56.紫の蝶、蒼く(しのちょう、あおく)
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「副長、会津藩より不貞浪士の捜索要請です!」
「何っ」
土方の声に反応して障子戸を開けた隊士は、斎藤と沖田の顔を確認して頭を下げた。
素早く歩み入り、土方に書簡を渡す。
「六条付近にて浪士潜伏の報せあり……直ちに出陣の準備だ!みんなに伝えろ!総司、斎藤、お前達も急いで仕度しろ!!」
直ちに書簡に目を通した土方は、届けた隊士に指示を出し斎藤達にも仕度を促した。
食事を終えた夢主は着替えの途中、最後の仕上げ、帯を締めている所だった。
「夢主、入るぞ」
「ゎっ……はぃっ!!」
夢主が返事をする間もなく斎藤は障子を開けた。
帯を巻く姿に間が悪かった己を悟り、気まずさを顔に表したのも一瞬で、すぐに自らの仕度に取り掛かった。
「すまんな、だが悪いが急ぎだ、浪士探索に出る。要請場所は遠く無いから夜には戻るだろうが、本当に大人しくしていてくれよ。昨日の馬鹿共は心配いらん。土方さん達が上手くやってくれた。だから屯所で大人しく待っていろ」
「はぃ……」
昨日のおかしな隊士二人の姿を思い出し、夢主の声は小さくなってしまった。
斎藤はいっその事、始末したからもう二度と会わずに済むと告げてやりたかった。
しかし自分の為に粛清されたと思い兼ねない夢主の優しさを案じ、それとなく伝えた。
「行って来るぞ」
「はっ、はい、お気をつけて」
慌しく身支度を終えて大小を腰に斎藤は部屋を出て行った。
あまりに急な出来事。夢主は帯を巻き終えずに、様子を眺めていた。
「行っちゃった……」
さっきまで三人一緒に静かな時を過ごしていたと思ったら、突然またひとりの時間がやってきた。
ふたりに勇気付けられ淋しさを埋めてもらった夢主は帯を結び終えると、ひとり元気な笑顔を作った。
「よしっ、斎藤さん達の分も片付けるよっ」
自分に言い聞かせ、三人分の膳を重ねて持ち上げた。
三段の重さが体へ負荷をかける。それでもぐっと堪えて膳を支えた。
「私だって頑張れる……」
落ち着いた笑顔で膳を運び、皿を洗う準備を始めた。
「何っ」
土方の声に反応して障子戸を開けた隊士は、斎藤と沖田の顔を確認して頭を下げた。
素早く歩み入り、土方に書簡を渡す。
「六条付近にて浪士潜伏の報せあり……直ちに出陣の準備だ!みんなに伝えろ!総司、斎藤、お前達も急いで仕度しろ!!」
直ちに書簡に目を通した土方は、届けた隊士に指示を出し斎藤達にも仕度を促した。
食事を終えた夢主は着替えの途中、最後の仕上げ、帯を締めている所だった。
「夢主、入るぞ」
「ゎっ……はぃっ!!」
夢主が返事をする間もなく斎藤は障子を開けた。
帯を巻く姿に間が悪かった己を悟り、気まずさを顔に表したのも一瞬で、すぐに自らの仕度に取り掛かった。
「すまんな、だが悪いが急ぎだ、浪士探索に出る。要請場所は遠く無いから夜には戻るだろうが、本当に大人しくしていてくれよ。昨日の馬鹿共は心配いらん。土方さん達が上手くやってくれた。だから屯所で大人しく待っていろ」
「はぃ……」
昨日のおかしな隊士二人の姿を思い出し、夢主の声は小さくなってしまった。
斎藤はいっその事、始末したからもう二度と会わずに済むと告げてやりたかった。
しかし自分の為に粛清されたと思い兼ねない夢主の優しさを案じ、それとなく伝えた。
「行って来るぞ」
「はっ、はい、お気をつけて」
慌しく身支度を終えて大小を腰に斎藤は部屋を出て行った。
あまりに急な出来事。夢主は帯を巻き終えずに、様子を眺めていた。
「行っちゃった……」
さっきまで三人一緒に静かな時を過ごしていたと思ったら、突然またひとりの時間がやってきた。
ふたりに勇気付けられ淋しさを埋めてもらった夢主は帯を結び終えると、ひとり元気な笑顔を作った。
「よしっ、斎藤さん達の分も片付けるよっ」
自分に言い聞かせ、三人分の膳を重ねて持ち上げた。
三段の重さが体へ負荷をかける。それでもぐっと堪えて膳を支えた。
「私だって頑張れる……」
落ち着いた笑顔で膳を運び、皿を洗う準備を始めた。