48.花吹雪
夢主名前設定
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零れ桜の時は過ぎ、夢主と斎藤が約束をした花散る時がやって来た。
時折吹く風に舞い散る花びらが、ひらひらと屯所の中をも染め始める。
「こんな所まで飛んでくるなんて……ふふっ」
「待たせたな」
夢主が仕度を済ませて部屋の前で景色を眺めていると、後ろから声が掛った。斎藤だ。
着流しでも凛々しく見えるその姿に夢主の心は高鳴った。
「行くぞ」
「はぃっ」
待ち侘びたこの日。
夢主の心は弾んでいた。
先日はつい飛び出してしまっただが、やはり一人で外に出るより斎藤と共が良い。一緒に歩くと気持ちが落ち着く。見慣れた大きな背中に続く事がどれほど心強いかを夢主は思い知った。
外に出ると風に乗り飛んでくる花びらが、ひらり、ひらりと、二人の前を落ちてゆく。
「わぁ……」
夢主は頬を緩ませ、花びらの下へ駆け出した。
嬉んで花びらを追いかけて斎藤を振り返り、ふわりと微笑む。
「ふふっ……」
「フッ。好きにして構わんぞ」
そう伝え、斎藤も笑みを漏らした。幸せそうな夢主を見守りながら後ろを行く。
後ろを斎藤が歩く事など初めてだ。
石畳もそのうちに覆い隠されてしまうのか、止めどなく桜は舞い落ちてくる。
「わぁ……綺麗……」
壬生寺に入ると、夢主達と同じように桜を楽しむ隊士達が幾人かおり、それぞれに歓談していた。
閑やかな空気の中、斎藤に気付き会釈をする隊士達もいつもより柔らかい面持ちだ。
普段は斎藤の姿を見ただけで背筋を伸ばし固まる隊士もいる中、今日は暖かく心地よい空気に皆の気持ちが安らいでいる。
隊士達から見た斎藤も恐らく普段より和らいだ顔をしているだろう。
夢主が隊士達に小さく頭を下げて進む後ろを斎藤はゆっくりと歩いていた。
夢主は一番大きな桜の木の下で立ち止まり、両手を広げて見上げた。
「斎藤さん……素敵です……」
さわさわと優しく吹く風に乗り、ひらひらと舞い続ける桜の花びら。
広げた両手を上に伸ばし、無数の花びらを浴びるように迎えた。
「ふふっ……」
くるくると童のように回って桜と舞う夢主。周りの隊士達も自然と視線を向けた。
動きにつられて着物の袖がふわりと膨らみ、回るほどに周りの桜をより舞わせる。
隠れ里の巫女と偽った身の上が本当の事に思える清らかな美しさで、時が止まって感じるほどに男達の心を魅了した。
……なんと尊いのだろう……
眺める隊士達は夢主の姿を目に焼き付けながらそう感じていた。
そばで見守る斎藤は、夢主の周りの世界の全てをまさに守っているようだった。
時折吹く風に舞い散る花びらが、ひらひらと屯所の中をも染め始める。
「こんな所まで飛んでくるなんて……ふふっ」
「待たせたな」
夢主が仕度を済ませて部屋の前で景色を眺めていると、後ろから声が掛った。斎藤だ。
着流しでも凛々しく見えるその姿に夢主の心は高鳴った。
「行くぞ」
「はぃっ」
待ち侘びたこの日。
夢主の心は弾んでいた。
先日はつい飛び出してしまっただが、やはり一人で外に出るより斎藤と共が良い。一緒に歩くと気持ちが落ち着く。見慣れた大きな背中に続く事がどれほど心強いかを夢主は思い知った。
外に出ると風に乗り飛んでくる花びらが、ひらり、ひらりと、二人の前を落ちてゆく。
「わぁ……」
夢主は頬を緩ませ、花びらの下へ駆け出した。
嬉んで花びらを追いかけて斎藤を振り返り、ふわりと微笑む。
「ふふっ……」
「フッ。好きにして構わんぞ」
そう伝え、斎藤も笑みを漏らした。幸せそうな夢主を見守りながら後ろを行く。
後ろを斎藤が歩く事など初めてだ。
石畳もそのうちに覆い隠されてしまうのか、止めどなく桜は舞い落ちてくる。
「わぁ……綺麗……」
壬生寺に入ると、夢主達と同じように桜を楽しむ隊士達が幾人かおり、それぞれに歓談していた。
閑やかな空気の中、斎藤に気付き会釈をする隊士達もいつもより柔らかい面持ちだ。
普段は斎藤の姿を見ただけで背筋を伸ばし固まる隊士もいる中、今日は暖かく心地よい空気に皆の気持ちが安らいでいる。
隊士達から見た斎藤も恐らく普段より和らいだ顔をしているだろう。
夢主が隊士達に小さく頭を下げて進む後ろを斎藤はゆっくりと歩いていた。
夢主は一番大きな桜の木の下で立ち止まり、両手を広げて見上げた。
「斎藤さん……素敵です……」
さわさわと優しく吹く風に乗り、ひらひらと舞い続ける桜の花びら。
広げた両手を上に伸ばし、無数の花びらを浴びるように迎えた。
「ふふっ……」
くるくると童のように回って桜と舞う夢主。周りの隊士達も自然と視線を向けた。
動きにつられて着物の袖がふわりと膨らみ、回るほどに周りの桜をより舞わせる。
隠れ里の巫女と偽った身の上が本当の事に思える清らかな美しさで、時が止まって感じるほどに男達の心を魅了した。
……なんと尊いのだろう……
眺める隊士達は夢主の姿を目に焼き付けながらそう感じていた。
そばで見守る斎藤は、夢主の周りの世界の全てをまさに守っているようだった。