68.余儀なき酒席
夢主名前設定
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静かに呟いて、夢主の瞳を見つめた。夢主は何の反応もなく見つめ返している。
酒がまわり潤んだ瞳が悩ましい。黒い睫毛を濡らし、艶やかに光らせていた。
「だめれす……」
「そぅ……」
伊東は顎に掛けた手をすっと頬にずらし、顔を寄せようと小さく力を入れた。
だがその小さな力から夢主は倒れながら抜け出し、這って障子に近付いた。
「うぅん……だめなんれすよぉ……もぉ、いとうさんてばぁ……」
自分を欲した伊東を泣くわけでも怒るわけでもなく、夢主は呆けたように呟いて部屋を出ようとしていた。
細い指が障子に手が掛かる。
「駄目よ、話はまだ終わっていないのよ」
伊東は逃がすまいと床に這う夢主の背に近付き、上から覆うよう体を添えた。
自然、後から耳元に息が吐き掛けて囁く形になる。
「やっ……やめてくらさぃ……おみみ……だめなんれすから……」
「あらっ、可愛いところがあるのね、ほほっ」
伊東は面白がると一旦離した体を戻し、先程よりも近く、耳元に口を寄せた。
「お酒もまだ沢山残っているのよ、もっと貴女の話を聞かせてくださいな」
「やっ……ん」
耳元から首筋に掛かる伊東の息に体がゾクゾクと震える。
夢主は肩を震わせて、伸ばした手を縮めた。
「だっ……やめてくらさっ……」
「ふふっ……」
「んっ……」
笑い声と共に掛かる息。
再び体を震わせた夢主だが、手を伸ばして障子に触れた。
指先の力で、ほんの少し隙間が開く。
「あ……」
外から冷たい風が一気に流れ込んだ。夢主の朦朧とした意識にも気持ち良い風。
少しだけ正気を取り戻した夢主、背後の伊東に気付く。
「夢主さん」
「いとうさん……だめですから、ほんとうに……」
振り返っった夢主は、自らの上に覆いかぶさる伊東に改めて驚いた。
目の前にある顔は瞬きをしていない。
夢主を見下ろして威圧していた。
「やっ……」
「嫌ぁね、誤解しないでちょうだい」
夢主が伊東を突き放そうとするが、伊東は夢主の手首を掴んで止めた。
振り向いたのをいいことに、夢主の体を仰向ける。
「そんな気、無いわよ」
言葉とは裏腹に、伊東は夢主を畳に押さえつけた。
向ける視線は苛立ちを含んだ殺気立ったもの。
夢主は更に酔いが醒めるのを感じた。
意識が目覚める変わりに、体は固まって行く。
「お話、聞かせて頂戴」
「えっ……」
自分がどこまで、何を話したのか必死に思い出そうとするが、今しがたの出来事なのにぼんやりとしか思い出せない。
永倉と伊東の会話をいくらか思い出し、伊東に藤堂の話を聞き、それから……。
「さぁ、夢主さん」
「やっ……」
迫る伊東から逃げられない。
夢主は障子の隙間を広げて部屋から逃げ出したかった。
床に転がったまま顔を障子に向ける。
押さえられた体は動かない。
「観念なさい、話せばいいのよ」
そう言って夢主の唇に伊東が触れた。
解かれた手を咄嗟に障子に伸ばすが、届かない。
「ふふっ、中座なんて失礼ね」
伊東が笑ったその時、夢主の指の向こうで、すっ……と障子が勝手に開いた。
「さいとぉさんっ」
「斎藤さん!」
「フッ、伊東さん、そいつはちょっとまずいですよ。手、離してやって下さい」
巡察から戻り様子を見に来た斎藤は、開いた障子の間に不躾に足を入れて幅を広げた。
酒がまわり潤んだ瞳が悩ましい。黒い睫毛を濡らし、艶やかに光らせていた。
「だめれす……」
「そぅ……」
伊東は顎に掛けた手をすっと頬にずらし、顔を寄せようと小さく力を入れた。
だがその小さな力から夢主は倒れながら抜け出し、這って障子に近付いた。
「うぅん……だめなんれすよぉ……もぉ、いとうさんてばぁ……」
自分を欲した伊東を泣くわけでも怒るわけでもなく、夢主は呆けたように呟いて部屋を出ようとしていた。
細い指が障子に手が掛かる。
「駄目よ、話はまだ終わっていないのよ」
伊東は逃がすまいと床に這う夢主の背に近付き、上から覆うよう体を添えた。
自然、後から耳元に息が吐き掛けて囁く形になる。
「やっ……やめてくらさぃ……おみみ……だめなんれすから……」
「あらっ、可愛いところがあるのね、ほほっ」
伊東は面白がると一旦離した体を戻し、先程よりも近く、耳元に口を寄せた。
「お酒もまだ沢山残っているのよ、もっと貴女の話を聞かせてくださいな」
「やっ……ん」
耳元から首筋に掛かる伊東の息に体がゾクゾクと震える。
夢主は肩を震わせて、伸ばした手を縮めた。
「だっ……やめてくらさっ……」
「ふふっ……」
「んっ……」
笑い声と共に掛かる息。
再び体を震わせた夢主だが、手を伸ばして障子に触れた。
指先の力で、ほんの少し隙間が開く。
「あ……」
外から冷たい風が一気に流れ込んだ。夢主の朦朧とした意識にも気持ち良い風。
少しだけ正気を取り戻した夢主、背後の伊東に気付く。
「夢主さん」
「いとうさん……だめですから、ほんとうに……」
振り返っった夢主は、自らの上に覆いかぶさる伊東に改めて驚いた。
目の前にある顔は瞬きをしていない。
夢主を見下ろして威圧していた。
「やっ……」
「嫌ぁね、誤解しないでちょうだい」
夢主が伊東を突き放そうとするが、伊東は夢主の手首を掴んで止めた。
振り向いたのをいいことに、夢主の体を仰向ける。
「そんな気、無いわよ」
言葉とは裏腹に、伊東は夢主を畳に押さえつけた。
向ける視線は苛立ちを含んだ殺気立ったもの。
夢主は更に酔いが醒めるのを感じた。
意識が目覚める変わりに、体は固まって行く。
「お話、聞かせて頂戴」
「えっ……」
自分がどこまで、何を話したのか必死に思い出そうとするが、今しがたの出来事なのにぼんやりとしか思い出せない。
永倉と伊東の会話をいくらか思い出し、伊東に藤堂の話を聞き、それから……。
「さぁ、夢主さん」
「やっ……」
迫る伊東から逃げられない。
夢主は障子の隙間を広げて部屋から逃げ出したかった。
床に転がったまま顔を障子に向ける。
押さえられた体は動かない。
「観念なさい、話せばいいのよ」
そう言って夢主の唇に伊東が触れた。
解かれた手を咄嗟に障子に伸ばすが、届かない。
「ふふっ、中座なんて失礼ね」
伊東が笑ったその時、夢主の指の向こうで、すっ……と障子が勝手に開いた。
「さいとぉさんっ」
「斎藤さん!」
「フッ、伊東さん、そいつはちょっとまずいですよ。手、離してやって下さい」
巡察から戻り様子を見に来た斎藤は、開いた障子の間に不躾に足を入れて幅を広げた。