51.想い違い
夢主名前設定
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……もしかして……み、操ちゃんっ?!!
蒼紫に手首を掴まれたまま葵屋の入り口に目をやると、中から小さな女の子が出てきた。
肩を揺らして、よたよたと歩いている。
「あははぁ、あーたま!!あーたま!!」
女の子は蒼紫を見つけると愛らしい笑い声を上げて、こちらを指を差した。
蒼紫を目指して足を踏み出す。しかし気持ちに体が追いつかず、小さな女の子はつまずいて、ぱたりと転んだ。
「っ」
落ち着いた顔をしていた蒼紫が堪らず声を漏らし、夢主の手を離した。
幼子が体を起こして、泣き出しそうに震えている。
すぐに中から若い娘が二人出てきて、慌てて駆け寄った。
「大丈夫っ?!!びっくりしたわねぇ、ほら立てるかしら」
「操ちゃんっ、勝手のお外に出たら駄目よ」
「あーたま!あーたまぁ!!」
転んでびっくりした所へ戒めを受けた小さな操は、両手をばたつかせて涙を堪え、蒼紫の名を目いっぱい叫び始めた。
「あーたま!!あーたま!!」
「蒼紫様は今お話しているの、ほら行きましょう」
娘二人は翁と蒼紫に頭を下げ、操を抱えて中へ戻って行った。
操は抱えられた腕の中、泣き出して大きな声で蒼紫の名を連呼していたが、中に連れて行かれその声は次第に聞こえなくなった。
……お……お増さんとお近さん?……やっぱり操ちゃんだったんだ!!
「かっ……可愛ぃ……」
夢主は先程の恥ずかしさとは違い、操の愛くるしい姿に頬を染め、目を細めた。
「ふぉっふぉっ、可愛いじゃろう、自慢の看板娘じゃよ!!色気では到底お主には及ばんがのぉ、ふぉっふぉっふぉっ!!」
「えっ、そっ、そんなっ……!!」
意図的ににやけた顔で見られていると分かるが、翁に更に赤い顔を向けてしまった。
翁は思う壺じゃぞと、ますます嬉しそうに笑った。
「おぉ、真っ赤になって可愛ぃのぉ。お主は葵屋の仕事には向かんのぉ、すぐ顔に出るわい」
「翁」
忍びの話に及びそうな冗談。度が過ぎる翁を蒼紫が軽く戒めた。
「分かっておるわぃ、儂を誰じゃと思っとるんじゃ」
翁は蒼紫に睨みを利かせ、手を後に組んで夢主に一歩二歩と歩み寄った。
「所でお主、こんな所で一人何をしておる。壬生では随分と大事にされているそうではないか。まさかとは思うが、一人で飛び出してきたのかね」
翁に嘘はつけないと、赤い顔のまま小さく頷いた。
すると翁は夢主にぐっと近付き、耳元で囁いた。
「なんじゃ、痴情のもつれかね」
「えぇっ、ち、違いますっ!!」
夢主の慌てぶりに「図星じゃのぅ」とはしゃぐ翁。
その姿に蒼紫はやれやれと顔をしかめている。
「とにかく今は彼奴らと関わる時期ではないのでな、もし飛び出したお主が居場所を探しているとしても、一度葵屋に入れば二度とあちらへは戻れまいぞ」
「……そう……では……」
葵屋へ身を寄せようと思っていた訳では無い。
だが、いざという時には……と頭の片隅に甘い考えがあったのは確か。釘を刺され、黙って俯くしかなかった。
「じ、実はある場所に行きたいんですが……」
「待てまて、詳しい事情を聞かせてもらった所で、今の儂らにはどうする事も出来んのじゃ。可哀想じゃが、お主に力を貸すわけにはいかん。ならばいっそ、その事情は黙って持って帰ってくれまいか」
「翁さん……」
悲しい目で翁を見るが、翁の言う通りであった。
将軍の為の御庭番衆が勝手に会津藩お抱えの新選組の元にいる人間に手を貸すことは出来ない。
「すまんな。さて、蒼紫や、この娘さんを安全な所まで送り届けてやりなさい」
「分かりました」
夢主から離れた翁とすれ違うように、蒼紫が近寄った。
「ついて来い」
「は……はぃ……」
夢主は翁に頭を下げ、先を急ぐ蒼紫の後を追った。
