51.想い違い
夢主名前設定
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その頃、駆けつけ仕事を終えた斎藤は隊士達と屯所へ戻る途中で、沖田が急いで用事を済ませて先に戻っていた。
「夢主ちゃぁ~~ん……あれ」
沖田は自分の部屋より先に斎藤の部屋を訪ねた。
夢主の姿が無い。不思議に思った沖田は廊下をきょろきょろと覗いた。
「厠かな……」
戻るまで待とうと沖田が部屋で座り込んでいると、斎藤が戻ってきた。
「おい、夢主……っ、沖田君ではないか。夢主はどうした」
「斎藤さんご一緒では無かったんですか、僕も来たばかりですが部屋にいませんでしたよ……」
沖田は不安げに斎藤に伝えて立ち上がり、再び部屋の外に顔を出した。
「ちょっと捜してきます!」
そう言って沖田は屯所内を捜し始め、斎藤も刀を差したまま同じく屯所内を捜し始めた。
「夢主ちゃぁーーん!!」
「夢主、どこだ」
不安げな沖田と苛立ちながら捜す斎藤、どちらも夢主の姿を確認出来なかった。
「いない……そんな」
「まさかまた拐かされたのか」
「僕、壬生寺を見てきます!!」
「あぁ、俺は聞き込みをする」
そう言うと、それぞれ夢主の所在を確かめに向かった。
「どうした、騒がしいな」
二人が去った後、所用に出ていた土方が、俄かに騒がしくなった屯所へ戻ってきた。
「っひ、土方先生!」
目に入った副長の姿。不祥事を告げなければならない平隊士は恐る恐る顔を向けた。
「じ、実は……夢主さんが……いらっしゃらないようで……」
「何だと!!またか!!ったく手のかかる女だな!!誰も見てねぇのか、夢主の姿か怪しい奴をよ!」
土方が怒鳴ると隊士は恐々と続けた。
「じ、実は、島原で遊んでいた隊士が、ひとりで歩いている夢主さんを、み、見かけたそうで……」
「何っ」
「誰かに追われている様子は無かったと……」
「何だと……それじゃぁ自分で出て行ったって事か」
隊士を睨みつけたが、これ以上この者を叱りつけても意味がないと、叱咤の代わりに指示を付け加えた。
「ちっ、戻った隊は悪いがもう一度巡察に出てくれ、俺も出る。半刻捜して見つからなければ一旦帰って来い、いいな」
「はっ!」
指示を受けて伝令に走る隊士の後姿を見ながら、土方は舌打ちをして自らも屯所の外へ走って行った。
「全く夢主のやろう!手間を掛けさせやがる!よりによって島原かよ、何考えてんだあいつは!!」
その頃、夢主は葵屋が見える向かいの路地で、蒼紫に手首を掴まれ動きを制されていた。
絶妙な力加減。我慢出来ないほど痛くは無いが、抵抗出来ない力だ。
「蒼紫や、その娘さんは大丈夫じゃよ、ふぉっふぉっふぉっ……」
「あっ」
かばってくれたのは少ししわがれた声。
声の主を確かめようと振り返ると、普段着姿の葵屋の主、翁が立っていた。
翁を目にした蒼紫は夢主を掴む力を弱めて呟いた。
「翁……」
夢主は手を掴まれた驚きを忘れ、翁を見る蒼紫の横顔に魅入っていた。
……しっ、四乃森蒼紫……蒼紫様……凄く……綺麗な人……
まだ幼い少年の顔立ちながら、大人びた雰囲気を纏っている。
艶やかな黒髪、透き通るような綺麗な肌、斎藤にも似たすらりと鋭く細い目元、凛々しくて美しい眉。
そして若さゆえの真っ直ぐな何かを感じた。
ふと吹く風に、頭の後で結われた短めの髪がさらりと揺れて、夢主の瞳を奪った。
……まだ、御庭番衆の御頭になっていない蒼紫様……何で京都に……
「ふぉっふぉっ、他所の男にそんなに見惚れてしまって、大丈夫かいのぉ、狼達が怒るんではないか」
「えっ、あぁっ、えぇっと!」
翁の言葉で我に返り、顔を赤く染める夢主。蒼紫は冷静な目でそのさまを確かめていた。
先程まで胸元辺りで掴み上げていた夢主の手を、腰の辺りまで下ろしている。警戒を弱めていた。
「狼、ですか」
「左様じゃ、その可愛らしい娘さんは壬生狼のとこの子猫じゃよ、言うなれば我々と同じ側の人間じゃ。ふぉっふぉっ!」
「こっ……」
子猫といわれ更に赤く染まる夢主を、翁は楽しんで笑っている。
