52.仕置きと罰
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その頃、土方は慣れた様子である揚屋へ入って行った。
腕を組んで歩くさまはいかにも通い慣れた男だ。
「こいつはな、言うなればお前ではなく、斎藤に対する罰だ」
後ろを歩く夢主に、前を向いたまま告げた。
仕置き、何をもって斎藤への罰とするのか夢主には分からない。
「土方さん……」
「お前を放ったらかしている斎藤への罰だよ」
土方は夢主の顔を確認すると揚屋の一室に自ら案内した。
「座って待ってろ」
そう言って土方も適当な場所に胡坐をかいた。
少し距離を取って正座をする夢主。暫く沈黙が続いた。
どこからか聞こえてくる三味線や胡弓の音が二人の無言の間を埋める。
やがて酒が運ばれてきたが、土方は手をつけずにいた。
「あ、あの……」
「なんだ」
「太夫さんを呼ぶと……物凄く……お金が要るって……大丈夫なんですか、こんな事で呼んでしまって……」
「今更何言いやがる!お前、俺達のつけで呼ぶ気だったんだろうよ。ま、斎藤にふた月、み月の減給で充ててもらおうか」
だから気にするなと、土方は顔を逸らした。
しかし夢主はまた斎藤の迷惑になると、俯いた。
それから暫くして一人の太夫が姿を現した。
相生太夫。
艶 やかな大振りの着物を引きずり優美に座敷を進む。
土方と夢主、二人の前に座ると両手をついて挨拶を済ませた。
夢主がその姿を見たくて見たくて、それでも目にしたく無かったヒトが目の前にいる。
そんな現実に、緊張と混乱で鼓動が速まっていった。
土方の他に女がいると知らなかった太夫だが、夢主と目が合った瞬間、にこりと目と唇を細めて微笑んだ。
「まさか土方はんから逢状がかかるとは……意外どすなぁ」
「ふん、斎藤じゃなくて悪かったな」
「構しまへん、色町一の噂のお人にお目にかかれるとは、嬉しおす」
「ふっ、言ってくれるな」
はなから人払いされ、夢主と土方、そして相生太夫の三人で酒を呑む、なんとも不思議な席になった。
「お嬢はんも、おひとつどうぞ……」
土方に酒を注いだ太夫はそのまま夢主にも酌をとお銚子を向けた。
「あっ……あの……」
「夢主」
断わりたい夢主は土方を確認するが、目が合うと土方は首を振った。
「呑め、夢主」
「え……でも……」
「呑め。今日は俺のいう事を聞いてもらうぞ」
本来なら仕置きを受けるはずの夢主。きっぱり言われると断れず、猪口に太夫から酒を受けた。
注ぎ終わると太夫は夢主に艶 やかで柔らかい笑みを向けた。
「あっ……」
その美しさに頬を染め、思わず声を漏らしてしまった。
……やっぱり……とっても美しい方……品があって、太刀打ちなんて…………少しも敵わない……
猪口に目を落とすと、涙が浮かんできた。
震える猪口の酒の揺らぎは、そのまま夢主の心を表しているようだ。
涙を落とすまいと堪えていると、土方が酒を含めと顎を動かして催促した。
「お酒、本当に弱いんです……」
「知ってるさ、いいから早く呑め。俺に呑まされたいか」
凄んで見せる土方に、夢主は覚悟を決めて酒を口に運んだ。
「あぁっ……やっぱり……」
とても熱い酒が口中に広がり、夢主は一瞬で呑まれてしまった。
「らめれす……ぁつ……くて……」
力が抜けて体を支えきれず、音を立てて膳を倒し、体を横たえてしまった。
すぐに夢主の寝息が聞こえ始める。体を崩した拍子に流れた涙で、頬が濡れていた。
腕を組んで歩くさまはいかにも通い慣れた男だ。
「こいつはな、言うなればお前ではなく、斎藤に対する罰だ」
後ろを歩く夢主に、前を向いたまま告げた。
仕置き、何をもって斎藤への罰とするのか夢主には分からない。
「土方さん……」
「お前を放ったらかしている斎藤への罰だよ」
土方は夢主の顔を確認すると揚屋の一室に自ら案内した。
「座って待ってろ」
そう言って土方も適当な場所に胡坐をかいた。
少し距離を取って正座をする夢主。暫く沈黙が続いた。
どこからか聞こえてくる三味線や胡弓の音が二人の無言の間を埋める。
やがて酒が運ばれてきたが、土方は手をつけずにいた。
「あ、あの……」
「なんだ」
「太夫さんを呼ぶと……物凄く……お金が要るって……大丈夫なんですか、こんな事で呼んでしまって……」
「今更何言いやがる!お前、俺達のつけで呼ぶ気だったんだろうよ。ま、斎藤にふた月、み月の減給で充ててもらおうか」
だから気にするなと、土方は顔を逸らした。
しかし夢主はまた斎藤の迷惑になると、俯いた。
それから暫くして一人の太夫が姿を現した。
相生太夫。
土方と夢主、二人の前に座ると両手をついて挨拶を済ませた。
夢主がその姿を見たくて見たくて、それでも目にしたく無かったヒトが目の前にいる。
そんな現実に、緊張と混乱で鼓動が速まっていった。
土方の他に女がいると知らなかった太夫だが、夢主と目が合った瞬間、にこりと目と唇を細めて微笑んだ。
「まさか土方はんから逢状がかかるとは……意外どすなぁ」
「ふん、斎藤じゃなくて悪かったな」
「構しまへん、色町一の噂のお人にお目にかかれるとは、嬉しおす」
「ふっ、言ってくれるな」
はなから人払いされ、夢主と土方、そして相生太夫の三人で酒を呑む、なんとも不思議な席になった。
「お嬢はんも、おひとつどうぞ……」
土方に酒を注いだ太夫はそのまま夢主にも酌をとお銚子を向けた。
「あっ……あの……」
「夢主」
断わりたい夢主は土方を確認するが、目が合うと土方は首を振った。
「呑め、夢主」
「え……でも……」
「呑め。今日は俺のいう事を聞いてもらうぞ」
本来なら仕置きを受けるはずの夢主。きっぱり言われると断れず、猪口に太夫から酒を受けた。
注ぎ終わると太夫は夢主に
「あっ……」
その美しさに頬を染め、思わず声を漏らしてしまった。
……やっぱり……とっても美しい方……品があって、太刀打ちなんて…………少しも敵わない……
猪口に目を落とすと、涙が浮かんできた。
震える猪口の酒の揺らぎは、そのまま夢主の心を表しているようだ。
涙を落とすまいと堪えていると、土方が酒を含めと顎を動かして催促した。
「お酒、本当に弱いんです……」
「知ってるさ、いいから早く呑め。俺に呑まされたいか」
凄んで見せる土方に、夢主は覚悟を決めて酒を口に運んだ。
「あぁっ……やっぱり……」
とても熱い酒が口中に広がり、夢主は一瞬で呑まれてしまった。
「らめれす……ぁつ……くて……」
力が抜けて体を支えきれず、音を立てて膳を倒し、体を横たえてしまった。
すぐに夢主の寝息が聞こえ始める。体を崩した拍子に流れた涙で、頬が濡れていた。