61.字比べ
夢主名前設定
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「掟を破ったらお仕置きで、酷いと仲間に入れなくなるんですよね。戻るのは相当難しいとか……会津の子供達は小さい頃から真っ直ぐ生きることを教えられるんですね……」
「そうだな、彼等は真っ直ぐだ。羨ましいくらいにな」
真っ直ぐが故に最後まで忠義を貫き、身を削っていくのだと想うと、夢主の胸が熱く苦しくなる。
それを見抜いてか斎藤は彼らを羨ましいと笑って見せた。
「会津の方々は真面目で誠実で勤勉で……」
「俺には出来ない生き方だ」
「そぅ……ですか」
「あぁ」
それでも仕方が無い。俺は自分の生き方に誇りを持っていると、斎藤は強く大きく頷いた。
夢主からしてみれば、斎藤こそ真っ直ぐ、己に偽りの無い生き方をしているのだが。
「姿勢を正して大きな声で読んでくれた沖田さんがなんだか可愛くて……」
「フッ、子供のようだったか」
「そこまではっ……でもっ、そんな感じが……」
クスクス夢主が笑うと斎藤も一緒に小さく肩を揺らした。
「沖田さんて頼りになるけどたまに子供っぽぃ……っ」
つい本音を口にしてしまい咄嗟に斎藤を見るが、顔を崩したまま楽しげだ。
「気にするな、沖田君が子供っぽいのはいつものことだ。無礼でも失礼でも何でもあるまい」
「ふふっ……沖田さんが聞いたら怒っちゃうかな」
仮にも新選組の一番隊組長を堂々と揶揄してしまったが、二人とも全く気にとめる様子は無い。
これでは流石に沖田も怒るだろうが、お構い無しに笑った。
「うんっ、今日教えてもらった所までは終わりました……読み比べて少しずつ覚えられそうですっ」
夢主は筆を置き、手本にした借本とたった今自分が書き写した文章を見比べて、満足そうに何度も頷いた。
「良く頑張ったな。ちょっと代われ」
「はぃっ……」
なんだろうと思うが、素直に応じて机を返す。
斎藤は机の前に座ると夢主が書いた分をまとめて脇に置き、新しい紙を取り出した。
今度は斎藤が筆を執った。
「お前のはある程度たまったら紐で結わえてやる。俺も一通り写してやる」
「えっ」
斎藤はすらすらと止まること無く筆を走らせた。
墨を足しては、つらつらと文字を書いていく。
「あの、写すって……」
「お前は俺の字を覚えたくは無いのか」
表情を変えないまま、手を止めないで斎藤は返事をした。
「斎藤さんの字……」
「あぁ。俺の字が読めんのだろう。お前の写しと俺の写しを比べれば、覚えが早まる」
「あ……はいっ!ありがとうございます!」
斎藤の字を読めるようになりたい。
人によって随分と癖があるこの時代、慣れない夢主には同じ文章でも筆者により全く別の文章に見えてしまう。
字が読めれば少しは想いが読み取れる、そんな気がした。
「そうだな、彼等は真っ直ぐだ。羨ましいくらいにな」
真っ直ぐが故に最後まで忠義を貫き、身を削っていくのだと想うと、夢主の胸が熱く苦しくなる。
それを見抜いてか斎藤は彼らを羨ましいと笑って見せた。
「会津の方々は真面目で誠実で勤勉で……」
「俺には出来ない生き方だ」
「そぅ……ですか」
「あぁ」
それでも仕方が無い。俺は自分の生き方に誇りを持っていると、斎藤は強く大きく頷いた。
夢主からしてみれば、斎藤こそ真っ直ぐ、己に偽りの無い生き方をしているのだが。
「姿勢を正して大きな声で読んでくれた沖田さんがなんだか可愛くて……」
「フッ、子供のようだったか」
「そこまではっ……でもっ、そんな感じが……」
クスクス夢主が笑うと斎藤も一緒に小さく肩を揺らした。
「沖田さんて頼りになるけどたまに子供っぽぃ……っ」
つい本音を口にしてしまい咄嗟に斎藤を見るが、顔を崩したまま楽しげだ。
「気にするな、沖田君が子供っぽいのはいつものことだ。無礼でも失礼でも何でもあるまい」
「ふふっ……沖田さんが聞いたら怒っちゃうかな」
仮にも新選組の一番隊組長を堂々と揶揄してしまったが、二人とも全く気にとめる様子は無い。
これでは流石に沖田も怒るだろうが、お構い無しに笑った。
「うんっ、今日教えてもらった所までは終わりました……読み比べて少しずつ覚えられそうですっ」
夢主は筆を置き、手本にした借本とたった今自分が書き写した文章を見比べて、満足そうに何度も頷いた。
「良く頑張ったな。ちょっと代われ」
「はぃっ……」
なんだろうと思うが、素直に応じて机を返す。
斎藤は机の前に座ると夢主が書いた分をまとめて脇に置き、新しい紙を取り出した。
今度は斎藤が筆を執った。
「お前のはある程度たまったら紐で結わえてやる。俺も一通り写してやる」
「えっ」
斎藤はすらすらと止まること無く筆を走らせた。
墨を足しては、つらつらと文字を書いていく。
「あの、写すって……」
「お前は俺の字を覚えたくは無いのか」
表情を変えないまま、手を止めないで斎藤は返事をした。
「斎藤さんの字……」
「あぁ。俺の字が読めんのだろう。お前の写しと俺の写しを比べれば、覚えが早まる」
「あ……はいっ!ありがとうございます!」
斎藤の字を読めるようになりたい。
人によって随分と癖があるこの時代、慣れない夢主には同じ文章でも筆者により全く別の文章に見えてしまう。
字が読めれば少しは想いが読み取れる、そんな気がした。