58.休息の時
夢主名前設定
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まるで二人の大きな子供を寝かしつけたような気分で夢主は部屋を出た。
廊下で原田と永倉の姿が目に留まる。二人は戦いで負った傷の手当てを受けた直後だった。
「原田さん、永倉さん」
声を掛けると二人は揃って振り返り、柔らかい笑顔を見せた。
「おぉ、元気してたか」
「はいっ」
原田の手が頭に置かれ、夢主は笑顔を返した。
「斎藤と総司はどうした」
「ふふっ、それが……お二人とも寝ちゃいました」
「おぉっ、こんな早くにか。珍しいな」
空にはまだ日が残っている。
「確かにあいつら相当働いたからな……休ませてやったのか」
「ふふっ」
お前が二人を寝かせたのかと、本能で勘付いた原田の問いに、夢主は大きく頷いて笑った。
「あの……まさかとは思いますけど、お二人はこれから出掛ける気ですか……」
散々疲れて戻ったはずなのに、傷の手当を受けて部屋に戻るどころか、外へ向かう途中に見える。
二人は見透かされたなぁと苦笑いを浮かべた。
「駄目ですよぉっ!怪我もされてるのに……お酒呑んだら傷に響きますよ……」
心配そうに声を細くする夢主。
原田は大きな手を夢主の肩に移してトンと触れ、顔を覗いた。
「大丈夫だぜ、夢主。俺達もガキじゃねぇ、ちゃんと心得てるさ」
「でも……」
「ちょいと島原によってよ、少し遊んだら大人しく帰るぜ」
ふっ、と永倉の優しい笑顔が更に安らいだものに変わった。
それを見て夢主は閃いた。
「あっ……そっか、お二人とも好い人がいらっしゃるんですよね。……永倉さんの好い人って島原の……」
「おっ……良く知ってるな」
夢主の言い当てに顔を赤くした永倉は、歯を見せてニッと笑った。
「ふふっ、私、監察に入っちゃおうかなっ」
「おぃおぃ、それだけは勘弁してくれよ!」
ははっと笑う二人に、夢主も小さく肩を揺らした。
「本当は斎藤さんが教えてくれたんです。原田さんも永倉さんも良かったです……おめでとうございますっ」
「ありがとうよ。まだ正式に夫婦ってわけじゃねぇけどな、ありがとうよ」
「あぁ。ありがとう夢主。……淋しいか、夢主」
少し赤らんだ顔を揶揄って覗いてくる二人に対し、夢主はにこにこと首を振った。
「嬉しいですよ、お二人の幸せが……少し肩の荷が下りた気もしますっ、ふふっ……」
「えっ?なんだ?」
肩の荷が下りたという言葉に首を傾ける永倉に夢主は笑いかけた。
「何でもありませんっ。お二人とも、末永くお幸せに!ですよっ、大切にしてあげてくださいね……どうか大事な方のおそばに……」
……そう、二人ともいずれ子供に恵まれ……それなのに時代の流れに、戦いによって離れ離れに……
二人が訝しむ気配で我に返った夢主は、悲しい時代の記憶から目を背け、笑顔を作って二人に頭を下げた。
「お気をつけて……」
「あぁ。お前もゆっくり休めよ」
「困ったら今までどおり頼って来いよ、兄ちゃんなの忘れるなっ」
原田と永倉は夢主を気遣い、優しい言葉を残して屯所の外へ出て行った。
陽炎を生みそうな暑さにも関わらず、遠ざかる二人の大きな背中が、寂寥に包まれて見える。
どうか彼らが大切な人と長く添い遂げられますように……冷たく淋しい空気が、その願いを遠ざけるようだった。
廊下で原田と永倉の姿が目に留まる。二人は戦いで負った傷の手当てを受けた直後だった。
「原田さん、永倉さん」
声を掛けると二人は揃って振り返り、柔らかい笑顔を見せた。
「おぉ、元気してたか」
「はいっ」
原田の手が頭に置かれ、夢主は笑顔を返した。
「斎藤と総司はどうした」
「ふふっ、それが……お二人とも寝ちゃいました」
「おぉっ、こんな早くにか。珍しいな」
空にはまだ日が残っている。
「確かにあいつら相当働いたからな……休ませてやったのか」
「ふふっ」
お前が二人を寝かせたのかと、本能で勘付いた原田の問いに、夢主は大きく頷いて笑った。
「あの……まさかとは思いますけど、お二人はこれから出掛ける気ですか……」
散々疲れて戻ったはずなのに、傷の手当を受けて部屋に戻るどころか、外へ向かう途中に見える。
二人は見透かされたなぁと苦笑いを浮かべた。
「駄目ですよぉっ!怪我もされてるのに……お酒呑んだら傷に響きますよ……」
心配そうに声を細くする夢主。
原田は大きな手を夢主の肩に移してトンと触れ、顔を覗いた。
「大丈夫だぜ、夢主。俺達もガキじゃねぇ、ちゃんと心得てるさ」
「でも……」
「ちょいと島原によってよ、少し遊んだら大人しく帰るぜ」
ふっ、と永倉の優しい笑顔が更に安らいだものに変わった。
それを見て夢主は閃いた。
「あっ……そっか、お二人とも好い人がいらっしゃるんですよね。……永倉さんの好い人って島原の……」
「おっ……良く知ってるな」
夢主の言い当てに顔を赤くした永倉は、歯を見せてニッと笑った。
「ふふっ、私、監察に入っちゃおうかなっ」
「おぃおぃ、それだけは勘弁してくれよ!」
ははっと笑う二人に、夢主も小さく肩を揺らした。
「本当は斎藤さんが教えてくれたんです。原田さんも永倉さんも良かったです……おめでとうございますっ」
「ありがとうよ。まだ正式に夫婦ってわけじゃねぇけどな、ありがとうよ」
「あぁ。ありがとう夢主。……淋しいか、夢主」
少し赤らんだ顔を揶揄って覗いてくる二人に対し、夢主はにこにこと首を振った。
「嬉しいですよ、お二人の幸せが……少し肩の荷が下りた気もしますっ、ふふっ……」
「えっ?なんだ?」
肩の荷が下りたという言葉に首を傾ける永倉に夢主は笑いかけた。
「何でもありませんっ。お二人とも、末永くお幸せに!ですよっ、大切にしてあげてくださいね……どうか大事な方のおそばに……」
……そう、二人ともいずれ子供に恵まれ……それなのに時代の流れに、戦いによって離れ離れに……
二人が訝しむ気配で我に返った夢主は、悲しい時代の記憶から目を背け、笑顔を作って二人に頭を下げた。
「お気をつけて……」
「あぁ。お前もゆっくり休めよ」
「困ったら今までどおり頼って来いよ、兄ちゃんなの忘れるなっ」
原田と永倉は夢主を気遣い、優しい言葉を残して屯所の外へ出て行った。
陽炎を生みそうな暑さにも関わらず、遠ざかる二人の大きな背中が、寂寥に包まれて見える。
どうか彼らが大切な人と長く添い遂げられますように……冷たく淋しい空気が、その願いを遠ざけるようだった。