66.差し向かい
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島原では座敷に入った斎藤と伊東が早くも手酌を始めていた。
芸妓を呼ぼうと勧める伊東だが、面倒はごめんだと斎藤は断った。
「今夜は女抜きであんたと差しで話しがしたい、伊東さん」
こう言われては伊東も女を断る以外に無い。
腹を満たした二人は、京の町を歩いた感想を交えて閑談していた。
「そろそろ本音を話したいのですけれど、よろしいかしら……斎藤一さん」
それぞれ手酌をしていた二人だが、伊東は不意に銚子を持ち上げ、斎藤の猪口に向けた。
酒を酌み交わそうというのだ。
「それにはまず、あんたのその絡みつくような視線を止めてくれないか」
「あらっ……」
伊東はどういう意味かしらと、言葉の真意を誘うように首を傾げた。
斎藤が自分の体の前で猪口を持ったまま差し出してこないのを、もどかしそうに見ている。
「はっきり言っておくが俺にそっちの気はない。全くな」
「あらっ、……ふふっ……あはははははっ!!」
堪えていた伊東だが、堪えきれずに大笑いをした。
「あら嫌だっ、私ったら貴方に誤解を与えてしまったようね、あはははははっ」
酒に弱いのかと考えたくなるほど、らしからぬ弾けた笑いだ。
「御免なさい、私だって男色の気はございませんのよっ、あははははっ!女の方が一番よ、あたしは婦女子が大好きですのっ、あははははっ」
「伊東さん……」
少し落ち着きませんかと名前を呼んだ。
伊東は新選組に入隊して以来ずっと隊内に目を光らせ、殊に斎藤を気に入り、事あるごとに熱い眼差しを向けていた。
斎藤は熱い視線を受け続け、衆道が流行った新選組において伊東もまさか、と念には念を、確認をしたのだ。
「思い違いのようだ。誤解で何よりだな」
「ふふっ……まぁ、貴方の心が欲しいと思ったのは本当よ。貴方、とってもいいもの。全てにおいて申し分無いわ……」
誤解が解けてご機嫌の伊東だが、再び床に誘う女のごとき妖艶な目を斎藤に向けた。
楽しげにくすくすと笑っている。
「そりゃどうも。そこまで持ち上げてくれるとは何か裏でもあるんじゃないのか」
ようやく落ち着きを取り戻した伊東に徳利を差し出すと、伊東は大人しく猪口を手に取り斎藤からの酒を受けた。
「まさかっ、今はただ、新選組というものを知りたいだけよ。どんな力があるのか、ね」
「フン、新選組は強い」
伊東は一口で酒を喉の奥に流し込むと、今度は斎藤に酒を注いだ。
「そうね……でも個人差はとても大きいようね。皆さんの腕前は確かに見極めたわよ。私は貴方と仲良くなりたいの。手を取りたいのよ」
「同じ隊で務めているんだ、既に手を取った仲間でしょう」
伊東の言いたいことなど百も承知だが、話の核心に気付かぬ素振りで、既に同志であると認識させた。
「確かにそうね」
伊東は自らが注いだ酒を呑み干す斎藤を眺めていた。
「呑みっぷりも素敵」
「フンッ」
何かにつけていちいち褒めてうっとりする伊東を斎藤は鼻で笑った。
厭らしさもここまでくれば気持ち良いものだ。
「あんたは危ない男だな、伊東さんよ」
「危ないのはお互い様ね」
フフンと卑しい笑いをぶつけ、歪んだ視線を絡ませた。
芸妓を呼ぼうと勧める伊東だが、面倒はごめんだと斎藤は断った。
「今夜は女抜きであんたと差しで話しがしたい、伊東さん」
こう言われては伊東も女を断る以外に無い。
腹を満たした二人は、京の町を歩いた感想を交えて閑談していた。
「そろそろ本音を話したいのですけれど、よろしいかしら……斎藤一さん」
それぞれ手酌をしていた二人だが、伊東は不意に銚子を持ち上げ、斎藤の猪口に向けた。
酒を酌み交わそうというのだ。
「それにはまず、あんたのその絡みつくような視線を止めてくれないか」
「あらっ……」
伊東はどういう意味かしらと、言葉の真意を誘うように首を傾げた。
斎藤が自分の体の前で猪口を持ったまま差し出してこないのを、もどかしそうに見ている。
「はっきり言っておくが俺にそっちの気はない。全くな」
「あらっ、……ふふっ……あはははははっ!!」
堪えていた伊東だが、堪えきれずに大笑いをした。
「あら嫌だっ、私ったら貴方に誤解を与えてしまったようね、あはははははっ」
酒に弱いのかと考えたくなるほど、らしからぬ弾けた笑いだ。
「御免なさい、私だって男色の気はございませんのよっ、あははははっ!女の方が一番よ、あたしは婦女子が大好きですのっ、あははははっ」
「伊東さん……」
少し落ち着きませんかと名前を呼んだ。
伊東は新選組に入隊して以来ずっと隊内に目を光らせ、殊に斎藤を気に入り、事あるごとに熱い眼差しを向けていた。
斎藤は熱い視線を受け続け、衆道が流行った新選組において伊東もまさか、と念には念を、確認をしたのだ。
「思い違いのようだ。誤解で何よりだな」
「ふふっ……まぁ、貴方の心が欲しいと思ったのは本当よ。貴方、とってもいいもの。全てにおいて申し分無いわ……」
誤解が解けてご機嫌の伊東だが、再び床に誘う女のごとき妖艶な目を斎藤に向けた。
楽しげにくすくすと笑っている。
「そりゃどうも。そこまで持ち上げてくれるとは何か裏でもあるんじゃないのか」
ようやく落ち着きを取り戻した伊東に徳利を差し出すと、伊東は大人しく猪口を手に取り斎藤からの酒を受けた。
「まさかっ、今はただ、新選組というものを知りたいだけよ。どんな力があるのか、ね」
「フン、新選組は強い」
伊東は一口で酒を喉の奥に流し込むと、今度は斎藤に酒を注いだ。
「そうね……でも個人差はとても大きいようね。皆さんの腕前は確かに見極めたわよ。私は貴方と仲良くなりたいの。手を取りたいのよ」
「同じ隊で務めているんだ、既に手を取った仲間でしょう」
伊東の言いたいことなど百も承知だが、話の核心に気付かぬ素振りで、既に同志であると認識させた。
「確かにそうね」
伊東は自らが注いだ酒を呑み干す斎藤を眺めていた。
「呑みっぷりも素敵」
「フンッ」
何かにつけていちいち褒めてうっとりする伊東を斎藤は鼻で笑った。
厭らしさもここまでくれば気持ち良いものだ。
「あんたは危ない男だな、伊東さんよ」
「危ないのはお互い様ね」
フフンと卑しい笑いをぶつけ、歪んだ視線を絡ませた。