68.余儀なき酒席
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空にはまだ日が残っており辺りも明るい。
伊東の部屋に着くと、永倉が挨拶をした。
「伊東さん、俺です、永倉です。夢主も一緒に来ました」
そう言って夢主の顔を見た永倉は「行くぞ」と無言で確認して障子を明けた。
「お待ちしておりましたよ」
目が合った夢主は伊東に頭を下げた。
一見柔和な笑顔だが、瞳の奥に何かを隠しているような、不穏な光が見えた。
身震いを起こしそうになるが、平常心を装って中に入り腰を下ろすと、見計らったように酒が運ばれてきた。
運んできたのは小姓達、後ろには土方がいた。
顔を見るなり不快感を露にする伊東を、土方は声を出して笑った。
「ははっ、伊東さんそんな顔しちゃぁいけねぇよ。安心しろ、俺は様子を見に来ただけだ、すぐ出て行くさ。くれぐれも、無茶はさせないでくださいよ」
「もちろんですわ」
土方は永倉と夢主の表情を確認し、宣言通り去って行った。
緊張の中、三人の宴が始まる。
永倉は意外にも落ち着いていた。伊東との時間が欲しかったのは本音だった。
「伊東さん、こいつは酒が呑めねぇんだ。だから……よっと」
掛け声を掛けると、土方が夢主の横にそっと置いて行った酒瓶を手にした。
「こいつ用の酒があるんだ。これを飲ませてやってくれ、おい夢主」
「あっ、はぃっ」
促されて夢主はいつもの弱い酒を猪口に注いでもらった。
永倉の先回りに夢主もふふっと笑みを溢す。
「夢主さんはお酒が違うのね……」
伊東は不思議そうに、不満げに呟いた。
「まぁまぁ、伊東さんと俺はこっちの酒で……」
普段屯所で皆に呑まれている酒が伊東の器に注がれる。
「ひとまず俺からの酒だ、伊東さん!」
「わかりました……では頂きましょう」
永倉はすかさず自らの分も注ぎ、猪口を掲げた。
伊東も一先ず調子を合わせましょう、と猪口を口に運んだ。
酒は進んだ。
だが伊東は変哲も無い会話を楽しむばかりで夢主に探りを入れたり、問い詰めたりはしなかった。
……伊東さん……何も聞かないのかな……私のこと、そんなに気にしてないのかも……
夢主も首を傾げてご機嫌な伊東の顔を見ながら、誤魔化すように少しずつ酒を含んでいた。
「いやぁ伊東さんの話は面白ぇなぁ!それにしても一回くらい手合わせしてくれよ!こっち来てから道場入らねぇのずるいぜぇ、隊士達の稽古、たまには見てやってくださいよぉ!」
酔って赤らんだ顔の永倉が伊東に絡む勢いで近寄っている。
嫌いな男が相手なら、伊東は顔をしかめて立ち上がるだろうが、気にせず笑っていた。
「おほほほほっ、宜しいんですけれど、ここの皆さん汗臭いものですから防具がね、ほら。……ふふっ、臭うでしょう」
伊東は常に笑っている。
時々新選組の皆を揶揄しているのが気になるが、夢主はさほど気には留めなかった。
もともと皮肉好きな人物だ。
伊東の部屋に着くと、永倉が挨拶をした。
「伊東さん、俺です、永倉です。夢主も一緒に来ました」
そう言って夢主の顔を見た永倉は「行くぞ」と無言で確認して障子を明けた。
「お待ちしておりましたよ」
目が合った夢主は伊東に頭を下げた。
一見柔和な笑顔だが、瞳の奥に何かを隠しているような、不穏な光が見えた。
身震いを起こしそうになるが、平常心を装って中に入り腰を下ろすと、見計らったように酒が運ばれてきた。
運んできたのは小姓達、後ろには土方がいた。
顔を見るなり不快感を露にする伊東を、土方は声を出して笑った。
「ははっ、伊東さんそんな顔しちゃぁいけねぇよ。安心しろ、俺は様子を見に来ただけだ、すぐ出て行くさ。くれぐれも、無茶はさせないでくださいよ」
「もちろんですわ」
土方は永倉と夢主の表情を確認し、宣言通り去って行った。
緊張の中、三人の宴が始まる。
永倉は意外にも落ち着いていた。伊東との時間が欲しかったのは本音だった。
「伊東さん、こいつは酒が呑めねぇんだ。だから……よっと」
掛け声を掛けると、土方が夢主の横にそっと置いて行った酒瓶を手にした。
「こいつ用の酒があるんだ。これを飲ませてやってくれ、おい夢主」
「あっ、はぃっ」
促されて夢主はいつもの弱い酒を猪口に注いでもらった。
永倉の先回りに夢主もふふっと笑みを溢す。
「夢主さんはお酒が違うのね……」
伊東は不思議そうに、不満げに呟いた。
「まぁまぁ、伊東さんと俺はこっちの酒で……」
普段屯所で皆に呑まれている酒が伊東の器に注がれる。
「ひとまず俺からの酒だ、伊東さん!」
「わかりました……では頂きましょう」
永倉はすかさず自らの分も注ぎ、猪口を掲げた。
伊東も一先ず調子を合わせましょう、と猪口を口に運んだ。
酒は進んだ。
だが伊東は変哲も無い会話を楽しむばかりで夢主に探りを入れたり、問い詰めたりはしなかった。
……伊東さん……何も聞かないのかな……私のこと、そんなに気にしてないのかも……
夢主も首を傾げてご機嫌な伊東の顔を見ながら、誤魔化すように少しずつ酒を含んでいた。
「いやぁ伊東さんの話は面白ぇなぁ!それにしても一回くらい手合わせしてくれよ!こっち来てから道場入らねぇのずるいぜぇ、隊士達の稽古、たまには見てやってくださいよぉ!」
酔って赤らんだ顔の永倉が伊東に絡む勢いで近寄っている。
嫌いな男が相手なら、伊東は顔をしかめて立ち上がるだろうが、気にせず笑っていた。
「おほほほほっ、宜しいんですけれど、ここの皆さん汗臭いものですから防具がね、ほら。……ふふっ、臭うでしょう」
伊東は常に笑っている。
時々新選組の皆を揶揄しているのが気になるが、夢主はさほど気には留めなかった。
もともと皮肉好きな人物だ。