その時、葵屋の中から幼い女の子の楽しげな声が聞こえてきた。
「あーーーっ、あーーたま、あーたまぁ!!」
「え……」
「夢主ちゃぁ~~ん……あれ」
沖田は自分の部屋より先に斎藤の部屋を訪ねた。
夢主の姿が無い。不思議に思った沖田は廊下をきょろきょろと覗いた。
「厠かな……」
戻るまで待とうと沖田が部屋で座り込んでいると、斎藤が戻ってきた。
「おい、夢主……っ、沖田君ではないか。夢主はどうした」
「斎藤さんご一緒では無かったんですか、僕も来たばかりですが部屋にいませんでしたよ……」
沖田は不安げに斎藤に伝えて立ち上がり、再び部屋の外に顔を出した。
「ちょっと捜してきます!」
そう言って沖田は屯所内を捜し始め、斎藤も刀を差したまま同じく屯所内を捜し始めた。
「夢主ちゃぁーーん!!」
「夢主、どこだ」
不安げな沖田と苛立ちながら捜す斎藤、どちらも夢主の姿を確認出来なかった。
「いない……そんな」
「まさかまた拐かされたのか」
「僕、壬生寺を見てきます!!」
「あぁ、俺は聞き込みをする」
そう言うと、それぞれ夢主の所在を確かめに向かった。
「どうした、騒がしいな」
二人が去った後、所用に出ていた土方が、俄かに騒がしくなった屯所へ戻ってきた。
「っひ、土方先生!」
目に入った副長の姿。不祥事を告げなければならない平隊士は恐る恐る顔を向けた。
「じ、実は……夢主さんが……いらっしゃらないようで……」
「何だと!!またか!!ったく手のかかる女だな!!誰も見てねぇのか、夢主の姿か怪しい奴をよ!」
土方が怒鳴ると隊士は恐々と続けた。
「じ、実は、島原で遊んでいた隊士が、ひとりで歩いている夢主さんを、み、見かけたそうで……」
「何っ」
「誰かに追われている様子は無かったと……」
「何だと……それじゃぁ自分で出て行ったって事か」
隊士を睨みつけたが、これ以上この者を叱りつけても意味がないと、叱咤の代わりに指示を付け加えた。
「ちっ、戻った隊は悪いがもう一度巡察に出てくれ、俺も出る。半刻捜して見つからなければ一旦帰って来い、いいな」
「はっ!」
指示を受けて伝令に走る隊士の後姿を見ながら、土方は舌打ちをして自らも屯所の外へ走って行った。
「全く夢主のやろう!手間を掛けさせやがる!よりによって島原かよ、何考えてんだあいつは!!」
その頃、夢主は葵屋が見える向かいの路地で、蒼紫に手首を掴まれ動きを制されていた。
絶妙な力加減。我慢出来ないほど痛くは無いが、抵抗出来ない力だ。
「蒼紫や、その娘さんは大丈夫じゃよ、ふぉっふぉっふぉっ……」
「あっ」
かばってくれたのは少ししわがれた声。
声の主を確かめようと振り返ると、普段着姿の葵屋の主、翁が立っていた。
翁を目にした蒼紫は夢主を掴む力を弱めて呟いた。
「翁……」
夢主は手を掴まれた驚きを忘れ、翁を見る蒼紫の横顔に魅入っていた。
……しっ、四乃森蒼紫……蒼紫様……凄く……綺麗な人……
まだ幼い少年の顔立ちながら、大人びた雰囲気を纏っている。
艶やかな黒髪、透き通るような綺麗な肌、斎藤にも似たすらりと鋭く細い目元、凛々しくて美しい眉。
そして若さゆえの真っ直ぐな何かを感じた。
ふと吹く風に、頭の後で結われた短めの髪がさらりと揺れて、夢主の瞳を奪った。
……まだ、御庭番衆の御頭になっていない蒼紫様……何で京都に……
「ふぉっふぉっ、他所の男にそんなに見惚れてしまって、大丈夫かいのぉ、狼達が怒るんではないか」
「えっ、あぁっ、えぇっと!」
翁の言葉で我に返り、顔を赤く染める夢主。蒼紫は冷静な目でそのさまを確かめていた。
先程まで胸元辺りで掴み上げていた夢主の手を、腰の辺りまで下ろしている。警戒を弱めていた。
「狼、ですか」
「左様じゃ、その可愛らしい娘さんは壬生狼のとこの子猫じゃよ、言うなれば我々と同じ側の人間じゃ。ふぉっふぉっ!」
「こっ……」
子猫といわれ更に赤く染まる夢主を、翁は楽しんで笑っている。
その時、葵屋の中から幼い女の子の楽しげな声が聞こえてきた。
「あーーーっ、あーーたま、あーたまぁ!!」
「え……」