66.差し向かい
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「でもぉ……」
「そぅおす、あちきらにさせておくれやす」
体を寄せて媚びる妓達だが、斎藤の感情は微塵も動かなかった。
「いらん。俺はな、妓の酌は嫌いなんだよ。それより」
斎藤は二人の妓にあれを見てみろと、伊東と侍る二人の妓を顎で指した。
妓達は、これ見よがしに飾りが付いた言葉で伊東を褒めちぎっている。
「お前達も伊東さんの相手をしてやれ、喜ぶぞ」
「でもぉ……斎藤はんのお相手も……」
「そうおす、最近斎藤はん馴染みがいぃひんのとちゃうんちゃいますぅ」
二人の妓は意味有りげに斎藤の顔色を窺った。
斎藤と馴染みであったはずの太夫の存在、最近会いに来ていないこと、界隈の者には知られていた。
「フッ、お前等には関わりの無いことだ。それより伊東さんの相手をしておいて損は無いぞ。なにせ新選組のお偉いさんだからな」
「それは本当どすか」
妓は途端に顔色を変えて斎藤の顔を覗き込んだ。
「お偉いはんて斎藤はんより偉ぅおすか」
冗談半分にもう一人の妓も訊ねる。
「あぁ、土方副長と同じ位にな」
「まぁっ……」
「そら凄いわぁ」
妓達は斎藤に寄り添っていた体を離すと、物欲しそうに伊東の姿を目に捉えた。
新選組の名を聞けば誰もが態度を改める。
その中でも副長の座にあり、島原で一番人気がある土方と同じ程とは。妓達も息を呑んだ。
改めて伊東の目鼻立ちを見ると、確かに整って美しい。
土方とは大分異なる雰囲気を纏っているが、隣りの芸妓に負けないほど白く美しい肌で、気品がある。
妓達の頬がほんのりと色付いた。
「俺のことは気にするな、行って酌をしてやれ。俺は一人の方が楽しめる。それに伊東さんはまだ京に入って日が浅い。馴染みは……いないはずだぜ」
にやりと蔑むような笑みを向けるが、妓達は何も気にとめる素振りも見せず、喜んで伊東の傍へ移動した。
「フン、せいせいするな」
小さく呟き、斎藤が一人で手酌している姿を目にした伊東が、銚子を持って呼び掛けるように手を振ってきた。
「気にしないで下さい、俺は構いません」
「そうですか、では遠慮なく……皆様を独占いたしましょう!おほほほほっ!」
きゃぁああっ……
酔っ払う伊東に揶揄われた妓達が、黄色い声ではしゃぎ始めた。
「さて……滑稽なことで」
ククッと喉を鳴らすと斎藤は一人、羽目を外す伊東の姿を眺めながら酒を楽しんだ。
「そぅおす、あちきらにさせておくれやす」
体を寄せて媚びる妓達だが、斎藤の感情は微塵も動かなかった。
「いらん。俺はな、妓の酌は嫌いなんだよ。それより」
斎藤は二人の妓にあれを見てみろと、伊東と侍る二人の妓を顎で指した。
妓達は、これ見よがしに飾りが付いた言葉で伊東を褒めちぎっている。
「お前達も伊東さんの相手をしてやれ、喜ぶぞ」
「でもぉ……斎藤はんのお相手も……」
「そうおす、最近斎藤はん馴染みがいぃひんのとちゃうんちゃいますぅ」
二人の妓は意味有りげに斎藤の顔色を窺った。
斎藤と馴染みであったはずの太夫の存在、最近会いに来ていないこと、界隈の者には知られていた。
「フッ、お前等には関わりの無いことだ。それより伊東さんの相手をしておいて損は無いぞ。なにせ新選組のお偉いさんだからな」
「それは本当どすか」
妓は途端に顔色を変えて斎藤の顔を覗き込んだ。
「お偉いはんて斎藤はんより偉ぅおすか」
冗談半分にもう一人の妓も訊ねる。
「あぁ、土方副長と同じ位にな」
「まぁっ……」
「そら凄いわぁ」
妓達は斎藤に寄り添っていた体を離すと、物欲しそうに伊東の姿を目に捉えた。
新選組の名を聞けば誰もが態度を改める。
その中でも副長の座にあり、島原で一番人気がある土方と同じ程とは。妓達も息を呑んだ。
改めて伊東の目鼻立ちを見ると、確かに整って美しい。
土方とは大分異なる雰囲気を纏っているが、隣りの芸妓に負けないほど白く美しい肌で、気品がある。
妓達の頬がほんのりと色付いた。
「俺のことは気にするな、行って酌をしてやれ。俺は一人の方が楽しめる。それに伊東さんはまだ京に入って日が浅い。馴染みは……いないはずだぜ」
にやりと蔑むような笑みを向けるが、妓達は何も気にとめる素振りも見せず、喜んで伊東の傍へ移動した。
「フン、せいせいするな」
小さく呟き、斎藤が一人で手酌している姿を目にした伊東が、銚子を持って呼び掛けるように手を振ってきた。
「気にしないで下さい、俺は構いません」
「そうですか、では遠慮なく……皆様を独占いたしましょう!おほほほほっ!」
きゃぁああっ……
酔っ払う伊東に揶揄われた妓達が、黄色い声ではしゃぎ始めた。
「さて……滑稽なことで」
ククッと喉を鳴らすと斎藤は一人、羽目を外す伊東の姿を眺めながら酒を楽しんだ。