68.余儀なき酒席
夢主名前設定
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「夢主さん、貴女ももっと呑みなさい、ほら」
「あっ、ありがとうございます」
少しずつ舐めるように呑む夢主の、ようやく空になった猪口に伊東が酒を入れた。
「私も……」
「あら、どうも」
酒を受けた夢主がお返しに徳利を持つと、伊東は目を細めてしなやかな手つきで猪口を差し出した。
「ありがとう、貴女お酒弱いの本当なのね、少しずつ呑んで」
「はぁ……そぅなんです……何度も失態を……」
夢主が恥ずかしそうに顔を染めると、伊東は口元を隠して、くすくすと笑った。
「今日は無理をなさらないでね」
「は……はぃ……」
……伊東さん、結構優しいのかも……
思いがけない気遣いに驚き、僅かな酔いが醒める気がした。
「夢主さんは斎藤さんと一緒の部屋で嫌ではありませんの」
「えっ……」
咄嗟に答えられず、聞き返してしまった。
嫌だと思ったことは一度も無い。聞かれた理由が分からなかったのだ。
「おぅおぅ、伊東さん!そいつぁ野暮な質問だぜぇ!ははっ!こいつは斎藤にぞっこんだもんなぁ、なぁ夢主!!」
「えっ、えぇっ!そんな……そんなことっ」
酔いから醒めかけた夢主が顔を真っ赤にして永倉に食って掛かる。
味方としてこの場にいるはずなのに、調子に乗って揶揄わないでくださいと、頬を膨らました。
「もぅ永倉さんてばっ」
「はははっ、悪ぃ悪いっ!」
「永倉さんは、芸妓の方と……その……」
「ははっ、自分のこと話さねぇで俺の話は聞こうってか、いい度胸してんなぁ~っ!」
「ひゃっ……」
永倉は夢主を揶揄いながら頭をわし掴んだ。
「あらあら、永倉さん。女の方にそんな乱暴してはいけませんわよ」
「はははっ、悪いなぁ。よっと……」
夢主から手を離すと永倉は立ち上がった。
「悪いついでだ、ちょっくら小便行ってくらぁ」
「永倉さんっ」
言葉を濁さない永倉を伊東がたしなめると、永倉はひひっと悪戯な笑みを残して出て行った。
「夢主さん、髪がくしゃくしゃよ……せっかくの綺麗な髪が」
「あっ……」
出て行く永倉の姿を目で追った伊東、障子が再び閉じられると体を乗り出し、夢主の頭に手を置いた。
永倉がわし掴んだのに対し、伊東はそっと撫でて触れるように手を添えた。
「髪を整えて差し上げるわ」
「いえっ、そのっ……」
斎藤もしなやかな指の動きを見せるが、伊東もまた似たような手つきで夢主の頭に触れて、髪を梳いた。
断りきれず、恥ずかしさで耳まで染まった夢主は、肩を縮めて俯いた。
「あっ、ありがとうございます」
少しずつ舐めるように呑む夢主の、ようやく空になった猪口に伊東が酒を入れた。
「私も……」
「あら、どうも」
酒を受けた夢主がお返しに徳利を持つと、伊東は目を細めてしなやかな手つきで猪口を差し出した。
「ありがとう、貴女お酒弱いの本当なのね、少しずつ呑んで」
「はぁ……そぅなんです……何度も失態を……」
夢主が恥ずかしそうに顔を染めると、伊東は口元を隠して、くすくすと笑った。
「今日は無理をなさらないでね」
「は……はぃ……」
……伊東さん、結構優しいのかも……
思いがけない気遣いに驚き、僅かな酔いが醒める気がした。
「夢主さんは斎藤さんと一緒の部屋で嫌ではありませんの」
「えっ……」
咄嗟に答えられず、聞き返してしまった。
嫌だと思ったことは一度も無い。聞かれた理由が分からなかったのだ。
「おぅおぅ、伊東さん!そいつぁ野暮な質問だぜぇ!ははっ!こいつは斎藤にぞっこんだもんなぁ、なぁ夢主!!」
「えっ、えぇっ!そんな……そんなことっ」
酔いから醒めかけた夢主が顔を真っ赤にして永倉に食って掛かる。
味方としてこの場にいるはずなのに、調子に乗って揶揄わないでくださいと、頬を膨らました。
「もぅ永倉さんてばっ」
「はははっ、悪ぃ悪いっ!」
「永倉さんは、芸妓の方と……その……」
「ははっ、自分のこと話さねぇで俺の話は聞こうってか、いい度胸してんなぁ~っ!」
「ひゃっ……」
永倉は夢主を揶揄いながら頭をわし掴んだ。
「あらあら、永倉さん。女の方にそんな乱暴してはいけませんわよ」
「はははっ、悪いなぁ。よっと……」
夢主から手を離すと永倉は立ち上がった。
「悪いついでだ、ちょっくら小便行ってくらぁ」
「永倉さんっ」
言葉を濁さない永倉を伊東がたしなめると、永倉はひひっと悪戯な笑みを残して出て行った。
「夢主さん、髪がくしゃくしゃよ……せっかくの綺麗な髪が」
「あっ……」
出て行く永倉の姿を目で追った伊東、障子が再び閉じられると体を乗り出し、夢主の頭に手を置いた。
永倉がわし掴んだのに対し、伊東はそっと撫でて触れるように手を添えた。
「髪を整えて差し上げるわ」
「いえっ、そのっ……」
斎藤もしなやかな指の動きを見せるが、伊東もまた似たような手つきで夢主の頭に触れて、髪を梳いた。
断りきれず、恥ずかしさで耳まで染まった夢主は、肩を縮めて俯いた。