48.花吹雪
夢主名前設定
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「斎藤さん……」
夢主が回るのを止めると、着物の袖もふわりと舞うのを止めた。
「どうした」
優しい声で数歩近づく斎藤。
「斎藤さんも回ってくださいっ」
そう言って斎藤の手を取ろうとするが、周りの隊士の目に気付き、その手を止めて自分の体の前に戻した。
斎藤を見上げて手を伸ばす代わりに夢主は首を傾げた。
「ねぇ……」
「阿呆ぅ、俺に出来るか。隊士の前だぞ」
「ふふっ、やっぱり駄目ですか」
誘いの言葉を繰り返す前に断られてしまったが、はにかむ斎藤に夢主は満足していた。
断られるとは思ったが、誰もいなければ手を取って無理矢理一緒に回っていたかもしれない。そんな大胆なことが出来そうな穏やかさがあった。
「当たり前だ」
手を取られないように、腕組みをした斎藤。
夢主は気にせず桜の木を見上げた。
「そういえば、お花見しようって沖田さんが言ってたの、約束守ってあげられなかったな……」
夢主は散り行く桜を眺めて呟いた。
次の非番が回ってくる頃には桜はすっかり散っているだろう。
斎藤とは桜を見て楽しみ、花を持ち帰り酒も嗜んだ。
そしてこんなに見事な散り際にまた一緒に来られたのだ。
「そうだな。沖田君はさっき出て行ったがどこへ向かったのか」
斎藤にも心当たりは無い。例の名主の元へでも行っているのか。
話す斎藤の顔を見た夢主、その瞬間に突風が吹きつけた。
「きゃぁ……」
夢主は咄嗟に顔をかばい、着物の袖を寄せた。
強い風に揺すられた桜の木から沢山の花びらが乱れ散って行くのが見え、目を開く。
「すごぃ……素敵……わっ!」
続けざまに吹き付ける風に身を屈め、思わず斎藤の姿を確認した。
微動だにせず立つ斎藤、無数の桜で辺りが埋め尽くされるような感覚がした。
周囲が花びらで目隠しされ、その瞬間、景色も他の隊士達も見えなくなった。
花吹雪の中、ただ斎藤だけが立っていた。
「綺麗……です……」
突然の春疾風に髪が乱れるのも忘れて斎藤を見つめてしまう。
強い風が何度も繰り返され、斎藤は顔色を変えぬまま夢主に近寄った。
かばうように両手を夢主に回し、自らの着物の袖で小さな体を覆って体を寄せた。
手が頭に触れている。夢主は完全に斎藤の腕の中にいた。
「すぐに静まるだろう」
「はぃ……」
夢主は目の前に感じる存在に顔を赤らめて俯いていた。
斎藤のおかげで体に当たる風が弱まっている。
優しく守られている、その事実に温もりを感じ、夢主の胸は高鳴った。
短い時間がとても長く感じられる。風の音さえも小さく聞こえた。
やがて風が弱まると、斎藤の体が僅かに離れた。
緊張の中で感じた幸せな一時。夢主は頬を染めてそっと顔を上げた。
「大丈夫か」
「は……はぃ」
落ち着いた声で気遣う斎藤。
夢主の白い顔が桜よりも色付いていると気付き、斎藤の口元が自然と緩んだ。
「凄い風だったな」
「はぃ……斎藤さんの周りが桜色でした……」
「そうか。お前の周りもそうだったぞ」
同じ景色が見えていた二人。
クスクスと笑う夢主に合わせ、斎藤もクッと喉を鳴らした。
夢主が回るのを止めると、着物の袖もふわりと舞うのを止めた。
「どうした」
優しい声で数歩近づく斎藤。
「斎藤さんも回ってくださいっ」
そう言って斎藤の手を取ろうとするが、周りの隊士の目に気付き、その手を止めて自分の体の前に戻した。
斎藤を見上げて手を伸ばす代わりに夢主は首を傾げた。
「ねぇ……」
「阿呆ぅ、俺に出来るか。隊士の前だぞ」
「ふふっ、やっぱり駄目ですか」
誘いの言葉を繰り返す前に断られてしまったが、はにかむ斎藤に夢主は満足していた。
断られるとは思ったが、誰もいなければ手を取って無理矢理一緒に回っていたかもしれない。そんな大胆なことが出来そうな穏やかさがあった。
「当たり前だ」
手を取られないように、腕組みをした斎藤。
夢主は気にせず桜の木を見上げた。
「そういえば、お花見しようって沖田さんが言ってたの、約束守ってあげられなかったな……」
夢主は散り行く桜を眺めて呟いた。
次の非番が回ってくる頃には桜はすっかり散っているだろう。
斎藤とは桜を見て楽しみ、花を持ち帰り酒も嗜んだ。
そしてこんなに見事な散り際にまた一緒に来られたのだ。
「そうだな。沖田君はさっき出て行ったがどこへ向かったのか」
斎藤にも心当たりは無い。例の名主の元へでも行っているのか。
話す斎藤の顔を見た夢主、その瞬間に突風が吹きつけた。
「きゃぁ……」
夢主は咄嗟に顔をかばい、着物の袖を寄せた。
強い風に揺すられた桜の木から沢山の花びらが乱れ散って行くのが見え、目を開く。
「すごぃ……素敵……わっ!」
続けざまに吹き付ける風に身を屈め、思わず斎藤の姿を確認した。
微動だにせず立つ斎藤、無数の桜で辺りが埋め尽くされるような感覚がした。
周囲が花びらで目隠しされ、その瞬間、景色も他の隊士達も見えなくなった。
花吹雪の中、ただ斎藤だけが立っていた。
「綺麗……です……」
突然の春疾風に髪が乱れるのも忘れて斎藤を見つめてしまう。
強い風が何度も繰り返され、斎藤は顔色を変えぬまま夢主に近寄った。
かばうように両手を夢主に回し、自らの着物の袖で小さな体を覆って体を寄せた。
手が頭に触れている。夢主は完全に斎藤の腕の中にいた。
「すぐに静まるだろう」
「はぃ……」
夢主は目の前に感じる存在に顔を赤らめて俯いていた。
斎藤のおかげで体に当たる風が弱まっている。
優しく守られている、その事実に温もりを感じ、夢主の胸は高鳴った。
短い時間がとても長く感じられる。風の音さえも小さく聞こえた。
やがて風が弱まると、斎藤の体が僅かに離れた。
緊張の中で感じた幸せな一時。夢主は頬を染めてそっと顔を上げた。
「大丈夫か」
「は……はぃ」
落ち着いた声で気遣う斎藤。
夢主の白い顔が桜よりも色付いていると気付き、斎藤の口元が自然と緩んだ。
「凄い風だったな」
「はぃ……斎藤さんの周りが桜色でした……」
「そうか。お前の周りもそうだったぞ」
同じ景色が見えていた二人。
クスクスと笑う夢主に合わせ、斎藤もクッと喉を鳴らした。