66.差し向かい
夢主名前設定
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「斎藤さん、貴方本当に仕事の出来るお人ね。気に入っちゃったわ」
「そいつはどうも」
斎藤は片眉をぴくりと持ち上げ、素直に褒め言葉を受け入れた。
伊東は歩きながら町の隅々に目を配り、時折斎藤の歩む姿にも視線を這わせていた。
斎藤はそれを気付かぬ振りで歩き続けた。
「あぁ、もう無理だわ」
京の外れ、壬生の村から京市中を巡り歩いた。
日も随分傾いてきたのでそろそろ島原へ向かっても構わない頃合い。
伊東は斎藤を引き止めた。
「戻りましょう。ありがとう、充分に京の町を知ることが出来たわ。これからは……宴の時間ね」
ふふっと女のような小さな笑い声を出す伊東に、斎藤も流石にしかめっ面を見せた。
「酒が美味いといいんですがね」
ちくりと嫌味を言うと斎藤は体の向きを変えて歩き出した。
疲れを感じていた伊東だが、足取りを軽くして後に続いて歩いた。
……見てらっしゃい斎藤さん、酒の席で貴方の心を掴んであげるわ……
背中に突き刺さる視線を面倒に感じながら、斎藤はさっさと歩いていった。
夕暮れ時、屯所では斎藤の道着を取り込んでもらった夢主が部屋に戻るところだった。
「よぉ、夢主。さっき町で斎藤見かけたぜ。伊東と一緒だったな」
今日はあいつ戻らないのか、と永倉が声を掛けてきた。
「町でですか……斎藤さん、伊東さんと呑みに行くと仰ってました」
「おぉ……そうか。じゃぁ時間が早いってんで物見でもしてたのか」
「そうですね……」
斎藤と伊東の距離が縮まるのは悪いことではない。
分かっているが夢主の中には不安が渦巻いていた。
「心配か」
「……そぅ……言ったらいけないですよね」
よく知らないからとは言え、参謀の座にいる伊東を不安の種と見るのは、屯所に身を置く者としては言葉にしてはいけない。
「まぁ仕方が無いさ。俺も伊東さんと話してみてぇと思ってるからな。斎藤も同じだろう。気にするなよ、斎藤はちょっとやそっとで気持ちが動くような男じゃねぇの、よぉーく知ってんだろ」
永倉は、ははっと笑って夢主のおでこをツンと人差し指で突ついた。
「はいっ」
「よしっ、それでいい」
笑顔が戻ったのを確認して永倉は去っていった。
優しい気遣いを受け、夢主は永倉の後姿に軽く頭を下げた。
「そいつはどうも」
斎藤は片眉をぴくりと持ち上げ、素直に褒め言葉を受け入れた。
伊東は歩きながら町の隅々に目を配り、時折斎藤の歩む姿にも視線を這わせていた。
斎藤はそれを気付かぬ振りで歩き続けた。
「あぁ、もう無理だわ」
京の外れ、壬生の村から京市中を巡り歩いた。
日も随分傾いてきたのでそろそろ島原へ向かっても構わない頃合い。
伊東は斎藤を引き止めた。
「戻りましょう。ありがとう、充分に京の町を知ることが出来たわ。これからは……宴の時間ね」
ふふっと女のような小さな笑い声を出す伊東に、斎藤も流石にしかめっ面を見せた。
「酒が美味いといいんですがね」
ちくりと嫌味を言うと斎藤は体の向きを変えて歩き出した。
疲れを感じていた伊東だが、足取りを軽くして後に続いて歩いた。
……見てらっしゃい斎藤さん、酒の席で貴方の心を掴んであげるわ……
背中に突き刺さる視線を面倒に感じながら、斎藤はさっさと歩いていった。
夕暮れ時、屯所では斎藤の道着を取り込んでもらった夢主が部屋に戻るところだった。
「よぉ、夢主。さっき町で斎藤見かけたぜ。伊東と一緒だったな」
今日はあいつ戻らないのか、と永倉が声を掛けてきた。
「町でですか……斎藤さん、伊東さんと呑みに行くと仰ってました」
「おぉ……そうか。じゃぁ時間が早いってんで物見でもしてたのか」
「そうですね……」
斎藤と伊東の距離が縮まるのは悪いことではない。
分かっているが夢主の中には不安が渦巻いていた。
「心配か」
「……そぅ……言ったらいけないですよね」
よく知らないからとは言え、参謀の座にいる伊東を不安の種と見るのは、屯所に身を置く者としては言葉にしてはいけない。
「まぁ仕方が無いさ。俺も伊東さんと話してみてぇと思ってるからな。斎藤も同じだろう。気にするなよ、斎藤はちょっとやそっとで気持ちが動くような男じゃねぇの、よぉーく知ってんだろ」
永倉は、ははっと笑って夢主のおでこをツンと人差し指で突ついた。
「はいっ」
「よしっ、それでいい」
笑顔が戻ったのを確認して永倉は去っていった。
優しい気遣いを受け、夢主は永倉の後姿に軽く頭を下げた。