67.折り合い
夢主名前設定
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「人に惚れることをどうこうは言えんが、厄介かもしれん」
「伊東さんが夢主ちゃんに……」
沖田も珍しく眉間に皺を寄せて考えを巡らせていた。
「まぁ、男に惚れられることは初めてではあるまい、特に気にするな」
眉尻を下げて困惑している夢主に、斎藤は気にするなと助言した。
この屯所内で何人の男の心を掴んだことか、斎藤は横目で沖田を捉えてから、困り顔の夢主に視線を戻した。
すぐに赤らむ頬は今もほんのり色づいている。
長い睫を震わせるように伏せ、伏せられた長い睫の間から潤んだ瞳がたまに覗く。
艶んだ唇は不安げに窄み、小さく開いた隙間は誘っているように悩ましい。
男が唆られないわけが無かろう、斎藤は心中で苦笑いをした。
「強引に何か仕掛けてくるならば俺達が止めてやる。安心しろ」
「はぃ……」
「その通りです、僕達がついていますよ!」
弱々しく返事をする夢主を沖田も強く励ました。
「あぁそうだ、沖田君。君は随分と嫌われているようだぜ」
「あははっ、わかっていますよ!道場であんな対応されちゃったら嫌でも気付きます。でも僕は嫌われて良かったですよ、気に入られて呼び出されでもしたら参っちゃう」
嫌われて清々だとばかりに沖田は笑った。
誘われるように夢主もふふっと笑い声を上げる。
「夢主ちゃんは嫌われて苛められたら大変だもの、好かれているほうがいいかもしれませんよ、ねっ」
優しく微笑まれ夢主は、くすくす笑いながら頷いた。
「でも、僕も一つだけ伊東さんが来て良かったなって思うことがあるんです」
「何ですか」
これだけ伊東を嫌がっている沖田が何を良しと感じたのか、とても気になる。
「山南さんの話し相手になってくれていることですよ、ははっ。随分と元気になってるみたいで嬉しいんです。このまま回復したらいいなぁって」
「そうですね……」
山南の様子を思い浮かべ幸せそうに笑みを浮かべる沖田。
心から慕っているのが伝わり、胸が締め付けられる。
脱走は本当なのだろうか……夢主は顔を伏せてしばし記憶を辿った。
……沖田が喜んでいるにもかかわらず何故夢主は浮かない顔をしている……
静かにそれぞれの思いに心を寄せる二人。
斎藤は交互に観察した後、声を掛けて現実に引き戻した。
「問題は伊東さんがお前に近付きたがっていることだ。酒席に誘われるのは避けられんぞ」
「……伊東さんと、お酒……」
「せめて屯所内でって予め釘をさしておきましょう!斎藤さん。土方さんにも伝わっているんですよね」
「あぁ抜かりは無い」
それならば大丈夫だと、沖田も納得し何度も首を縦に振った。
それでも夢主は不安を払拭しきれずにいた。
伊東ならば裏の裏をかいて相手を策に落とすのでは、それが斎藤達ではなく自分ならば術中にはめるのは容易いのではないか。
隙を突くのも強引に事を推し進めるのも得意だろう。
廊下で与えられた恐怖が蘇ってきた。
恐れた日はすぐに訪れた。
話を知った時、酒席が避けられない状況まで進められていたのだ。
伊東の行動の早さに斎藤も再び意表を突かれた。
「伊東さんが夢主ちゃんに……」
沖田も珍しく眉間に皺を寄せて考えを巡らせていた。
「まぁ、男に惚れられることは初めてではあるまい、特に気にするな」
眉尻を下げて困惑している夢主に、斎藤は気にするなと助言した。
この屯所内で何人の男の心を掴んだことか、斎藤は横目で沖田を捉えてから、困り顔の夢主に視線を戻した。
すぐに赤らむ頬は今もほんのり色づいている。
長い睫を震わせるように伏せ、伏せられた長い睫の間から潤んだ瞳がたまに覗く。
艶んだ唇は不安げに窄み、小さく開いた隙間は誘っているように悩ましい。
男が唆られないわけが無かろう、斎藤は心中で苦笑いをした。
「強引に何か仕掛けてくるならば俺達が止めてやる。安心しろ」
「はぃ……」
「その通りです、僕達がついていますよ!」
弱々しく返事をする夢主を沖田も強く励ました。
「あぁそうだ、沖田君。君は随分と嫌われているようだぜ」
「あははっ、わかっていますよ!道場であんな対応されちゃったら嫌でも気付きます。でも僕は嫌われて良かったですよ、気に入られて呼び出されでもしたら参っちゃう」
嫌われて清々だとばかりに沖田は笑った。
誘われるように夢主もふふっと笑い声を上げる。
「夢主ちゃんは嫌われて苛められたら大変だもの、好かれているほうがいいかもしれませんよ、ねっ」
優しく微笑まれ夢主は、くすくす笑いながら頷いた。
「でも、僕も一つだけ伊東さんが来て良かったなって思うことがあるんです」
「何ですか」
これだけ伊東を嫌がっている沖田が何を良しと感じたのか、とても気になる。
「山南さんの話し相手になってくれていることですよ、ははっ。随分と元気になってるみたいで嬉しいんです。このまま回復したらいいなぁって」
「そうですね……」
山南の様子を思い浮かべ幸せそうに笑みを浮かべる沖田。
心から慕っているのが伝わり、胸が締め付けられる。
脱走は本当なのだろうか……夢主は顔を伏せてしばし記憶を辿った。
……沖田が喜んでいるにもかかわらず何故夢主は浮かない顔をしている……
静かにそれぞれの思いに心を寄せる二人。
斎藤は交互に観察した後、声を掛けて現実に引き戻した。
「問題は伊東さんがお前に近付きたがっていることだ。酒席に誘われるのは避けられんぞ」
「……伊東さんと、お酒……」
「せめて屯所内でって予め釘をさしておきましょう!斎藤さん。土方さんにも伝わっているんですよね」
「あぁ抜かりは無い」
それならば大丈夫だと、沖田も納得し何度も首を縦に振った。
それでも夢主は不安を払拭しきれずにいた。
伊東ならば裏の裏をかいて相手を策に落とすのでは、それが斎藤達ではなく自分ならば術中にはめるのは容易いのではないか。
隙を突くのも強引に事を推し進めるのも得意だろう。
廊下で与えられた恐怖が蘇ってきた。
恐れた日はすぐに訪れた。
話を知った時、酒席が避けられない状況まで進められていたのだ。
伊東の行動の早さに斎藤も再び意表を突かれた。