50.褒賞
夢主名前設定
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斎藤が部屋を出て間もなく、小さな摺り足の音が近付いて来た。
「夢主ちゃん、いいですか」
「沖田さん……はい……」
弱々しい声で返事をすると、沖田がいつもの優しげな表情で入ってきた。
「斎藤さん、出かけましたね」
「はぃ……」
「ははっ、そんな悲しい顔しないで下さいよっ、……と言っても、無理かな……」
小さく頷く夢主。沖田も分かっていた。
沖田は持っていた刀を脇に置いて座った。
部屋を訪れる際に刀を持参するなど余り無い。
夢主は疑問に思ったが、たいして気にせず眺めていた。
「まぁ、今日は仕方ありませんよ……皆が皆はしゃいでいますし、市中での捕り物も激しかったですしね……沢山血を浴びるとやっぱりおかしくなっちゃうんですよ」
沖田自身もそうなのか、俯いてやや低い声で語っている。
「斎藤さんもそうだと思いますが、僕は敵と向かい合っていると、とても楽しいんです。相手が強ければ強いほど僕は興奮します。……斬り掛かる時だって、相手が倒れる時だって、ぞくぞくするんです。でも、突然……我に返る時が……あるんですよ」
「沖田さん……」
沖田は微笑を浮かべているものの、下を向いたままぼんやりしている。
「返り血って言うのはね、温かいんです……寸前まで生きて流れていた血ですからね……そのくせにすぐに冷たくなるんです……纏わり付いて固まって……」
小声で呟くように語るが、話さなくて良い話だと我に返り、ハッと顔を上げた。
「……斎藤さんを責めないであげてね……」
以前、斎藤が沖田をかばった事があったが、今宵は沖田が斎藤をかばっている。
夢主は不思議な二人……そう思って沖田を見つめた。
「今夜は僕が付き添います。いいですか」
「えっ……でもっ……」
刀を持ってきたのはその為なのかと、夢主はようやく気が付いた。
「あははっ、安心して下さいよ。僕はそんな気には、なれませんから」
「そんな気……」
もちろん女を欲する気持ちの事だが夢主は確認するように繰り返した。
「こんな雰囲気の時に皆と花街に行っても全然楽しくないんですよ。だから今日は僕は屯所に残るつもりです」
「そうなんですか……」
「こんなざわついた日に一人で残るのも怖いでしょ。皆落ち着かなくて……どこか……」
皆が揃って昂ぶっている。
沖田の言う通りだ。一人取り残されるのが、とても怖かった。
「だから、僕が付き添いますよ。大丈夫」
にこにこと温かい微笑みで言う沖田は、本当にそう言った昂ぶりは抱えていないらしい。
「沖田さんはどうして……落ち着いてるんですか……」
「さぁ……どうしてかなぁ。僕にも分かりませんけどっ、ははっ。でもおかげで夢主ちゃんの事、今夜は僕が守ってあげられますから。それだけで僕は幸せです」
首を傾げて夢主を見る沖田。
素直な気持ちを打ち明けて笑っている。
「夢主ちゃんと一緒にいるとね、凄く気持ちが落ち着くんですよ……皆は高まった気持ちをとことん高めてしまいたいみたいですけど、僕は静かに落ち着かせるのが好きなんです」
沖田は目を閉じて、楽しそうにそっと揺れて見せた。
そして二、三度ゆらゆらした後に目を開いて微笑んだ。
「だから、今夜は……一緒にいてもいいですか」
いざという時はいつも頼もしい顔を見せるが、時々幼子のような顔を見せる時がある。
今、夢主を見つめる沖田もそんな縋るような幼い瞳を見せていた。
沖田も一人でいるのが不安なのかもしれない。
「……分かりました……あの、お願いします」
「ふふっ、良かったっ」
「沖田さん……」
「ん?」
「ありがとうございます」
「こちらこそ」
二人はにこりと優しく微笑み合った。
「夢主ちゃん、いいですか」
「沖田さん……はい……」
弱々しい声で返事をすると、沖田がいつもの優しげな表情で入ってきた。
「斎藤さん、出かけましたね」
「はぃ……」
「ははっ、そんな悲しい顔しないで下さいよっ、……と言っても、無理かな……」
小さく頷く夢主。沖田も分かっていた。
沖田は持っていた刀を脇に置いて座った。
部屋を訪れる際に刀を持参するなど余り無い。
夢主は疑問に思ったが、たいして気にせず眺めていた。
「まぁ、今日は仕方ありませんよ……皆が皆はしゃいでいますし、市中での捕り物も激しかったですしね……沢山血を浴びるとやっぱりおかしくなっちゃうんですよ」
沖田自身もそうなのか、俯いてやや低い声で語っている。
「斎藤さんもそうだと思いますが、僕は敵と向かい合っていると、とても楽しいんです。相手が強ければ強いほど僕は興奮します。……斬り掛かる時だって、相手が倒れる時だって、ぞくぞくするんです。でも、突然……我に返る時が……あるんですよ」
「沖田さん……」
沖田は微笑を浮かべているものの、下を向いたままぼんやりしている。
「返り血って言うのはね、温かいんです……寸前まで生きて流れていた血ですからね……そのくせにすぐに冷たくなるんです……纏わり付いて固まって……」
小声で呟くように語るが、話さなくて良い話だと我に返り、ハッと顔を上げた。
「……斎藤さんを責めないであげてね……」
以前、斎藤が沖田をかばった事があったが、今宵は沖田が斎藤をかばっている。
夢主は不思議な二人……そう思って沖田を見つめた。
「今夜は僕が付き添います。いいですか」
「えっ……でもっ……」
刀を持ってきたのはその為なのかと、夢主はようやく気が付いた。
「あははっ、安心して下さいよ。僕はそんな気には、なれませんから」
「そんな気……」
もちろん女を欲する気持ちの事だが夢主は確認するように繰り返した。
「こんな雰囲気の時に皆と花街に行っても全然楽しくないんですよ。だから今日は僕は屯所に残るつもりです」
「そうなんですか……」
「こんなざわついた日に一人で残るのも怖いでしょ。皆落ち着かなくて……どこか……」
皆が揃って昂ぶっている。
沖田の言う通りだ。一人取り残されるのが、とても怖かった。
「だから、僕が付き添いますよ。大丈夫」
にこにこと温かい微笑みで言う沖田は、本当にそう言った昂ぶりは抱えていないらしい。
「沖田さんはどうして……落ち着いてるんですか……」
「さぁ……どうしてかなぁ。僕にも分かりませんけどっ、ははっ。でもおかげで夢主ちゃんの事、今夜は僕が守ってあげられますから。それだけで僕は幸せです」
首を傾げて夢主を見る沖田。
素直な気持ちを打ち明けて笑っている。
「夢主ちゃんと一緒にいるとね、凄く気持ちが落ち着くんですよ……皆は高まった気持ちをとことん高めてしまいたいみたいですけど、僕は静かに落ち着かせるのが好きなんです」
沖田は目を閉じて、楽しそうにそっと揺れて見せた。
そして二、三度ゆらゆらした後に目を開いて微笑んだ。
「だから、今夜は……一緒にいてもいいですか」
いざという時はいつも頼もしい顔を見せるが、時々幼子のような顔を見せる時がある。
今、夢主を見つめる沖田もそんな縋るような幼い瞳を見せていた。
沖田も一人でいるのが不安なのかもしれない。
「……分かりました……あの、お願いします」
「ふふっ、良かったっ」
「沖田さん……」
「ん?」
「ありがとうございます」
「こちらこそ」
二人はにこりと優しく微笑み合った。