7.お盆の上の真実(まこと)
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八木家や前川家の者や女中達が食事の支度をするが、隊士達も自由に使っている。
斎藤は慣れた手付きで、かたかたと音を立て何かを準備していた。
台の上には見覚えのある物が置かれていた。
「このお盆……!」
紛れもなくあの盆だった。毎朝と夕時におにぎりを運んでくれた盆だ。
斎藤は何も言わぬまま、おもむろに飯釜の蓋を外した。
手馴れた様子で握り飯をこしらえる。
少し丸みのある、綺麗な三角のおにぎりだ。
ひとつ……ふたつ……みっつ。
小振りなおにぎりを三つ作り上げた。
その横に大きなおにぎりを同じく三つ、作って置いた。
それから茶を淹れて、交互に注ぎ湯呑み二つに分けた。
斎藤が茶を淹れてくれる間に夢主は眺めたが、目の前のおにぎりはこの三日間、どのおにぎりとも違う。
……どういうことだろう……
「ふん……」
うん、とも聞こえる一息を吐いて斎藤が全てを終えた。
「滑稽だろう。察しの通りだ。土方さんが事の起こりだぜ」
夢主は察し切れておらず、首を傾げた。
「分からんか、色事の前に握り飯を用意してやり、己の為の寝巻を添える。事を終えた朝も用意してやる」
ふぅ、と溜息が出た。
「馬鹿馬鹿しいだろう。副長はきっと花街でこんな遊びをしているんだろ」
……じゃあ、初日のあの美味しいおにぎりは土方さんが
……次の不恰好なのが沖田さんで
……やけに整っていたのが永倉さん……
そして斎藤さんの……
された事は惨いけれど、夢主は皆が握ってくれる姿を思い浮かべると頬が緩んでしまった。
思い掛けない反応に斎藤は驚いた。
「おぃおい。……女ってのは分からんな」
副長は女心に関してはやはり詳しいらしい。
夢主の表情の和らぎ。自分より土方の方が女心を分かっているのかと思い知らされた。
斎藤は慣れた手付きで、かたかたと音を立て何かを準備していた。
台の上には見覚えのある物が置かれていた。
「このお盆……!」
紛れもなくあの盆だった。毎朝と夕時におにぎりを運んでくれた盆だ。
斎藤は何も言わぬまま、おもむろに飯釜の蓋を外した。
手馴れた様子で握り飯をこしらえる。
少し丸みのある、綺麗な三角のおにぎりだ。
ひとつ……ふたつ……みっつ。
小振りなおにぎりを三つ作り上げた。
その横に大きなおにぎりを同じく三つ、作って置いた。
それから茶を淹れて、交互に注ぎ湯呑み二つに分けた。
斎藤が茶を淹れてくれる間に夢主は眺めたが、目の前のおにぎりはこの三日間、どのおにぎりとも違う。
……どういうことだろう……
「ふん……」
うん、とも聞こえる一息を吐いて斎藤が全てを終えた。
「滑稽だろう。察しの通りだ。土方さんが事の起こりだぜ」
夢主は察し切れておらず、首を傾げた。
「分からんか、色事の前に握り飯を用意してやり、己の為の寝巻を添える。事を終えた朝も用意してやる」
ふぅ、と溜息が出た。
「馬鹿馬鹿しいだろう。副長はきっと花街でこんな遊びをしているんだろ」
……じゃあ、初日のあの美味しいおにぎりは土方さんが
……次の不恰好なのが沖田さんで
……やけに整っていたのが永倉さん……
そして斎藤さんの……
された事は惨いけれど、夢主は皆が握ってくれる姿を思い浮かべると頬が緩んでしまった。
思い掛けない反応に斎藤は驚いた。
「おぃおい。……女ってのは分からんな」
副長は女心に関してはやはり詳しいらしい。
夢主の表情の和らぎ。自分より土方の方が女心を分かっているのかと思い知らされた。