54.謹慎の最中
夢主名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「こっこれはっ、あのっ、我々はっ」
みっともない姿を晒したまま、二人は腰を抜かすように尻をついた。
斎藤は切っ先を二人に向けて静かに口を開いた。
「あれが俺が目を掛ける女と知っての行ないか。衆道に励みたいならば余所でやることだ。二度目は無いぞ」
斎藤は夢主は自分のものだと暗に示すと、一人の隊士の鼻先に触れるほど刀を近づけた。
脂汗を流して隊士が微かに頷くと、研ぎ磨かれた切っ先がツンと触れ、鼻頭から一筋の血が流れ落ちた。
「行けっ」
斎藤が血汚れた事に舌打ちをして刀を避けると、隊士二人は下半身を晒したまま無様な恰好で走り去っていった。
「はっ、話が違う!!」
「先生が出てくるなんて思わなかったんだよ!」
小声で罵り合いながら去っていく隊士の会話は斎藤の耳に届いていた。
「何の噂が立っている……夢主に手を出しても構わないとでも思ったか」
斎藤が夢主を一人残し夜遊びに耽っていると妙な噂が回っているのか、その噂に夢主の体が淋しがっていると妙な尾ひれがついたのか。
斎藤がいなくて夢主が淋しがっていたのは事実。
昨日の飛び出し事件は平隊士達も知っている。
葵屋の男の件で、夢主が見知らぬ男に会っていたと噂が立ったのか。
朝まで戻らなかった事が、男買いにでも行ったと誤解されたのか。
逃げた隊士二人は夢主に近付く目的で来ていたのは確かだった。
斎藤は隊士が完全に消えた事を確認してから刀の血を拭い、納刀して部屋に戻った。
「もう大丈夫だ」
不安を抱いて待った夢主に、安心しろと声を掛けた。
傍に腰を下ろすが、夢主は視線を外さず怯えた目で見つめている。
「言いにくいが、奴らはお前を誘っていた」
「そんな……」
「すまん」
真っ直ぐ見つめていると、斎藤が短く謝った。
「ぇ……」
「俺がお前を置いて部屋を空けていたせいだ。良からぬ噂が立ってしまったらしい。平隊士達を戒めるよう土方さんに伝えておく」
「はぃ……」
「ふざけた事を……隊士が集まったら僕が行って話をつけてきましょう」
夢主が沖田を受け入れなかった事は皆が知っている。
だが、稽古の時から恐れられている沖田が凄めば、恐れ慄いて夢主に近寄らないかもしれない。
例え応じてもらえなくとも守るつもりだと、その姿勢を見せれば効果があるだろう。
「俺も一緒に行く。だが今日は……騒ぎを起こす訳にはいかん。土方さんに話を通してからだ」
土方の事だ、どうせ一度は様子を見に来るはずだ。
下手に動くのはやめて、部屋で大人しく過ごそうと決めた。
みっともない姿を晒したまま、二人は腰を抜かすように尻をついた。
斎藤は切っ先を二人に向けて静かに口を開いた。
「あれが俺が目を掛ける女と知っての行ないか。衆道に励みたいならば余所でやることだ。二度目は無いぞ」
斎藤は夢主は自分のものだと暗に示すと、一人の隊士の鼻先に触れるほど刀を近づけた。
脂汗を流して隊士が微かに頷くと、研ぎ磨かれた切っ先がツンと触れ、鼻頭から一筋の血が流れ落ちた。
「行けっ」
斎藤が血汚れた事に舌打ちをして刀を避けると、隊士二人は下半身を晒したまま無様な恰好で走り去っていった。
「はっ、話が違う!!」
「先生が出てくるなんて思わなかったんだよ!」
小声で罵り合いながら去っていく隊士の会話は斎藤の耳に届いていた。
「何の噂が立っている……夢主に手を出しても構わないとでも思ったか」
斎藤が夢主を一人残し夜遊びに耽っていると妙な噂が回っているのか、その噂に夢主の体が淋しがっていると妙な尾ひれがついたのか。
斎藤がいなくて夢主が淋しがっていたのは事実。
昨日の飛び出し事件は平隊士達も知っている。
葵屋の男の件で、夢主が見知らぬ男に会っていたと噂が立ったのか。
朝まで戻らなかった事が、男買いにでも行ったと誤解されたのか。
逃げた隊士二人は夢主に近付く目的で来ていたのは確かだった。
斎藤は隊士が完全に消えた事を確認してから刀の血を拭い、納刀して部屋に戻った。
「もう大丈夫だ」
不安を抱いて待った夢主に、安心しろと声を掛けた。
傍に腰を下ろすが、夢主は視線を外さず怯えた目で見つめている。
「言いにくいが、奴らはお前を誘っていた」
「そんな……」
「すまん」
真っ直ぐ見つめていると、斎藤が短く謝った。
「ぇ……」
「俺がお前を置いて部屋を空けていたせいだ。良からぬ噂が立ってしまったらしい。平隊士達を戒めるよう土方さんに伝えておく」
「はぃ……」
「ふざけた事を……隊士が集まったら僕が行って話をつけてきましょう」
夢主が沖田を受け入れなかった事は皆が知っている。
だが、稽古の時から恐れられている沖田が凄めば、恐れ慄いて夢主に近寄らないかもしれない。
例え応じてもらえなくとも守るつもりだと、その姿勢を見せれば効果があるだろう。
「俺も一緒に行く。だが今日は……騒ぎを起こす訳にはいかん。土方さんに話を通してからだ」
土方の事だ、どうせ一度は様子を見に来るはずだ。
下手に動くのはやめて、部屋で大人しく過ごそうと決めた。