58.休息の時
夢主名前設定
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「何故今になってこんな真似を」
斎藤は真剣に手を動かす夢主に訊ねた。
今までこんな申し出はなかった。今回に限り何故と疑問を抱く。
夢主は目を斎藤の腕に落としたまま答えた。
「斎藤さんはむやみに体を触れられるのがお嫌いかと思って……それに、失礼かと……。でも今回は……本当に大変だったのではって、そう思ったら……」
「そうか……」
施術する夢主の指先を眺めて呟いた斎藤、心なしか声が柔らかくなっている。
理由はどうでも良かった。
「悪くないな……」
「本当ですか、良かったです……」
腕の骨に沿って筋肉を解していく。
気を良くした夢主は説明しながら手を動かした。
「私のいた頃、このマッサージって言うのが流行ってたんですよ……気持ちいですよね。硬くなった筋肉を解して……乳酸っていうのが筋肉に溜まると疲れが出る、とか……あとリンパって言うのが、リンパが詰まると良くないので揉み解して流すんだそうですよ、あっ」
手を動かしながら思い出したように斎藤の顔を見上げた。
「顔のリンパマッサージ気持ちいいんですよ!良かったら……」
「いらん。このまま続けろ」
流石に顔は嫌がる斎藤だが、体は夢主に任せていた。
肘の辺りから手首に近付き、次に手の平、指と疲れを癒していく。
ぐりぐりとツボを刺激するように、心地よい強さで解していく。
普段は触れるなど恥ずかしくて躊躇してしまうが、今は夢中で施術していた。
指も遠慮なく触れた。指の付け根を刺激してから指を挟み、骨ばった斎藤の指を先へ先へとなぞっていく。
斎藤は言葉を発さず、ただ眺めていた。
手の平を終えて腕に戻ると、今度は上腕、肩と続いた。
「凄いもんだ」
斎藤は伏目がちに呟いた。
素直に気持ち良いらしく、虚ろな目をしている。
「あの……嫌でなければ、背中もいいですか……」
「あぁ」
夢主の手に目をやる斎藤、目を伏せたまま返事をした。
さすがに寝転んでもらうのは抵抗がある。
斎藤の後ろに回り、背中の筋肉を解し始めた。
背骨両脇の筋肉を左右に開くように、夢主は拳にした手の指の関節を使って刺激していく。
ふっと力が抜けるような心地よさを感じた斎藤、最早目を瞑っていた。
「あぁ……いい」
思わずぽつりと漏らした。
夢主は斎藤の様子を嬉しそうに微笑み、声を殺して笑い、施術を続けた。
相当疲れていたのか、やがて斎藤は目を瞑ったまま舟を漕ぎ出した。
突然のことに夢主も驚く。
「さ、斎藤さん……大丈夫ですか……」
「っ、ん、あぁ……あぁ大丈夫だ。すまんな、少し休むか」
目を開けて正直に寝ると告げた斎藤。
夢主はくすくす笑いながら手早く布団を広げた。
斎藤はのろのろと、らしくない動きで体を布団に移す。
「あれは」
斎藤は自分の布団が敷かれたのに尚残る布団を見ていた。
「沖田君か……」
頭が回っていないのか思い出すように呟くと、斎藤は静かに体を横たえて目を閉じた。
早くも夢の中である。
「ふふっ、斎藤さん寝ちゃった……」
もう夕暮れ時。
きっと朝まで寝てしまう。
夢主は瞳を隠した斎藤に微笑んだ。
目を閉じても凛々しい顔立ち。
部屋に戻った時より血色が良くなっている気がして、嬉しかった。
斎藤は真剣に手を動かす夢主に訊ねた。
今までこんな申し出はなかった。今回に限り何故と疑問を抱く。
夢主は目を斎藤の腕に落としたまま答えた。
「斎藤さんはむやみに体を触れられるのがお嫌いかと思って……それに、失礼かと……。でも今回は……本当に大変だったのではって、そう思ったら……」
「そうか……」
施術する夢主の指先を眺めて呟いた斎藤、心なしか声が柔らかくなっている。
理由はどうでも良かった。
「悪くないな……」
「本当ですか、良かったです……」
腕の骨に沿って筋肉を解していく。
気を良くした夢主は説明しながら手を動かした。
「私のいた頃、このマッサージって言うのが流行ってたんですよ……気持ちいですよね。硬くなった筋肉を解して……乳酸っていうのが筋肉に溜まると疲れが出る、とか……あとリンパって言うのが、リンパが詰まると良くないので揉み解して流すんだそうですよ、あっ」
手を動かしながら思い出したように斎藤の顔を見上げた。
「顔のリンパマッサージ気持ちいいんですよ!良かったら……」
「いらん。このまま続けろ」
流石に顔は嫌がる斎藤だが、体は夢主に任せていた。
肘の辺りから手首に近付き、次に手の平、指と疲れを癒していく。
ぐりぐりとツボを刺激するように、心地よい強さで解していく。
普段は触れるなど恥ずかしくて躊躇してしまうが、今は夢中で施術していた。
指も遠慮なく触れた。指の付け根を刺激してから指を挟み、骨ばった斎藤の指を先へ先へとなぞっていく。
斎藤は言葉を発さず、ただ眺めていた。
手の平を終えて腕に戻ると、今度は上腕、肩と続いた。
「凄いもんだ」
斎藤は伏目がちに呟いた。
素直に気持ち良いらしく、虚ろな目をしている。
「あの……嫌でなければ、背中もいいですか……」
「あぁ」
夢主の手に目をやる斎藤、目を伏せたまま返事をした。
さすがに寝転んでもらうのは抵抗がある。
斎藤の後ろに回り、背中の筋肉を解し始めた。
背骨両脇の筋肉を左右に開くように、夢主は拳にした手の指の関節を使って刺激していく。
ふっと力が抜けるような心地よさを感じた斎藤、最早目を瞑っていた。
「あぁ……いい」
思わずぽつりと漏らした。
夢主は斎藤の様子を嬉しそうに微笑み、声を殺して笑い、施術を続けた。
相当疲れていたのか、やがて斎藤は目を瞑ったまま舟を漕ぎ出した。
突然のことに夢主も驚く。
「さ、斎藤さん……大丈夫ですか……」
「っ、ん、あぁ……あぁ大丈夫だ。すまんな、少し休むか」
目を開けて正直に寝ると告げた斎藤。
夢主はくすくす笑いながら手早く布団を広げた。
斎藤はのろのろと、らしくない動きで体を布団に移す。
「あれは」
斎藤は自分の布団が敷かれたのに尚残る布団を見ていた。
「沖田君か……」
頭が回っていないのか思い出すように呟くと、斎藤は静かに体を横たえて目を閉じた。
早くも夢の中である。
「ふふっ、斎藤さん寝ちゃった……」
もう夕暮れ時。
きっと朝まで寝てしまう。
夢主は瞳を隠した斎藤に微笑んだ。
目を閉じても凛々しい顔立ち。
部屋に戻った時より血色が良くなっている気がして、嬉しかった。