力にはなれないが、いい娘さんじゃ。
翁は遠ざかる若い二人の後姿を微笑ましく眺めた。
蒼紫に手首を掴まれたまま葵屋の入り口に目をやると、中から小さな女の子が出てきた。
肩を揺らして、よたよたと歩いている。
「あははぁ、あーたま!!あーたま!!」
女の子は蒼紫を見つけると愛らしい笑い声を上げて、こちらを指を差した。
蒼紫を目指して足を踏み出す。しかし気持ちに体が追いつかず、小さな女の子はつまずいて、ぱたりと転んだ。
「っ」
落ち着いた顔をしていた蒼紫が堪らず声を漏らし、夢主の手を離した。
幼子が体を起こして、泣き出しそうに震えている。
すぐに中から若い娘が二人出てきて、慌てて駆け寄った。
「大丈夫っ?!!びっくりしたわねぇ、ほら立てるかしら」
「操ちゃんっ、勝手のお外に出たら駄目よ」
「あーたま!あーたまぁ!!」
転んでびっくりした所へ戒めを受けた小さな操は、両手をばたつかせて涙を堪え、蒼紫の名を目いっぱい叫び始めた。
「あーたま!!あーたま!!」
「蒼紫様は今お話しているの、ほら行きましょう」
娘二人は翁と蒼紫に頭を下げ、操を抱えて中へ戻って行った。
操は抱えられた腕の中、泣き出して大きな声で蒼紫の名を連呼していたが、中に連れて行かれその声は次第に聞こえなくなった。
……お……お増さんとお近さん?……やっぱり操ちゃんだったんだ!!
「かっ……可愛ぃ……」
夢主は先程の恥ずかしさとは違い、操の愛くるしい姿に頬を染め、目を細めた。
「ふぉっふぉっ、可愛いじゃろう、自慢の看板娘じゃよ!!色気では到底お主には及ばんがのぉ、ふぉっふぉっふぉっ!!」
「えっ、そっ、そんなっ……!!」
意図的ににやけた顔で見られていると分かるが、翁に更に赤い顔を向けてしまった。
翁は思う壺じゃぞと、ますます嬉しそうに笑った。
「おぉ、真っ赤になって可愛ぃのぉ。お主は葵屋の仕事には向かんのぉ、すぐ顔に出るわい」
「翁」
忍びの話に及びそうな冗談。度が過ぎる翁を蒼紫が軽く戒めた。
「分かっておるわぃ、儂を誰じゃと思っとるんじゃ」
翁は蒼紫に睨みを利かせ、手を後に組んで夢主に一歩二歩と歩み寄った。
「所でお主、こんな所で一人何をしておる。壬生では随分と大事にされているそうではないか。まさかとは思うが、一人で飛び出してきたのかね」
翁に嘘はつけないと、赤い顔のまま小さく頷いた。
すると翁は夢主にぐっと近付き、耳元で囁いた。
「なんじゃ、痴情のもつれかね」
「えぇっ、ち、違いますっ!!」
夢主の慌てぶりに「図星じゃのぅ」とはしゃぐ翁。
その姿に蒼紫はやれやれと顔をしかめている。
「とにかく今は彼奴らと関わる時期ではないのでな、もし飛び出したお主が居場所を探しているとしても、一度葵屋に入れば二度とあちらへは戻れまいぞ」
「……そう……では……」
葵屋へ身を寄せようと思っていた訳では無い。
だが、いざという時には……と頭の片隅に甘い考えがあったのは確か。釘を刺され、黙って俯くしかなかった。
「じ、実はある場所に行きたいんですが……」
「待てまて、詳しい事情を聞かせてもらった所で、今の儂らにはどうする事も出来んのじゃ。可哀想じゃが、お主に力を貸すわけにはいかん。ならばいっそ、その事情は黙って持って帰ってくれまいか」
「翁さん……」
悲しい目で翁を見るが、翁の言う通りであった。
将軍の為の御庭番衆が勝手に会津藩お抱えの新選組の元にいる人間に手を貸すことは出来ない。
「すまんな。さて、蒼紫や、この娘さんを安全な所まで送り届けてやりなさい」
「分かりました」
夢主から離れた翁とすれ違うように、蒼紫が近寄った。
「ついて来い」
「は……はぃ……」
夢主は翁に頭を下げ、先を急ぐ蒼紫の後を追った。
力にはなれないが、いい娘さんじゃ。
翁は遠ざかる若い二人の後姿を微笑ましく眺めた。