67.折り合い
夢主名前設定
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斎藤の部屋に戻ると、灯りは消えていた。
……夢主、寝ているか……
そっと中に入ると既に眠りに落ちている沖田の姿が目に入った。
……あぁ、沖田君か。いつまで経っても慣れんものだな。入る度に確認してしまうとは……
斎藤は障子を閉めて刀を置き、着替えを始めた。
羽織を脱いで袴の紐に手を掛ける。
布の擦れる音だけが響く部屋。解かれた布は自らの重みで、はたりはたりと床に落ちて行く。
寝巻の帯を締めた斎藤は、床に落ちた着物を拾い上げて朝まで干そうと衣桁に掛けた。
目をやると衝立の奥、布団の上に夢主が大人しく座っていた。
「えへっ……」
声を掛けられずにいた夢主が恥ずかしそうに笑った。
「起きていたのか」
「はぃ……着替えてる間はなんだか声が掛けられなくて……」
「そうか。お前、今、気を殺せていたぞ」
油断していたとは言え気付かないとは……斎藤はククッと嬉しそうに喉で笑い、着物を掛けて再び夢主を見た。
苦笑いで不安そうに斎藤を見上げている。
「眠れんのか」
「……気になって……」
斎藤はすっと衝立の内に入り、夢主の布団の上に腰を下ろした。
夜、部屋に三枚も布団を広げればそれなりに狭くなる。狭い畳の上に座るよりもいっそ布団の上の方が良いものだ。
目の前に腰を下ろした斎藤に、夢主は不安な気持ちを忘れ、突然胸の奥がドクリと弾むのを感じた。
布団の上で向かい合って座るなんて……ふと、いつかの沖田の言葉を思い出した。
……まるで、夫婦みたいですねっ、……
そして幾度か自分に向けられた斎藤の熱い眼差しを思い出してしまった。
「あっ、あの……」
突然恥ずかしげに俯く姿で、夢主が何を思っているのか容易に想像が付く。
「そんなに緊張することもあるまい。隣りに怖ろしい男が寝ていて何か出来るものか」
衝立のすぐ向こうで沖田が眠っている。
いつも通り、目を覚ませば手の届く位置に刀が置かれている。
先日斎藤の鼻先に刃をかすめた沖田ならば、容赦なく向かってくるだろう。
「いっ、伊東さんは、どうでしたか」
昼間の伊東との出来事が忘れられず、斎藤が伊東をどう感じたのか知りたくて、帰らないかもしれない斎藤を待っていたのだ。
「言い難いが、確かにお前に興味を持っている。藤堂君からそれなりに聞き出しているようだ。お前の秘密を知っていると思った方がいい」
「そうですか……」
思ってはいたが確実となると気が重い。
夢主から小さな溜息が洩れた。
「怖いか」
「……」
小さく頷いた。
「芹沢さんと伊東さん……お前はどちらがより怖い」
斎藤は俯いたままの夢主に質問をぶつけた。
夢主が顔を上げると、目が合った斎藤の瞳は、薄暗い部屋の中でも艶やかな光を湛えていた。
……夢主、寝ているか……
そっと中に入ると既に眠りに落ちている沖田の姿が目に入った。
……あぁ、沖田君か。いつまで経っても慣れんものだな。入る度に確認してしまうとは……
斎藤は障子を閉めて刀を置き、着替えを始めた。
羽織を脱いで袴の紐に手を掛ける。
布の擦れる音だけが響く部屋。解かれた布は自らの重みで、はたりはたりと床に落ちて行く。
寝巻の帯を締めた斎藤は、床に落ちた着物を拾い上げて朝まで干そうと衣桁に掛けた。
目をやると衝立の奥、布団の上に夢主が大人しく座っていた。
「えへっ……」
声を掛けられずにいた夢主が恥ずかしそうに笑った。
「起きていたのか」
「はぃ……着替えてる間はなんだか声が掛けられなくて……」
「そうか。お前、今、気を殺せていたぞ」
油断していたとは言え気付かないとは……斎藤はククッと嬉しそうに喉で笑い、着物を掛けて再び夢主を見た。
苦笑いで不安そうに斎藤を見上げている。
「眠れんのか」
「……気になって……」
斎藤はすっと衝立の内に入り、夢主の布団の上に腰を下ろした。
夜、部屋に三枚も布団を広げればそれなりに狭くなる。狭い畳の上に座るよりもいっそ布団の上の方が良いものだ。
目の前に腰を下ろした斎藤に、夢主は不安な気持ちを忘れ、突然胸の奥がドクリと弾むのを感じた。
布団の上で向かい合って座るなんて……ふと、いつかの沖田の言葉を思い出した。
……まるで、夫婦みたいですねっ、……
そして幾度か自分に向けられた斎藤の熱い眼差しを思い出してしまった。
「あっ、あの……」
突然恥ずかしげに俯く姿で、夢主が何を思っているのか容易に想像が付く。
「そんなに緊張することもあるまい。隣りに怖ろしい男が寝ていて何か出来るものか」
衝立のすぐ向こうで沖田が眠っている。
いつも通り、目を覚ませば手の届く位置に刀が置かれている。
先日斎藤の鼻先に刃をかすめた沖田ならば、容赦なく向かってくるだろう。
「いっ、伊東さんは、どうでしたか」
昼間の伊東との出来事が忘れられず、斎藤が伊東をどう感じたのか知りたくて、帰らないかもしれない斎藤を待っていたのだ。
「言い難いが、確かにお前に興味を持っている。藤堂君からそれなりに聞き出しているようだ。お前の秘密を知っていると思った方がいい」
「そうですか……」
思ってはいたが確実となると気が重い。
夢主から小さな溜息が洩れた。
「怖いか」
「……」
小さく頷いた。
「芹沢さんと伊東さん……お前はどちらがより怖い」
斎藤は俯いたままの夢主に質問をぶつけた。
夢主が顔を上げると、目が合った斎藤の瞳は、薄暗い部屋の中でも艶やかな光を湛えていた。