53.切ない三人夜
夢主名前設定
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「さぁ、話はこれまでだ。布団を出すか」
「あっ、僕いいこと思い付きましたよ!」
沖田の嬉しそうな声に、二人は何事かと顔を向けた。
「今夜は僕もここで寝ます!ね、そうしたら斎藤さん変な気を起こしようがないでしょう?夢主ちゃんが僕の部屋に来るのは色々と……どうせ明日三人とも謹慎ですし」
立ち上がって「ねっ?」と首を傾げて、自らの名案を讃える笑顔を見せる。
「私は……構いませんが……」
「いいだろう、寒くもないし俺は雑魚寝で構わん。沖田君、布団を持ってくることはないぞ」
斎藤は部屋を出ようとする沖田を呼び止めた。
こんな真夜中にどたばたする必要はない。
「あははっ、ありがとうございます。でも刀だけは持ってきますね、寝る時そばに無いと落ち着かないので」
にこりと目を細めて、沖田は一旦自室へ戻って行った。
弾む足取りの後ろ姿を見送って、斎藤は外を覗いた。
「やれやれ。今のうちに布団を広げるか」
「はぃっ」
「おいっ」
「す……すみません……」
部屋の中に戻りきらない斎藤の背中に、夢主は後ろからしがみついた。
咎める気配を感じても、ぎゅぅと掴んだ手を離さない。
「少しだけ……」
「阿呆、何を考えているっ」
いつもの斎藤なら適当に流すが、今夜は夢主を離そうとした。
冷静を装っていても、珍しく動揺を隠せずにいる。
「だって……甘えたかったらこうしろって……斎藤さんが言ったんですよ、もう覚えていませんか……」
斎藤の背に顔をうずめたまま、籠った声で呟いた。
困らせたい訳ではない。いけないと分かっている。
けれど抱きしめられて感じた安らかさを、もう一度求めてしまった。
背中に顔が触れて、斎藤の匂いを感じる。
淋しい夜に甘えた布団と同じ匂い、少しだけ男臭くて優しい、斎藤自身の香り。心が解れていく。
「そうは言ったが、時と状況を考えろ」
斎藤は無理矢理に体を回して夢主の肩を掴み、二人の体を離した。
「陽があって、皆が起きて動いている時なら、構わん。今は……こんな寝静まった夜だ、沖田君が戻らなければ……夜の床に、二人なんだぞ」
ぞくり……低く沈んだ声を聞かされ、夢主は不意に掴まれた肩が痺れるのを感じた。
その痺れは腕を伝って下りていく。
目が合うと瞳の鋭さに耐えられず、目を逸らしてしまった。
「ごめんなさい……凄く……甘えたかったんです、本当にすみません、今日は私……ちょっと変ですね……」
下を向いて淋しく笑みを漏らした夢主、今日一日の自分のおかしな振る舞いを反省した。
斎藤はどうしたものかと困って夢主を見下ろし、そっと頭を撫でてやった。
不意に夢主の顔が斎藤に向いた。
嬉しいのか少し微笑んでおり、恥ずかしいのか瞳が少し潤んでいた。
「っ」
反射的に斎藤は夢主を抱きしめていた。
「さ、斎藤さんっ……」
驚くが、体は離せなかった。
熱い息を感じる。
取り残された夢主の手。斎藤の背に回していいのか、宙に浮いたまま動かせずにいる。
抱き返してしまいたい。今さっき、衝動で抱きついたばかりなのに、今はもう出来ない。
……どうして……
体が動かない。手を回せないのは、してはいけないと分かっているから。
今はまだ……出来ない。
夢主が戸惑っていると、小さな音が聞こえた。
チャッ……
「あっ、僕いいこと思い付きましたよ!」
沖田の嬉しそうな声に、二人は何事かと顔を向けた。
「今夜は僕もここで寝ます!ね、そうしたら斎藤さん変な気を起こしようがないでしょう?夢主ちゃんが僕の部屋に来るのは色々と……どうせ明日三人とも謹慎ですし」
立ち上がって「ねっ?」と首を傾げて、自らの名案を讃える笑顔を見せる。
「私は……構いませんが……」
「いいだろう、寒くもないし俺は雑魚寝で構わん。沖田君、布団を持ってくることはないぞ」
斎藤は部屋を出ようとする沖田を呼び止めた。
こんな真夜中にどたばたする必要はない。
「あははっ、ありがとうございます。でも刀だけは持ってきますね、寝る時そばに無いと落ち着かないので」
にこりと目を細めて、沖田は一旦自室へ戻って行った。
弾む足取りの後ろ姿を見送って、斎藤は外を覗いた。
「やれやれ。今のうちに布団を広げるか」
「はぃっ」
「おいっ」
「す……すみません……」
部屋の中に戻りきらない斎藤の背中に、夢主は後ろからしがみついた。
咎める気配を感じても、ぎゅぅと掴んだ手を離さない。
「少しだけ……」
「阿呆、何を考えているっ」
いつもの斎藤なら適当に流すが、今夜は夢主を離そうとした。
冷静を装っていても、珍しく動揺を隠せずにいる。
「だって……甘えたかったらこうしろって……斎藤さんが言ったんですよ、もう覚えていませんか……」
斎藤の背に顔をうずめたまま、籠った声で呟いた。
困らせたい訳ではない。いけないと分かっている。
けれど抱きしめられて感じた安らかさを、もう一度求めてしまった。
背中に顔が触れて、斎藤の匂いを感じる。
淋しい夜に甘えた布団と同じ匂い、少しだけ男臭くて優しい、斎藤自身の香り。心が解れていく。
「そうは言ったが、時と状況を考えろ」
斎藤は無理矢理に体を回して夢主の肩を掴み、二人の体を離した。
「陽があって、皆が起きて動いている時なら、構わん。今は……こんな寝静まった夜だ、沖田君が戻らなければ……夜の床に、二人なんだぞ」
ぞくり……低く沈んだ声を聞かされ、夢主は不意に掴まれた肩が痺れるのを感じた。
その痺れは腕を伝って下りていく。
目が合うと瞳の鋭さに耐えられず、目を逸らしてしまった。
「ごめんなさい……凄く……甘えたかったんです、本当にすみません、今日は私……ちょっと変ですね……」
下を向いて淋しく笑みを漏らした夢主、今日一日の自分のおかしな振る舞いを反省した。
斎藤はどうしたものかと困って夢主を見下ろし、そっと頭を撫でてやった。
不意に夢主の顔が斎藤に向いた。
嬉しいのか少し微笑んでおり、恥ずかしいのか瞳が少し潤んでいた。
「っ」
反射的に斎藤は夢主を抱きしめていた。
「さ、斎藤さんっ……」
驚くが、体は離せなかった。
熱い息を感じる。
取り残された夢主の手。斎藤の背に回していいのか、宙に浮いたまま動かせずにいる。
抱き返してしまいたい。今さっき、衝動で抱きついたばかりなのに、今はもう出来ない。
……どうして……
体が動かない。手を回せないのは、してはいけないと分かっているから。
今はまだ……出来ない。
夢主が戸惑っていると、小さな音が聞こえた。
チャッ……