53.切ない三人夜
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「そうだ、ひとつ訊いておかねばならん事があったな」
「なんでしょうか……」
斎藤が思い出して呟いた。
「土方さんから聞いておけとな、言われたんだが」
眉をぴくりと動かしたのは何故だろうと夢主は緊張して斎藤を見つめた。
「随分な色男と戻って来たそうだな」
「だ、誰なんですか」
心底気になる沖田は、斎藤から質問を奪うと身を乗り出した。
斎藤も返答を待っていた。
説明を受けた際、土方は「まだガキだ」と付け足した。気にするまでもないと考えたが、やはり気にはなる。
正真正銘の色男が言う色男なのだから、ガキとは言えそれなりなのだろう。
「あ、あの人は……前に葵屋という料亭を覗きに行ったのを覚えていますか」
葵屋のそば、目の前に立ちはだかった蒼紫を夢主は思い出した。
顔を隠して巻いた首元の白い布、時折覗く締まった唇、冷たくも真っ直ぐな心根を感じる綺麗な瞳、土方に似た漆黒の艶髪。もう何年も経てば目の前に立つ女を、誰でも虜にしてしまうだろう。
それ程に整った美しい顔立ちをしていた。
「あそこか」
「覚えていますよ!え、じゃぁ、その男の人って言うのは……」
「ま、まだ十幾つかの子供ですよっ!迷子になって……辿り着いた先に葵屋があったんです。そこで、困っていた私を見つけた主のお爺さんが、私を送るようその子に頼んでくださって……」
「その子供も御庭番衆なのか」
夢主は大きく頷いた。
「成る程な。土方さんでさえ目で追えなかったのだから、相当な忍びなのだろう」
黙って上目でおどおどしている夢主に、斎藤は確認した。
夢主は小さく何度も頷いている。
「あの土方さんが随分な伊達男だったと言うくらいですから相当……」
沖田はまだ気になるのか夢主の反応を見逃すまいと睨むように見つめている。
「だからっ、まだ子供ですからっ!確かに、男の子にしては綺麗で……日本人形みたいで見惚れちゃいましたけど……」
褒め称える言葉を聞き、沖田の顔色が変わっていく。夢主は慌てて言葉を付け足した。
「すっ、すごく冷たい言葉の、寡黙な子で……忍びの人だからなのかなぁ~って……あははぁ……」
……幼い操ちゃんが転んだの見て戸惑うくらい優しくて可愛い蒼紫様だったけど……内緒にしておこぅ……ふふっ……
そう思いながら胸を撫で下ろす沖田を見ていると、フンと口元を緩める斎藤と目が合った。
見抜かれていると気付いたが、苦笑いを返すと斎藤もやり過ごしてくれた。
「これ以上恋敵が増えたら堪らないですからね」
一通り話を終えた頃には、夜番の隊士達も寝静まるほど夜が更けていた。
「なんでしょうか……」
斎藤が思い出して呟いた。
「土方さんから聞いておけとな、言われたんだが」
眉をぴくりと動かしたのは何故だろうと夢主は緊張して斎藤を見つめた。
「随分な色男と戻って来たそうだな」
「だ、誰なんですか」
心底気になる沖田は、斎藤から質問を奪うと身を乗り出した。
斎藤も返答を待っていた。
説明を受けた際、土方は「まだガキだ」と付け足した。気にするまでもないと考えたが、やはり気にはなる。
正真正銘の色男が言う色男なのだから、ガキとは言えそれなりなのだろう。
「あ、あの人は……前に葵屋という料亭を覗きに行ったのを覚えていますか」
葵屋のそば、目の前に立ちはだかった蒼紫を夢主は思い出した。
顔を隠して巻いた首元の白い布、時折覗く締まった唇、冷たくも真っ直ぐな心根を感じる綺麗な瞳、土方に似た漆黒の艶髪。もう何年も経てば目の前に立つ女を、誰でも虜にしてしまうだろう。
それ程に整った美しい顔立ちをしていた。
「あそこか」
「覚えていますよ!え、じゃぁ、その男の人って言うのは……」
「ま、まだ十幾つかの子供ですよっ!迷子になって……辿り着いた先に葵屋があったんです。そこで、困っていた私を見つけた主のお爺さんが、私を送るようその子に頼んでくださって……」
「その子供も御庭番衆なのか」
夢主は大きく頷いた。
「成る程な。土方さんでさえ目で追えなかったのだから、相当な忍びなのだろう」
黙って上目でおどおどしている夢主に、斎藤は確認した。
夢主は小さく何度も頷いている。
「あの土方さんが随分な伊達男だったと言うくらいですから相当……」
沖田はまだ気になるのか夢主の反応を見逃すまいと睨むように見つめている。
「だからっ、まだ子供ですからっ!確かに、男の子にしては綺麗で……日本人形みたいで見惚れちゃいましたけど……」
褒め称える言葉を聞き、沖田の顔色が変わっていく。夢主は慌てて言葉を付け足した。
「すっ、すごく冷たい言葉の、寡黙な子で……忍びの人だからなのかなぁ~って……あははぁ……」
……幼い操ちゃんが転んだの見て戸惑うくらい優しくて可愛い蒼紫様だったけど……内緒にしておこぅ……ふふっ……
そう思いながら胸を撫で下ろす沖田を見ていると、フンと口元を緩める斎藤と目が合った。
見抜かれていると気付いたが、苦笑いを返すと斎藤もやり過ごしてくれた。
「これ以上恋敵が増えたら堪らないですからね」
一通り話を終えた頃には、夜番の隊士達も寝静まるほど夜が更けていた。