67.折り合い
夢主名前設定
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伊東は筋は通す男なのか、話を持ち込んだ相手はまたも土方だった。
土方に隠して何かを為すには時が早過ぎるという判断か。
「夢主と酒を酌み交わしたいだと」
唐突な申し出に土方は何を企んでいるのかと、思いを隠さず険しい視線を突きつけた。
「あら怖いっ、ほほほっ、いいでしょう土方さん」
そう言うと伊東は懐からいつもの扇を取り出した。
扇の親骨に手を添えると、谷と山をひとつずつ開き、ゆっくり扇を広げていく。
谷と山が開くたびにパタンと音が鳴るが、土方も伊東も反応を示さず瞬きせずに睨み合っている。
「聞けば、貴方は夢主さんを一人、島原に連れ込んだことがあるとか……」
どこで聞いた。土方の眉がピクリと動いた。
「斎藤さんや沖田さんもよく夢主さんとお酒を楽しんでいるのでしょう?参謀の私だって夢主さんと親睦を深めては……いけないのかしら」
反論があるなら言って御覧なさいよと、伊東は挑戦的な笑みを向けている。
「藤堂君から面白い話を聞いているのよねぇ……聞いているのは私だけですけれども……」
周りに知らせるかどうかは自分次第、伊東は尚も好戦的だ。
「……屯所だ。屯所の中でやってくれ。外には連れ出させん」
「いいでしょう、交渉成立ね」
そう言うと伊東は細い声でふふふふと満足げに笑い声を響かせた。
土方は心の中で舌打ちをし、不愉快そうにその様子を眺めた。
早速、事態を知らせる為に三人が揃って呼び出された。
部屋に入ると、土方が見せるただならぬ面持ちに、嫌な報せを覚悟する。
斎藤に敢えて真ん中に座るよう促された夢主、沖田と斎藤が左右を挟んだ。
三人が落ち着くまで、土方は一言も発さなかった。
打ち明けられる酒宴の話。
事の次第を告げて、土方は夢主に頭を下げた。
「すまねぇ、夢主。伊東さんの我が儘に付き合ってやってくれ」
この屯所で土方が誰かに頭を下げるなど無い。
夢主にとってもあの日の謝罪で一度、下げられた頭を見たきりだ。
その時は外に出ていた斎藤と沖田は、目の前の光景に驚いた。
「わかりました……あの……頭上げてください、土方さんがそんな……」
土方の姿勢が元に戻るのを確認して夢主は続けた。
「それで、伊東さんと二人きりなのでしょうか……」
土方も思わず口を閉ざした。
伊東が申し出た日、斎藤と沖田はいつも通りに巡察で出ているだろう。
橋渡しになりそうな肝心の藤堂は江戸にいる。
一度断った自分が同席するのは虫が良すぎる。
伊東は必ず拒絶するはずだ。
「安心しろ、誰かつける」
誰をつけられる……土方は頭を捻った。
「僕達が同席しちゃまずいんですか」
「お守りのお前等がいたら伊東さんは納得しねぇだろうな。また後日、今度は条件を変えて強硬に突きつけてくるぜ」
お守りといわれ夢主はぽっと頬が赤くなった。
赤子扱いされたというより、可愛がられているような変な気分になったのだ。
「後日外でとなれば厄介ですね」
「あぁ。だから済ませちまう。同席させるのは永倉か……原田は駄目だな、途中で喧嘩になっちまう」
「確かに」
斎藤と沖田も同意だ。
夢主は赤い頬のまま、男達の顔を見回した。
「永倉さん、伊東さんとお話してみたいって言ってました。丁度いいかも……」
「そうか」
永倉で決まりか……土方は意を決した。
「お前は大丈夫か、夢主」
斎藤は以前、芹沢粛清の夜に夢主が永倉と同席した際、異様に気を張っていたことを気に掛けた。
「はい、永倉さんも……大事な方が出来て落ち着いたと思います。永倉さんが誠実なお方なのは……私も知っていますから」
……強い女だ……
