52.仕置きと罰
夢主名前設定
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夜もまだ深いうちに、夢主は目を覚ました。
太夫は既に引き払っていた。夢主の傍らで土方が一人、手酌をしている。
「起きたか……」
目覚めに気付くと土方は静かに訊ねた。
「はぃ……」
太夫の姿が見えない理由を訊きかったが、静か過ぎる部屋の空気が、何かを訊ねる事を許さなかった。
土方は何か思案し、黙って手元の猪口を眺めている。
やがて考えが纏まったのか、コトリと小さな音を立てて膳に猪口を戻した。
「あの……」
「なんだ」
膳から手を離して顔を上げた土方は、静かで凛々しい真面目な面持ちをしていた。
「どうして……ここに連れて来てくれたんですか……」
「あぁ?……見たかったんだろ、女の顔が」
「はぃ……」
「気は済んだか」
実の所、美しい太夫の姿に、より気が滅入ってしまった。
色気を含みながらも優しく美しい微笑、凛として教養のにじみ出るしとやかな所作、何年も教え込まれ花街から与えられて体に染み、身に付いた重みがあった。
太刀打ち出来ないと自覚してしまったのだ。
「……はぃ……諦めがつきましたっ」
「何っ?」
「ふふっ……」
夢主は吹っ切った笑顔で土方に微笑みかけた。
土方は思わず髪を掻き揚げるように頭を抱え、長い息を吐いた。
「お前なぁ……お前っ、……俺はな、お前に幸せになって欲しくて……男の責任がよ……果たせねぇじゃねぇか……」
「え……」
片手で頭を抱えて話す土方らしからぬくぐもった小声に、夢主は聞き返した。
「いや、何でもねぇよ。何でお前がそう思うのかが、俺には分からねぇな!!相生太夫は確かに綺麗だろうよ。賢くて教養もあって文句のつけようがねぇ」
夢主は太夫を誉める言葉に対し、黙って下を向くと頷いた。
「だからって、お前が諦める理由が分からねぇな!完璧だからって男が惹かれる訳じゃねぇ……お前をここに連れてきたのは諦めさせる為じゃねぇんだよ」
「土方さん……」
土方にとって厄介なだけの存在かと思っていた自分を、こんなにも気に掛けてくれる。
斎藤との仲を気に掛けてくれているのか。戸惑いもあるが、嬉しさを感じた。
「斎藤は大馬鹿だと思ったが、お前もなかなかの馬鹿野郎だな」
「はぃ……大馬鹿です」
夢主は土方にまで応援されていると知らず、簡単に諦めようとした自分をはにかんだ。
……望んでも……いいのかな……
自分の気持ちを認めてもらえたようで嬉しかった。
「お前も負けてねぇだろぅ……」
「ぇっ」
斎藤や沖田、それに土方にとって、夢主は太夫に劣る存在ではない。土方はそう伝えたかったのだ。
夢主は頬を染めて驚いた。
「帰るぞ……」
夢主が赤い顔のまま布団の中で動けずにいると、土方は帰り支度を促した。
「こっ、こんな時間に……ですか」
「あぁ、こんな時間にだ。帰るぞ。それとも、このまま二人きりで……朝まで過ごしたいのか」
立ち上がって怖いほど静かに話す土方に、夢主はゆっくりと首を振った。
このまま見下ろされたら立てなくなってしまいそうだった。
「行くぞ」
部屋を去ろうとする土方、夢主は急いで後に続いた。
太夫は既に引き払っていた。夢主の傍らで土方が一人、手酌をしている。
「起きたか……」
目覚めに気付くと土方は静かに訊ねた。
「はぃ……」
太夫の姿が見えない理由を訊きかったが、静か過ぎる部屋の空気が、何かを訊ねる事を許さなかった。
土方は何か思案し、黙って手元の猪口を眺めている。
やがて考えが纏まったのか、コトリと小さな音を立てて膳に猪口を戻した。
「あの……」
「なんだ」
膳から手を離して顔を上げた土方は、静かで凛々しい真面目な面持ちをしていた。
「どうして……ここに連れて来てくれたんですか……」
「あぁ?……見たかったんだろ、女の顔が」
「はぃ……」
「気は済んだか」
実の所、美しい太夫の姿に、より気が滅入ってしまった。
色気を含みながらも優しく美しい微笑、凛として教養のにじみ出るしとやかな所作、何年も教え込まれ花街から与えられて体に染み、身に付いた重みがあった。
太刀打ち出来ないと自覚してしまったのだ。
「……はぃ……諦めがつきましたっ」
「何っ?」
「ふふっ……」
夢主は吹っ切った笑顔で土方に微笑みかけた。
土方は思わず髪を掻き揚げるように頭を抱え、長い息を吐いた。
「お前なぁ……お前っ、……俺はな、お前に幸せになって欲しくて……男の責任がよ……果たせねぇじゃねぇか……」
「え……」
片手で頭を抱えて話す土方らしからぬくぐもった小声に、夢主は聞き返した。
「いや、何でもねぇよ。何でお前がそう思うのかが、俺には分からねぇな!!相生太夫は確かに綺麗だろうよ。賢くて教養もあって文句のつけようがねぇ」
夢主は太夫を誉める言葉に対し、黙って下を向くと頷いた。
「だからって、お前が諦める理由が分からねぇな!完璧だからって男が惹かれる訳じゃねぇ……お前をここに連れてきたのは諦めさせる為じゃねぇんだよ」
「土方さん……」
土方にとって厄介なだけの存在かと思っていた自分を、こんなにも気に掛けてくれる。
斎藤との仲を気に掛けてくれているのか。戸惑いもあるが、嬉しさを感じた。
「斎藤は大馬鹿だと思ったが、お前もなかなかの馬鹿野郎だな」
「はぃ……大馬鹿です」
夢主は土方にまで応援されていると知らず、簡単に諦めようとした自分をはにかんだ。
……望んでも……いいのかな……
自分の気持ちを認めてもらえたようで嬉しかった。
「お前も負けてねぇだろぅ……」
「ぇっ」
斎藤や沖田、それに土方にとって、夢主は太夫に劣る存在ではない。土方はそう伝えたかったのだ。
夢主は頬を染めて驚いた。
「帰るぞ……」
夢主が赤い顔のまま布団の中で動けずにいると、土方は帰り支度を促した。
「こっ、こんな時間に……ですか」
「あぁ、こんな時間にだ。帰るぞ。それとも、このまま二人きりで……朝まで過ごしたいのか」
立ち上がって怖いほど静かに話す土方に、夢主はゆっくりと首を振った。
このまま見下ろされたら立てなくなってしまいそうだった。
「行くぞ」
部屋を去ろうとする土方、夢主は急いで後に続いた。