57.花の主
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「全く、せっかく土方さんの言う通り一芝居打ってやったのに君のせいで台無しだぜ、沖田君」
ようやく刀を引いた沖田から顔を逸らすと、斎藤はまたも大きく息を吐いた。
「芝居っ?」
「屯所の連中騒いでいたろう、成功じゃなかったのか」
「あぁ……じゃぁわざと、わざとなんですか?!」
大きく驚く沖田に、胡坐を掻いて座り直した斎藤が大きく頷いた。
「当たり前だ。まぁ出来るものならば、そのままとも思ったがな」
楽しそうに眉を上げて揶揄う斎藤は、顔を歪めて笑っている。
夢主は恨めしそうに斎藤を睨んだ。
「まぁ見ていた連中は充分思い知ったろう。君の本気と怖さも伝わったからには、当分は大人しくなるだろうぜ」
「そっ、そうですね……確かに斎藤さんの言う通りです」
「そういう事だ。で、夢主。忘れてはいまいな、花の件だ」
「あっ、はいっ」
「……花?」
夢主はずっと握り締めてしなしなになった藤の花を沖田に見せた。
「えぇと……これは?」
「くしゃくしゃですけど……藤の花です。みなさんがいない間に……毎晩届けられたんです」
話し始めた夢主に斎藤も関心を持った。
「毎晩だと」
「はい、毎晩です……山崎さんではなくて、もう一人……そばに……いたようで」
毎晩花を届けるとは毎晩侵入したということだ。自分達の不在時に、これは不祥事ではないか。
更に女に花を届ける行為が持つ意味を知った上での行動なのか。
沖田も怪訝な面持ちで腰を下ろした。
「安心してください、その方に敵意は無いみたいで……助けていただいたんです。実は一度……怖い目に合いました」
「何っ」
斎藤も沖田も初めて聞く話に険しい顔付きをした。
監察方からは何も報告は無かった。
「二日目の夜でした。暑いですし、体を清めようと手拭いで拭いていたら、奇妙な音がしたんです。それで様子を窺ったら、多分仮病で残っていた隊士の方……」
「なんだと」
「もう屯所から逃げてると思います……みなさんがいない間に脱走を……」
「それで、夢主ちゃん大丈夫だったのですかっ」
沖田が心配そうに身を乗り出した。
「はぃ、襲われそうになったんですけど、この花の主の方が助けてくださいました……」
「畳の変化とも関係があるのか」
夢主は首を縦に大きく振った。
「畳は苦無の跡です。苦無で助けてくれたんです。それで……綺麗に直してました。凄いですねっ」
思わず笑みを漏らした。
その様子から、二人は夢主が花の主に対して全く警戒していないと知る。
ようやく刀を引いた沖田から顔を逸らすと、斎藤はまたも大きく息を吐いた。
「芝居っ?」
「屯所の連中騒いでいたろう、成功じゃなかったのか」
「あぁ……じゃぁわざと、わざとなんですか?!」
大きく驚く沖田に、胡坐を掻いて座り直した斎藤が大きく頷いた。
「当たり前だ。まぁ出来るものならば、そのままとも思ったがな」
楽しそうに眉を上げて揶揄う斎藤は、顔を歪めて笑っている。
夢主は恨めしそうに斎藤を睨んだ。
「まぁ見ていた連中は充分思い知ったろう。君の本気と怖さも伝わったからには、当分は大人しくなるだろうぜ」
「そっ、そうですね……確かに斎藤さんの言う通りです」
「そういう事だ。で、夢主。忘れてはいまいな、花の件だ」
「あっ、はいっ」
「……花?」
夢主はずっと握り締めてしなしなになった藤の花を沖田に見せた。
「えぇと……これは?」
「くしゃくしゃですけど……藤の花です。みなさんがいない間に……毎晩届けられたんです」
話し始めた夢主に斎藤も関心を持った。
「毎晩だと」
「はい、毎晩です……山崎さんではなくて、もう一人……そばに……いたようで」
毎晩花を届けるとは毎晩侵入したということだ。自分達の不在時に、これは不祥事ではないか。
更に女に花を届ける行為が持つ意味を知った上での行動なのか。
沖田も怪訝な面持ちで腰を下ろした。
「安心してください、その方に敵意は無いみたいで……助けていただいたんです。実は一度……怖い目に合いました」
「何っ」
斎藤も沖田も初めて聞く話に険しい顔付きをした。
監察方からは何も報告は無かった。
「二日目の夜でした。暑いですし、体を清めようと手拭いで拭いていたら、奇妙な音がしたんです。それで様子を窺ったら、多分仮病で残っていた隊士の方……」
「なんだと」
「もう屯所から逃げてると思います……みなさんがいない間に脱走を……」
「それで、夢主ちゃん大丈夫だったのですかっ」
沖田が心配そうに身を乗り出した。
「はぃ、襲われそうになったんですけど、この花の主の方が助けてくださいました……」
「畳の変化とも関係があるのか」
夢主は首を縦に大きく振った。
「畳は苦無の跡です。苦無で助けてくれたんです。それで……綺麗に直してました。凄いですねっ」
思わず笑みを漏らした。
その様子から、二人は夢主が花の主に対して全く警戒していないと知る。