61.字比べ
夢主名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夢主に本を渡して手が空いた斎藤は別の本を手に取った。
「これはどうだ。子曰わく、学びて時に之を習う……」
「あっ!聞いたことありますっ!学校で習った気が……論語ですよね!」
有名な冒頭の一節が頭に残っていた夢主は嬉しそうに声をあげた。
「フン、論語は知っているか。ならよい、論語で学べ」
「はぃっ……」
知っているとは言え内容は殆ど知らない。出来れば斎藤の書く文章で読む練習をしたかったが、忙しいこの人にこれ以上我が儘は言えないと言葉を飲み込んだ。
「頑張ります……読めるようになって、字の形を覚えて……」
緊張して、これからの流れを言葉にした。
紙面の文字を目で追うが今は一割も分からない。
「ははっ、頑張ってますね!」
「沖田さんっ」
夢主の緊張を解すように、満面の笑顔で沖田が部屋に入ってきた。
「僕も協力しますよ。僕の字、読みやすかったでしょ。普段はあんなに丁寧には書きませんよ!でも夢主ちゃんの為ならっ。本も読みながら教えてあげるよ」
夢主は心中で確かに……と納得してしまった。
未来の記憶にある沖田の文の字は難解だった。
だが夢主の努力に少しでも力添えをと、沖田は心から協力を望んでいた。
「ちょっと読ませて下さい、書物を読むなんていつ以来かなぁ」
斎藤から本を受け取り、ふむふむと確認するように頷きながら紙を捲った。
「大丈夫か」
斎藤は沖田の本を暫く読んでいないと述べた言葉に眉をひそめた。
斎藤自身は時間があれば知識を蓄える為、本を借りてきては読んでいる。
「大丈夫ですよ!馬鹿にしないで下さいよーーっ。では読みましょうっ」
おほん、わざとらしく咳払いを一回してから沖田は読み始めた。
斎藤が読んだものと同じ冒頭の言葉だ。
「し、のたまわくっ!まなびてときに、これをならう!」
あまりの元気の良さに夢主はぽかんと口を開けてしまった。
そしてすぐに、くすっ……思わず口元を袖で隠した。
「ともあり!えんぽうより、きたる!」
くすくすっ……
夢主が小さく肩を揺らしていると気付いた斎藤は、横目に見てにやりとした。
沖田は夢主が分かりやすいように、大きな声でハッキリ発声した。
だが肝心の本は沖田の顔の真正面にあり、夢主には文面が見えない。
「ひとっ、しらずして…………ねぇ夢主ちゃん、どうしたんですかっ、僕、可笑しかったですか」
小刻みに震える夢主に沖田も気が付いた。
ほんのり頬が赤いのは、自分が間違えていたか、何か変だったのだろうと思ったのだ。
夢主は教養がある。
沖田もそう考えていたので、自分で気付かない過ちを笑われてしまったのかと思ったのだ。
「これはどうだ。子曰わく、学びて時に之を習う……」
「あっ!聞いたことありますっ!学校で習った気が……論語ですよね!」
有名な冒頭の一節が頭に残っていた夢主は嬉しそうに声をあげた。
「フン、論語は知っているか。ならよい、論語で学べ」
「はぃっ……」
知っているとは言え内容は殆ど知らない。出来れば斎藤の書く文章で読む練習をしたかったが、忙しいこの人にこれ以上我が儘は言えないと言葉を飲み込んだ。
「頑張ります……読めるようになって、字の形を覚えて……」
緊張して、これからの流れを言葉にした。
紙面の文字を目で追うが今は一割も分からない。
「ははっ、頑張ってますね!」
「沖田さんっ」
夢主の緊張を解すように、満面の笑顔で沖田が部屋に入ってきた。
「僕も協力しますよ。僕の字、読みやすかったでしょ。普段はあんなに丁寧には書きませんよ!でも夢主ちゃんの為ならっ。本も読みながら教えてあげるよ」
夢主は心中で確かに……と納得してしまった。
未来の記憶にある沖田の文の字は難解だった。
だが夢主の努力に少しでも力添えをと、沖田は心から協力を望んでいた。
「ちょっと読ませて下さい、書物を読むなんていつ以来かなぁ」
斎藤から本を受け取り、ふむふむと確認するように頷きながら紙を捲った。
「大丈夫か」
斎藤は沖田の本を暫く読んでいないと述べた言葉に眉をひそめた。
斎藤自身は時間があれば知識を蓄える為、本を借りてきては読んでいる。
「大丈夫ですよ!馬鹿にしないで下さいよーーっ。では読みましょうっ」
おほん、わざとらしく咳払いを一回してから沖田は読み始めた。
斎藤が読んだものと同じ冒頭の言葉だ。
「し、のたまわくっ!まなびてときに、これをならう!」
あまりの元気の良さに夢主はぽかんと口を開けてしまった。
そしてすぐに、くすっ……思わず口元を袖で隠した。
「ともあり!えんぽうより、きたる!」
くすくすっ……
夢主が小さく肩を揺らしていると気付いた斎藤は、横目に見てにやりとした。
沖田は夢主が分かりやすいように、大きな声でハッキリ発声した。
だが肝心の本は沖田の顔の真正面にあり、夢主には文面が見えない。
「ひとっ、しらずして…………ねぇ夢主ちゃん、どうしたんですかっ、僕、可笑しかったですか」
小刻みに震える夢主に沖田も気が付いた。
ほんのり頬が赤いのは、自分が間違えていたか、何か変だったのだろうと思ったのだ。
夢主は教養がある。
沖田もそう考えていたので、自分で気付かない過ちを笑われてしまったのかと思ったのだ。