55.守り人
夢主名前設定
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土方がいなくなると、暑さ凌ぎに部屋の障子は全開にされた。
外を見ると目を細めたくなる強い日差しだ。
「もう一年経つんですね……」
庭を眺める沖田がポツリと呟いた。
夢主は自分のことを口にした沖田を振り返った。
庭を眺めていた横顔がこちらを向く。
「あっという間ですね」
目が合った。沖田の言葉にハッとすると、斎藤も感慨深く呟いた。
「長くて早い一年か。あの時は流石の俺も驚いたものだ」
「そう……ですか」
あの日、夢主は気付いたら客間に寝ていた。
自分が現れてから客間へ移動するまでの事情は分からない。斎藤達はどんな状況だったのだろうか。
「これからの話は無理でも、今までの話ならいいですよね、斎藤さん」
時間を潰すいいものが見つかったと、沖田は今まで突っかかってばかりいた斎藤に同意を求めた。
「構わんだろう。確かに色々あったからな」
「初めて夢主ちゃんを見た時のことは今でもよく覚えていますよ。可愛いなぁ……最初からそう思いましたからっ」
同意を得た沖田は心から嬉しそうに語った。
褒められた夢主は恥じらって、首を傾げて謙遜した。
その時、斎藤はどう思ったのか。顔をちらと見た。
視線に気付いた斎藤は「んんっ」と咳払いをひとつした。
「そうだな……」
おもむろに自らの手の平に目を落とした。
何かを思い出して確かめるように見つめている。
「冷えていたな」
「えっ」
斎藤は初めて触れた夢主の肌の感触を思い出していた。
倒れた夢主を抱えた時に覚えた冷たさ。白く美しく、ひんやりとして気持ち良かった。それが強い印象だった。
「お前を客間に運んだのさ。あの日は暑かったが、倒れて冷えていたんだな。奇妙な女を客間に運ぶんだから、おかしな気分だったぜ」
「そうだったんですね、今更言うのもなんですけど……ありがとうございました。ふふっ」
照れ笑いを浮かべて斎藤に一年も前の礼を述べた夢主、おかしな自分にも笑いが込み上げる。
「正直ね、すぐに消えちゃうんじゃないかって、どきどきして気を失っている夢主ちゃんを見ていたんだ。急に現れたから、急に消えるのかなって」
「この一年異常は無いな。不思議なもんだ」
「ゎ……」
斎藤は夢主の存在を確かめるように、頭をわしわしと掴んで荒っぽく撫でた。
「き、消えたりしません……そう思います」
くしゃくしゃに乱れた髪を直しながら、夢主は言い返した。
「フッ、そうか。今更消えられてもこっちの心残りになるだけだ。消えるなら消えると言ってから行けよ」
「やめてくださいっ、もぉ……」
「そうですよ斎藤さん!」
実際二度も突然姿を消した夢主に随分と気を揉み、振り回された。
頼むからいなくならないでくれと言うのが本音だ。
「そうだな」
眉を動かして悪戯に言う斎藤に、夢主はそうです……と微笑み返した。
外を見ると目を細めたくなる強い日差しだ。
「もう一年経つんですね……」
庭を眺める沖田がポツリと呟いた。
夢主は自分のことを口にした沖田を振り返った。
庭を眺めていた横顔がこちらを向く。
「あっという間ですね」
目が合った。沖田の言葉にハッとすると、斎藤も感慨深く呟いた。
「長くて早い一年か。あの時は流石の俺も驚いたものだ」
「そう……ですか」
あの日、夢主は気付いたら客間に寝ていた。
自分が現れてから客間へ移動するまでの事情は分からない。斎藤達はどんな状況だったのだろうか。
「これからの話は無理でも、今までの話ならいいですよね、斎藤さん」
時間を潰すいいものが見つかったと、沖田は今まで突っかかってばかりいた斎藤に同意を求めた。
「構わんだろう。確かに色々あったからな」
「初めて夢主ちゃんを見た時のことは今でもよく覚えていますよ。可愛いなぁ……最初からそう思いましたからっ」
同意を得た沖田は心から嬉しそうに語った。
褒められた夢主は恥じらって、首を傾げて謙遜した。
その時、斎藤はどう思ったのか。顔をちらと見た。
視線に気付いた斎藤は「んんっ」と咳払いをひとつした。
「そうだな……」
おもむろに自らの手の平に目を落とした。
何かを思い出して確かめるように見つめている。
「冷えていたな」
「えっ」
斎藤は初めて触れた夢主の肌の感触を思い出していた。
倒れた夢主を抱えた時に覚えた冷たさ。白く美しく、ひんやりとして気持ち良かった。それが強い印象だった。
「お前を客間に運んだのさ。あの日は暑かったが、倒れて冷えていたんだな。奇妙な女を客間に運ぶんだから、おかしな気分だったぜ」
「そうだったんですね、今更言うのもなんですけど……ありがとうございました。ふふっ」
照れ笑いを浮かべて斎藤に一年も前の礼を述べた夢主、おかしな自分にも笑いが込み上げる。
「正直ね、すぐに消えちゃうんじゃないかって、どきどきして気を失っている夢主ちゃんを見ていたんだ。急に現れたから、急に消えるのかなって」
「この一年異常は無いな。不思議なもんだ」
「ゎ……」
斎藤は夢主の存在を確かめるように、頭をわしわしと掴んで荒っぽく撫でた。
「き、消えたりしません……そう思います」
くしゃくしゃに乱れた髪を直しながら、夢主は言い返した。
「フッ、そうか。今更消えられてもこっちの心残りになるだけだ。消えるなら消えると言ってから行けよ」
「やめてくださいっ、もぉ……」
「そうですよ斎藤さん!」
実際二度も突然姿を消した夢主に随分と気を揉み、振り回された。
頼むからいなくならないでくれと言うのが本音だ。
「そうだな」
眉を動かして悪戯に言う斎藤に、夢主はそうです……と微笑み返した。