60.恋文
夢主名前設定
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すると開いた障子から、沖田がいつもの笑顔でやって来るのが見えた。
文を手にしている。
「お待たせしましたっ、はい、夢主ちゃん」
手渡された文を両手で掴み、すぐには開けなかった。
きっと恋文のように歯の浮くような言葉が並んでいる。それも隣にいる斎藤には読めても、自分には読めないのかもしれないのだ。
「ははっ、眺めてないでまぁ開いてみてください」
「はぃ……」
かさかさと音を立てて文を開くと、意外な文字が並んでいた。
伸びやかで柔らかくも力強い沖田の字。
目に入った文章は予想よりも短く、一文字ずつ丁寧に分けられ、漢字だけではなく片仮名も多く使われていた。
「これなら読める、かなっ」
「はっ……はぃ……」
夢主は驚いて沖田を見た。
この時代の字に慣れなくても読めるよう考えてくれたのだ。
「永久ニ……傍ニ控エテ貴女ヲ守リテ候……とこしえに……まもりて……」
「ずっと、貴女の傍で見守り続けます」
微笑んで真面目に告げる沖田に、夢主は思わず目を見張った。
恋文ではなく、心の奥を熱くする優しい文だった。
「ははっ、その様子だと少しは心に届いたのかな。だったら嬉しいなっ、ふふっ」
沖田は嬉しそうに笑っていた。
斎藤は黙って横目で文を見ている。
「はい……嬉しいです……沖田さんもっと長くて、きっと恥ずかしい文章を書かれるんだとばかり……」
「あははっ、だってずっと夢主ちゃんに大事にして欲しいから。正直にありったけ書いたら、夢主ちゃん恥ずかしがって置いてくれないと思って」
「大事に、します……」
夢主は虚ろに返事をしながら、手紙を呆けたように眺めた。
……似てる字がある……
先ほど斎藤から受け取った文に、似た文字がある。
沖田の文字の方が格段に読みやすく、違う字にも見えるが、それは似ている気がする。
並べて見比べたかったが、本人達の前ではさすがに気が引けて動けなかった。
「じゃあ僕はこれから約束があるのでっ」
「約束……」
「子供達と壬生寺で遊ぶって約束してあるんです。いーっぱい集まってきますよ、あはははっ」
じゃあっ!と沖田は出て行った。
子供に慕われている沖田は、こうしてたまに子供達の遊び相手となっていた。
「俺も所用だ」
「所用……?」
「私用」
それ以上は言わなかった。きっと密偵の仕事に関わるのだろう。
「必ず戻る」
「ふふっ!」
「どうした」
斎藤の言い草に急に吹き出した夢主、火急の用事に飛び出して、身の危険をかいくぐって戻ると言っているようで可笑しかった。
「ごめんなさい、そんなに大変なお仕事なんだと思ってつぃ……でも確かに、そうですよね……」
さり気なく出て行くが、実際、危険な仕事が待っているのかもしれない。
「フン、危険も何もありはしない、簡単な用事さ。すぐに戻る。夜はまた巡察だ」
「はい。お気をつけて」
微笑がぶつかると斎藤は頷いてから部屋を出て行った。
夢主はその姿を確認して、斎藤の手紙を取り出した。
「あぁ…………やっぱり同じ字が入ってる気がする。斎藤さんの文の方が少し長いけど……」
守る……そう書いてある気がした。
「斎藤さんが戻ったら……聞いてみようかな……」
夢主は静かに二つの文を畳んだ。
文を手にしている。
「お待たせしましたっ、はい、夢主ちゃん」
手渡された文を両手で掴み、すぐには開けなかった。
きっと恋文のように歯の浮くような言葉が並んでいる。それも隣にいる斎藤には読めても、自分には読めないのかもしれないのだ。
「ははっ、眺めてないでまぁ開いてみてください」
「はぃ……」
かさかさと音を立てて文を開くと、意外な文字が並んでいた。
伸びやかで柔らかくも力強い沖田の字。
目に入った文章は予想よりも短く、一文字ずつ丁寧に分けられ、漢字だけではなく片仮名も多く使われていた。
「これなら読める、かなっ」
「はっ……はぃ……」
夢主は驚いて沖田を見た。
この時代の字に慣れなくても読めるよう考えてくれたのだ。
「永久ニ……傍ニ控エテ貴女ヲ守リテ候……とこしえに……まもりて……」
「ずっと、貴女の傍で見守り続けます」
微笑んで真面目に告げる沖田に、夢主は思わず目を見張った。
恋文ではなく、心の奥を熱くする優しい文だった。
「ははっ、その様子だと少しは心に届いたのかな。だったら嬉しいなっ、ふふっ」
沖田は嬉しそうに笑っていた。
斎藤は黙って横目で文を見ている。
「はい……嬉しいです……沖田さんもっと長くて、きっと恥ずかしい文章を書かれるんだとばかり……」
「あははっ、だってずっと夢主ちゃんに大事にして欲しいから。正直にありったけ書いたら、夢主ちゃん恥ずかしがって置いてくれないと思って」
「大事に、します……」
夢主は虚ろに返事をしながら、手紙を呆けたように眺めた。
……似てる字がある……
先ほど斎藤から受け取った文に、似た文字がある。
沖田の文字の方が格段に読みやすく、違う字にも見えるが、それは似ている気がする。
並べて見比べたかったが、本人達の前ではさすがに気が引けて動けなかった。
「じゃあ僕はこれから約束があるのでっ」
「約束……」
「子供達と壬生寺で遊ぶって約束してあるんです。いーっぱい集まってきますよ、あはははっ」
じゃあっ!と沖田は出て行った。
子供に慕われている沖田は、こうしてたまに子供達の遊び相手となっていた。
「俺も所用だ」
「所用……?」
「私用」
それ以上は言わなかった。きっと密偵の仕事に関わるのだろう。
「必ず戻る」
「ふふっ!」
「どうした」
斎藤の言い草に急に吹き出した夢主、火急の用事に飛び出して、身の危険をかいくぐって戻ると言っているようで可笑しかった。
「ごめんなさい、そんなに大変なお仕事なんだと思ってつぃ……でも確かに、そうですよね……」
さり気なく出て行くが、実際、危険な仕事が待っているのかもしれない。
「フン、危険も何もありはしない、簡単な用事さ。すぐに戻る。夜はまた巡察だ」
「はい。お気をつけて」
微笑がぶつかると斎藤は頷いてから部屋を出て行った。
夢主はその姿を確認して、斎藤の手紙を取り出した。
「あぁ…………やっぱり同じ字が入ってる気がする。斎藤さんの文の方が少し長いけど……」
守る……そう書いてある気がした。
「斎藤さんが戻ったら……聞いてみようかな……」
夢主は静かに二つの文を畳んだ。