61.字比べ
夢主名前設定
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一方の斎藤は約束通り土方に夢主が学びたがっていると伝えた。
真剣な気構えで暇つぶしではないと先程の様子を話す。
土方も驚いたが、読み書きは必要だと理解して頷いた。
「あいつが勉学を望むとはな」
「はい。でも元々夢主はあれで学のある女です、すぐに身に付くでしょう」
「あぁ。本はいいとして、誰が教えるかだな。まとめて時間の取れる奴なんざいねぇぞ」
平隊士で良ければ、学があり時間も取れる者は幾人か心当たりがある。
だが今までの出来事を思うと、夢主に幹部以外の人間を近付けるのは気が引けた。
「お前、部屋が一緒なんだから時間が空いたら見れやれよ」
「それは構いませんが、それだけでは足りませんよ」
斎藤は土方にどうする気ですかと訊ねた。
いつ何が起こるか分からない。また長い間屯所を空けるかもしれない。
身につけるなら早いに越したことは無かった。
「そうだな、仕方ねぇ。時間の空いた奴が夢主に少しずつ教えてやるってのでいいだろう。覚えが早けりゃそれで充分身に付くはずだ」
「分かりました」
夢主の賢さを認めている二人は目を合わせて頷いた。
この話は素早く幹部の皆に伝えられた。
人に教えるのが好きな者もいれば、苦手な者もいるが、みな快く首を縦に振ってくれた。
「夢主に手ほどきかぁ。力になってやりてぇな」
「ははっ、左之さんに出来るんですかぁ」
「馬鹿にすんなよ、これでも武家に奉公してたんだぜ、読み書きくれぇ教えてやれるよ」
幹部の皆は誰もが読み書きを身につけている。
斎藤と沖田が中心に、藤堂や原田、永倉といった夢主を特に慕う面々が教えを示す事になった。
「あははっ、それにしても夢主ちゃん、どうしてまた急に……」
斎藤から文を受け取ったと知らない沖田は不思議そうに頭を傾けた。
「早速借りてきたぞ」
部屋に戻った斎藤に夢主が「ほら」と渡されたのは数冊の本だった。
表紙から既に難しそうな文字の並びだ。
夢主は本当に読めるようになるのか、不安に思いながら受け取った。
大事に使い込まれており、使用感はあるが傷みは激しくない。
大切に一枚ずつ頁をめくっていくと、すぐ隣に斎藤が腰を下ろした。
「一冊貸してみろ」
「はぃ……」
一番上にあった一冊を手渡すと、斎藤は夢主に見えるように開いて読み始めた。
肩が触れそうなほど近付くが、夢主は集中して本に目を向けた。
「外史氏曰く、吾旧志を読み鳥羽帝の時、数々制符を下し、諸州の武士の……なんだその顔は」
夢主は固まった顔で斎藤を凝視した。
すらすらと読み始めた斎藤の低く艶のある声に聞き惚れていたわけでは無い。
全く意味が分からない上に、どこを読んでいるかさえ分からなかったのだ。
「知らんか」
「わ、わかりません……有名な本ですか」
「あぁ。日本外史だ。近藤さんの愛読書だよ」
近藤の愛読書と聞いて夢主はひとつ閃いた。
「へぇ……そぅいえば!何か愛読されてたって聞いた気が……こんな難しい本だったんですか、近藤さん凄い……」
斎藤は覗き込んでくる夢主に本を手渡すが、先程の続きを一人黙読していた。
「この本を大切に学んでいる者は多いぞ」
「へぇ……凄い本なんですね……でも……」
正直夢主は自分には難しすぎるのではないかと、困り顔で文面を眺めた。
真剣な気構えで暇つぶしではないと先程の様子を話す。
土方も驚いたが、読み書きは必要だと理解して頷いた。
「あいつが勉学を望むとはな」
「はい。でも元々夢主はあれで学のある女です、すぐに身に付くでしょう」
「あぁ。本はいいとして、誰が教えるかだな。まとめて時間の取れる奴なんざいねぇぞ」
平隊士で良ければ、学があり時間も取れる者は幾人か心当たりがある。
だが今までの出来事を思うと、夢主に幹部以外の人間を近付けるのは気が引けた。
「お前、部屋が一緒なんだから時間が空いたら見れやれよ」
「それは構いませんが、それだけでは足りませんよ」
斎藤は土方にどうする気ですかと訊ねた。
いつ何が起こるか分からない。また長い間屯所を空けるかもしれない。
身につけるなら早いに越したことは無かった。
「そうだな、仕方ねぇ。時間の空いた奴が夢主に少しずつ教えてやるってのでいいだろう。覚えが早けりゃそれで充分身に付くはずだ」
「分かりました」
夢主の賢さを認めている二人は目を合わせて頷いた。
この話は素早く幹部の皆に伝えられた。
人に教えるのが好きな者もいれば、苦手な者もいるが、みな快く首を縦に振ってくれた。
「夢主に手ほどきかぁ。力になってやりてぇな」
「ははっ、左之さんに出来るんですかぁ」
「馬鹿にすんなよ、これでも武家に奉公してたんだぜ、読み書きくれぇ教えてやれるよ」
幹部の皆は誰もが読み書きを身につけている。
斎藤と沖田が中心に、藤堂や原田、永倉といった夢主を特に慕う面々が教えを示す事になった。
「あははっ、それにしても夢主ちゃん、どうしてまた急に……」
斎藤から文を受け取ったと知らない沖田は不思議そうに頭を傾けた。
「早速借りてきたぞ」
部屋に戻った斎藤に夢主が「ほら」と渡されたのは数冊の本だった。
表紙から既に難しそうな文字の並びだ。
夢主は本当に読めるようになるのか、不安に思いながら受け取った。
大事に使い込まれており、使用感はあるが傷みは激しくない。
大切に一枚ずつ頁をめくっていくと、すぐ隣に斎藤が腰を下ろした。
「一冊貸してみろ」
「はぃ……」
一番上にあった一冊を手渡すと、斎藤は夢主に見えるように開いて読み始めた。
肩が触れそうなほど近付くが、夢主は集中して本に目を向けた。
「外史氏曰く、吾旧志を読み鳥羽帝の時、数々制符を下し、諸州の武士の……なんだその顔は」
夢主は固まった顔で斎藤を凝視した。
すらすらと読み始めた斎藤の低く艶のある声に聞き惚れていたわけでは無い。
全く意味が分からない上に、どこを読んでいるかさえ分からなかったのだ。
「知らんか」
「わ、わかりません……有名な本ですか」
「あぁ。日本外史だ。近藤さんの愛読書だよ」
近藤の愛読書と聞いて夢主はひとつ閃いた。
「へぇ……そぅいえば!何か愛読されてたって聞いた気が……こんな難しい本だったんですか、近藤さん凄い……」
斎藤は覗き込んでくる夢主に本を手渡すが、先程の続きを一人黙読していた。
「この本を大切に学んでいる者は多いぞ」
「へぇ……凄い本なんですね……でも……」
正直夢主は自分には難しすぎるのではないかと、困り顔で文面を眺めた。