
「夢主・・・頑張ったな」
廊下を歩きながら斎藤は自分の胸でうずくまる夢主に声を掛けた。
腕の中の軽さが程良く、心地よいとさえ思ってしまう。
「・・・ふふっ・・・やっぱり・・・斎藤さんの腕の中が・・・一番、気持ちいいです・・・」
「おいっ」
起きていたのかと斎藤は若干焦るが、すぐに寝息を立て始めた夢主に、やれやれと大きな溜息を吐いた。
「全く世話が焼ける女だぜ」
「はぃ・・・」
目を閉じた夢主から相槌が返ってくる。
斎藤は苦笑いで部屋へと戻っていった。