62.十三夜
夢主名前設定
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「所でひとつ訊きたいことがある。沖田君は行ってしまったがまぁいい」
「はい……なんでしょうか」
「抜刀斎だ」
「あ……」
夢主は暫く意識していなかった名前を告げられ、目を見開いた。
「この所あっちもこっちもと騒がしくてな。手が回らなかったが抜刀斎だ。あいつの話を一切聞かなくなった。人斬りは消えたのか」
「いえ……」
「死んだわけではないのだな」
交戦する日が来ると聞いたにも関わらず、その日が訪れないどころか、抜刀斎が動いたという話すら届かなくなっていた。それもそのはず、今頃、緋村は京の外れの村に潜んでいる。
「はい、生きていると思います。多分……今頃、大根を作っていると思いますよ」
「大根」
突拍子も無い夢主の一言に斎藤の眉間には深い皺が刻まれた。
「はい、大根を……ふふっ」
どこかで幸せに……
目尻に浮かびそうになる涙を堪えようと、そっと指先で触れた。
痒くて擦っただけに見えただろう。
「でも安心してください、斎藤さんと向き合う時は必ず来ます……だから今はっ、お月見ですよっ」
ふふっと吹っ切るように笑い、斎藤の盃に更に酒を注いだ。
斎藤も話を誤魔化したなと感じ取るが、死んでいないのならまぁ良いと気持ちを切り替えた。
「お前の酒は進んでいないな。呑まんのか」
「いえ……呑んでるつもりなんですよ……」
「酔うのが怖いか」
「そんなっ……そんなことは……だって屯所だし、みなさんいるのに」
にこにこと小さく首を振り怖くありませんと、細い目で見据えてくる斎藤に伝える。
「そうか」
気を許してくれるのが嬉しいのか、斎藤も目元を緩めて微笑していた。
「夢主、呑みますっ」
くいっと両手で掲げた盃から、一気に酒を呑み干した。
「フッ、おいおい」
また急に態度が変わる。
いつもながら妙なものだと、斎藤は面白可笑しく夢主を眺めた。
「ふふっ、きっと呑みつづけていれば……お酒もつよくなるんですよっ」
「待てよ」
急に勢い付き続けておかわりを注ぐ夢主を思わず止める。
「大丈夫ですよっ、あたしもお酒につよくなりたいんです……」
夢主はぐぐっと続けざまに呑み干してしまった。
呆れた斎藤は小さく溜息を吐いて自らも酒を含み、月を見上げた。
「酔ってしまっては折角の名月が楽しめんぞ」
「えっ……さぃとお……さん?」
何か言いましたか?とばかりに大きく顔を傾ける夢主。
斎藤はもう一度、今度は長い大きな溜息を吐いた。
「はい……なんでしょうか」
「抜刀斎だ」
「あ……」
夢主は暫く意識していなかった名前を告げられ、目を見開いた。
「この所あっちもこっちもと騒がしくてな。手が回らなかったが抜刀斎だ。あいつの話を一切聞かなくなった。人斬りは消えたのか」
「いえ……」
「死んだわけではないのだな」
交戦する日が来ると聞いたにも関わらず、その日が訪れないどころか、抜刀斎が動いたという話すら届かなくなっていた。それもそのはず、今頃、緋村は京の外れの村に潜んでいる。
「はい、生きていると思います。多分……今頃、大根を作っていると思いますよ」
「大根」
突拍子も無い夢主の一言に斎藤の眉間には深い皺が刻まれた。
「はい、大根を……ふふっ」
どこかで幸せに……
目尻に浮かびそうになる涙を堪えようと、そっと指先で触れた。
痒くて擦っただけに見えただろう。
「でも安心してください、斎藤さんと向き合う時は必ず来ます……だから今はっ、お月見ですよっ」
ふふっと吹っ切るように笑い、斎藤の盃に更に酒を注いだ。
斎藤も話を誤魔化したなと感じ取るが、死んでいないのならまぁ良いと気持ちを切り替えた。
「お前の酒は進んでいないな。呑まんのか」
「いえ……呑んでるつもりなんですよ……」
「酔うのが怖いか」
「そんなっ……そんなことは……だって屯所だし、みなさんいるのに」
にこにこと小さく首を振り怖くありませんと、細い目で見据えてくる斎藤に伝える。
「そうか」
気を許してくれるのが嬉しいのか、斎藤も目元を緩めて微笑していた。
「夢主、呑みますっ」
くいっと両手で掲げた盃から、一気に酒を呑み干した。
「フッ、おいおい」
また急に態度が変わる。
いつもながら妙なものだと、斎藤は面白可笑しく夢主を眺めた。
「ふふっ、きっと呑みつづけていれば……お酒もつよくなるんですよっ」
「待てよ」
急に勢い付き続けておかわりを注ぐ夢主を思わず止める。
「大丈夫ですよっ、あたしもお酒につよくなりたいんです……」
夢主はぐぐっと続けざまに呑み干してしまった。
呆れた斎藤は小さく溜息を吐いて自らも酒を含み、月を見上げた。
「酔ってしまっては折角の名月が楽しめんぞ」
「えっ……さぃとお……さん?」
何か言いましたか?とばかりに大きく顔を傾ける夢主。
斎藤はもう一度、今度は長い大きな溜息を吐いた。