51.想い違い
夢主名前設定
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その夜、斎藤はいつも通り巡察へ向かった。
「行って来る」
「はぃ、お気をつけて……」
男達が去っていく音を聞き果て、夢主は取り残された部屋から月を眺めた。
夜風はぬるく、日が沈んでも暑さが残っている。
そんな暑さが届かない清々しい夜空の向こう、美しく光り輝く月に手をかざせば、斎藤の優しい黄金色の瞳を思い出さずにはいられない。
何度も助けてくれた斎藤、酔いつぶれるといつでも抱えて運んでくれた……
何度も頬に触れては揶揄ってきて……
着飾った自分に突然抱きついてきた……
斎藤から与えられた温かい出来事、くすぶる熱を思い出すと、涙が浮かんできてしまった。
夢主は涙を誤魔化して斎藤が出て行ったばかりの部屋を見回した。布団は何日も畳まれたまま、皺すら入っていない。
「今夜はどうなのかな……」
度々朝まで戻らない。
久しぶりに抱いたと話していた女の人、その人の所へ通うようになってしまったのだろう。
夢主は思い悩む気持ちから、一人誤解を抱えていた。
「戻ってくれるかな……今夜は……。斎藤さんのお相手の方……きっと素敵な方なんだろうな…………」
ふたりで月を眺める時、月明かりに照らされた斎藤は妖しくも麗しく、輝き光る瞳と穏やかな面持ちで、いつも優しく向き合ってくれた。
……あの優しさは何だったのかな……今は……あの美しい瞳は、私ではないどこかに……向いているのかな……
「ただの……気まぐれだったのかな。それこそ……戯れ……」
夢主は月を見上げて、知らぬ間に呟いていた。
京の町で過激な不貞浪士と対峙する斎藤達は、生かして身柄を拘束せよと言う指示に手を焼いていた。
殺す気で向かってくる相手を殺さない為に気を使う。とても面倒だった。
「よし、これで全部だな。連れて行け!」
生き残った不貞浪士を縄に掛け、隊士達に連行させた。
不満な顔で刀を納め、斎藤は地面に残った血の跡を足で荒っぽく踏みつけた。
足元から飛ばされた土のかけらが近くの血溜まりに飛び、月明かりを映す光をギラリと揺らした。
「ちっ、全く、斬り伏せれば楽なものを。面倒な仕事になっちまったもんだぜ」
「ははっ、本当に……おかげで鬱憤が溜まってしまいますね」
「あぁ」
斎藤も沖田も斬り捨てるのは少数に、極力生け捕りにしようと土方の指令を守っていた。どれほど凶悪な相手でも極力生け捕る。
おかげで二人とも以前味わっていた即斬の快楽を味わえず、苛立ちを募らせていた。
「斎藤さん、今夜は戻ってあげて下さいよ」
「何故そんな事を君に言われねばならない」
突然の一言に、沖田を睨みつけた。
「そんな事って……夢主ちゃん本当に気にしていますよ、斎藤さんが戻らないから。嫌なんですよ、夢主ちゃんの悲しい顔を見るのは」
「フン」
斎藤の曖昧な返事に沖田も睨み返した。
沖田が甲高い音を立てて納刀すると、斎藤は血溜まりを踏むのも気にせず歩き始めた。
「行って来る」
「はぃ、お気をつけて……」
男達が去っていく音を聞き果て、夢主は取り残された部屋から月を眺めた。
夜風はぬるく、日が沈んでも暑さが残っている。
そんな暑さが届かない清々しい夜空の向こう、美しく光り輝く月に手をかざせば、斎藤の優しい黄金色の瞳を思い出さずにはいられない。
何度も助けてくれた斎藤、酔いつぶれるといつでも抱えて運んでくれた……
何度も頬に触れては揶揄ってきて……
着飾った自分に突然抱きついてきた……
斎藤から与えられた温かい出来事、くすぶる熱を思い出すと、涙が浮かんできてしまった。
夢主は涙を誤魔化して斎藤が出て行ったばかりの部屋を見回した。布団は何日も畳まれたまま、皺すら入っていない。
「今夜はどうなのかな……」
度々朝まで戻らない。
久しぶりに抱いたと話していた女の人、その人の所へ通うようになってしまったのだろう。
夢主は思い悩む気持ちから、一人誤解を抱えていた。
「戻ってくれるかな……今夜は……。斎藤さんのお相手の方……きっと素敵な方なんだろうな…………」
ふたりで月を眺める時、月明かりに照らされた斎藤は妖しくも麗しく、輝き光る瞳と穏やかな面持ちで、いつも優しく向き合ってくれた。
……あの優しさは何だったのかな……今は……あの美しい瞳は、私ではないどこかに……向いているのかな……
「ただの……気まぐれだったのかな。それこそ……戯れ……」
夢主は月を見上げて、知らぬ間に呟いていた。
京の町で過激な不貞浪士と対峙する斎藤達は、生かして身柄を拘束せよと言う指示に手を焼いていた。
殺す気で向かってくる相手を殺さない為に気を使う。とても面倒だった。
「よし、これで全部だな。連れて行け!」
生き残った不貞浪士を縄に掛け、隊士達に連行させた。
不満な顔で刀を納め、斎藤は地面に残った血の跡を足で荒っぽく踏みつけた。
足元から飛ばされた土のかけらが近くの血溜まりに飛び、月明かりを映す光をギラリと揺らした。
「ちっ、全く、斬り伏せれば楽なものを。面倒な仕事になっちまったもんだぜ」
「ははっ、本当に……おかげで鬱憤が溜まってしまいますね」
「あぁ」
斎藤も沖田も斬り捨てるのは少数に、極力生け捕りにしようと土方の指令を守っていた。どれほど凶悪な相手でも極力生け捕る。
おかげで二人とも以前味わっていた即斬の快楽を味わえず、苛立ちを募らせていた。
「斎藤さん、今夜は戻ってあげて下さいよ」
「何故そんな事を君に言われねばならない」
突然の一言に、沖田を睨みつけた。
「そんな事って……夢主ちゃん本当に気にしていますよ、斎藤さんが戻らないから。嫌なんですよ、夢主ちゃんの悲しい顔を見るのは」
「フン」
斎藤の曖昧な返事に沖田も睨み返した。
沖田が甲高い音を立てて納刀すると、斎藤は血溜まりを踏むのも気にせず歩き始めた。