61.字比べ
夢主名前設定
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「ご、ごめんなさぃっ、あまりにも一生懸命に読んでくれるから……嬉しくて。ふふっ」
「そ、そうですかぁっ」
笑われたのではなく褒められたのだと、沖田は頭の後ろをぽりぽり掻いて照れ笑いを見せた。
「はいっ、ありがとうございます。でも出来れば本を私にも見せて欲しいです……ふふっ」
口元に手をやるともう一度微笑んで沖田にお願いをした。
ようやく本を独り占めしていたと気付いた沖田は、慌てて夢主に本を差し出した。
「すみませんっ、僕とした事が!つい!今度はちゃんと見えるように……あ、指で字を辿りながら読みますねっ!」
「はぃ、お願いしますっ」
すぐそばで見る斎藤は、夢主がまだ目元を緩めて笑いを堪えているのに気付いていた。
勉強始めのこの日、時間を沢山取ることが出来た。
夕方になると夢主は斎藤に文机を借りて、忘れないうちに自分の字で……と別の紙に習った部分を書き留めた。
横から眺める斎藤が、夢主の手が止まる度に助け舟を出す。
夢主は筆を動かしながら、沖田が読み上げてくれた姿を思い出して頬を緩めていた。
「どうした、そんなに面白かったか」
「いぇっ、そういうわけでは……」
にこにこと微笑んで筆を動かす。
ちらりと横を見ると斎藤も面白げな表情で座っていた。
「確かに子供みたいだったな」
斎藤が感じた本音を漏らしフッと小さく笑った。
「くすっ……はいっ。なんというか……一生懸命に読んで下さる沖田さんの姿が熱心に学ぶ子供みたいで……姿を重ねちゃったんです」
「何にだ」
「日新館の……子供達にっ」
斎藤はやや驚いたように目を開いて「ほぅ……」と呟いた。
「お前が知っていたとはな。会津の藩校、日新館」
ニッと夢主を見据えて口元だけで笑っている。
俺の前で会津に関する名を出すとは度胸がある、と。
「はいっ。斎藤さんは想像出来ないかも知れませんが……未来では日新館の存在は、歴史が好きな人の間では結構有名でした」
負けずに夢主もニコリと冷静に微笑み返した。
「ならぬことはならぬものです」
夢主は日新館に伝わる、いや会津の子供達に受け継がれてきた「什」の掟の締めくくりの言葉を口にした。
この時代、会津に関わりない者ならそこまでは知らないはずだ。
「ククッ、お前はどこまでも面白いな。什の掟か。俺も聞き覚えがあるぞ、あれはなかなか厳しいな」
「年上の人は大事に……嘘や卑怯は駄目、弱い者虐めは駄目……ここまでは割りと普通ですよね。外で食べちゃ駄目なのもまぁ……女の子と外で話しちゃ駄目っていうのがなんか……時代ですねっ」
「時代か、言ってくれるな」
時代のせいかと、斎藤は笑った。
「そ、そうですかぁっ」
笑われたのではなく褒められたのだと、沖田は頭の後ろをぽりぽり掻いて照れ笑いを見せた。
「はいっ、ありがとうございます。でも出来れば本を私にも見せて欲しいです……ふふっ」
口元に手をやるともう一度微笑んで沖田にお願いをした。
ようやく本を独り占めしていたと気付いた沖田は、慌てて夢主に本を差し出した。
「すみませんっ、僕とした事が!つい!今度はちゃんと見えるように……あ、指で字を辿りながら読みますねっ!」
「はぃ、お願いしますっ」
すぐそばで見る斎藤は、夢主がまだ目元を緩めて笑いを堪えているのに気付いていた。
勉強始めのこの日、時間を沢山取ることが出来た。
夕方になると夢主は斎藤に文机を借りて、忘れないうちに自分の字で……と別の紙に習った部分を書き留めた。
横から眺める斎藤が、夢主の手が止まる度に助け舟を出す。
夢主は筆を動かしながら、沖田が読み上げてくれた姿を思い出して頬を緩めていた。
「どうした、そんなに面白かったか」
「いぇっ、そういうわけでは……」
にこにこと微笑んで筆を動かす。
ちらりと横を見ると斎藤も面白げな表情で座っていた。
「確かに子供みたいだったな」
斎藤が感じた本音を漏らしフッと小さく笑った。
「くすっ……はいっ。なんというか……一生懸命に読んで下さる沖田さんの姿が熱心に学ぶ子供みたいで……姿を重ねちゃったんです」
「何にだ」
「日新館の……子供達にっ」
斎藤はやや驚いたように目を開いて「ほぅ……」と呟いた。
「お前が知っていたとはな。会津の藩校、日新館」
ニッと夢主を見据えて口元だけで笑っている。
俺の前で会津に関する名を出すとは度胸がある、と。
「はいっ。斎藤さんは想像出来ないかも知れませんが……未来では日新館の存在は、歴史が好きな人の間では結構有名でした」
負けずに夢主もニコリと冷静に微笑み返した。
「ならぬことはならぬものです」
夢主は日新館に伝わる、いや会津の子供達に受け継がれてきた「什」の掟の締めくくりの言葉を口にした。
この時代、会津に関わりない者ならそこまでは知らないはずだ。
「ククッ、お前はどこまでも面白いな。什の掟か。俺も聞き覚えがあるぞ、あれはなかなか厳しいな」
「年上の人は大事に……嘘や卑怯は駄目、弱い者虐めは駄目……ここまでは割りと普通ですよね。外で食べちゃ駄目なのもまぁ……女の子と外で話しちゃ駄目っていうのがなんか……時代ですねっ」
「時代か、言ってくれるな」
時代のせいかと、斎藤は笑った。