穏やかに微笑み永倉を信じると話す夢主に、斎藤は頷いた。
こうして話は纏まり、土方は伊東に夢主との時間を用意し、席を整えた。
土方に隠して何かを為すには時が早過ぎるという判断か。
「夢主と酒を酌み交わしたいだと」
唐突な申し出に土方は何を企んでいるのかと、思いを隠さず険しい視線を突きつけた。
「あら怖いっ、ほほほっ、いいでしょう土方さん」
そう言うと伊東は懐からいつもの扇を取り出した。
扇の親骨に手を添えると、谷と山をひとつずつ開き、ゆっくり扇を広げていく。
谷と山が開くたびにパタンと音が鳴るが、土方も伊東も反応を示さず瞬きせずに睨み合っている。
「聞けば、貴方は夢主さんを一人、島原に連れ込んだことがあるとか……」
どこで聞いた。土方の眉がピクリと動いた。
「斎藤さんや沖田さんもよく夢主さんとお酒を楽しんでいるのでしょう?参謀の私だって夢主さんと親睦を深めては……いけないのかしら」
反論があるなら言って御覧なさいよと、伊東は挑戦的な笑みを向けている。
「藤堂君から面白い話を聞いているのよねぇ……聞いているのは私だけですけれども……」
周りに知らせるかどうかは自分次第、伊東は尚も好戦的だ。
「……屯所だ。屯所の中でやってくれ。外には連れ出させん」
「いいでしょう、交渉成立ね」
そう言うと伊東は細い声でふふふふと満足げに笑い声を響かせた。
土方は心の中で舌打ちをし、不愉快そうにその様子を眺めた。
早速、事態を知らせる為に三人が揃って呼び出された。
部屋に入ると、土方が見せるただならぬ面持ちに、嫌な報せを覚悟する。
斎藤に敢えて真ん中に座るよう促された夢主、沖田と斎藤が左右を挟んだ。
三人が落ち着くまで、土方は一言も発さなかった。
打ち明けられる酒宴の話。
事の次第を告げて、土方は夢主に頭を下げた。
「すまねぇ、夢主。伊東さんの我が儘に付き合ってやってくれ」
この屯所で土方が誰かに頭を下げるなど無い。
夢主にとってもあの日の謝罪で一度、下げられた頭を見たきりだ。
その時は外に出ていた斎藤と沖田は、目の前の光景に驚いた。
「わかりました……あの……頭上げてください、土方さんがそんな……」
土方の姿勢が元に戻るのを確認して夢主は続けた。
「それで、伊東さんと二人きりなのでしょうか……」
土方も思わず口を閉ざした。
伊東が申し出た日、斎藤と沖田はいつも通りに巡察で出ているだろう。
橋渡しになりそうな肝心の藤堂は江戸にいる。
一度断った自分が同席するのは虫が良すぎる。
伊東は必ず拒絶するはずだ。
「安心しろ、誰かつける」
誰をつけられる……土方は頭を捻った。
「僕達が同席しちゃまずいんですか」
「お守りのお前等がいたら伊東さんは納得しねぇだろうな。また後日、今度は条件を変えて強硬に突きつけてくるぜ」
お守りといわれ夢主はぽっと頬が赤くなった。
赤子扱いされたというより、可愛がられているような変な気分になったのだ。
「後日外でとなれば厄介ですね」
「あぁ。だから済ませちまう。同席させるのは永倉か……原田は駄目だな、途中で喧嘩になっちまう」
「確かに」
斎藤と沖田も同意だ。
夢主は赤い頬のまま、男達の顔を見回した。
「永倉さん、伊東さんとお話してみたいって言ってました。丁度いいかも……」
「そうか」
永倉で決まりか……土方は意を決した。
「お前は大丈夫か、夢主」
斎藤は以前、芹沢粛清の夜に夢主が永倉と同席した際、異様に気を張っていたことを気に掛けた。
「はい、永倉さんも……大事な方が出来て落ち着いたと思います。永倉さんが誠実なお方なのは……私も知っていますから」
……強い女だ……
穏やかに微笑み永倉を信じると話す夢主に、斎藤は頷いた。
こうして話は纏まり、土方は伊東に夢主との時間を用意し、席を整えた。