46.お花見
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「いぇ……でも……」
戸惑いがちに夢主は座った。
斎藤は盆を置き、早々に酒を注いだ。
いつもより大きい猪口だ。
二人それぞれに用意された酒が並々と注がれた。
斎藤はその二つを並べ、夢主に預けた椀から桜の花を取り出して、猪口の中に浮かべる。
花が入った衝撃で小さな波紋が広がった。
「わぁ……可愛ぃ……」
斎藤の粋な計らいに夢主の戸惑いと緊張は消えていった。
その変化に斎藤も心地良いものを感じた。
「この前は斎藤さん、途中で私のこと止めてましたけど……いいんですか」
また途中で酒を止められるのは少し不満だ。
斎藤が困るのも望まないが、自分も存分に楽しんでみたい。
「構わんさ。一度様子を見ているからな。二度目なら大丈夫だ」
言い切る斎藤はとても落ち着いている。
本当に大丈夫みたい……
夢主は頷くと猪口を手に取った。
「斎藤さん、ありがとうございます。とっても嬉しいです……」
「フフッ、たまにはいいな」
二人で外を歩く事も、こうして二人向かい合い酒を嗜む事も、たまにはいい。
斎藤は心の底から強く思った。
「……乾杯」
照れて夢主は乾杯と言い、斎藤に向かって両手で猪口を軽く掲げた。
斎藤も僅かに猪口を持ち上げて応え、そっと酒を含んだ。
「美味い」
「はぃ……美味しいです……」
「お前は花が好きか」
「お花……はぃ……好きですよ。詳しくはありませんが……」
「そうか。梅もそうだったが、桜を眺めるお前が余りに楽しそうだったのでな」
「ふふっ、桜とっても綺麗でした」
恥ずかしそうに笑いながら二口目の酒を含んだ。
「それに初めてお前を目にした時も、花があしらわれた物を着ていたな。確か青い小花だった」
確か、と言ったが斎藤は一度しか見ていないあの服をはっきりと覚えていた。
目の前で下ろされた背中の奇妙な金具、するりと床に落ちた見慣れぬ衣服。
最後は脱力した夢主に苦労しながら着せてやったのだ。
不思議な形の不思議な触り心地の美しい衣服。忘れようがなかった。
「ぁ……あの……服ですね……」
考えるように夢主の言葉が止まり、斎藤はその服を着て受けた仕打ちを思い出したのかと顔を曇らせた。
だが、ばつの悪い思いで失言を認めようとした時、夢主はふふっと笑って顔を上げた。
「はぃ、おきにいりの、服なんですよっ」
あの日以来その服は折り畳まれ、白い布に包まれている。普段は触れぬよう、誰の目にも留まらぬように夢主の手元にしまわれていた。
自分が生きていた世界の証のような気がして大切にしている。
にこりと答える姿に、もう心のわだかまりは無いのかと、斎藤はほっと息を吐いた。
「また、あの服、きたいなぁ……」
「っ……そうか。似合っていたな」
自分の呟きに斎藤が一瞬戸惑いを見せた気がしたが、夢主が顔を上げるといつもの平静を保った顔が見えた。
戸惑いがちに夢主は座った。
斎藤は盆を置き、早々に酒を注いだ。
いつもより大きい猪口だ。
二人それぞれに用意された酒が並々と注がれた。
斎藤はその二つを並べ、夢主に預けた椀から桜の花を取り出して、猪口の中に浮かべる。
花が入った衝撃で小さな波紋が広がった。
「わぁ……可愛ぃ……」
斎藤の粋な計らいに夢主の戸惑いと緊張は消えていった。
その変化に斎藤も心地良いものを感じた。
「この前は斎藤さん、途中で私のこと止めてましたけど……いいんですか」
また途中で酒を止められるのは少し不満だ。
斎藤が困るのも望まないが、自分も存分に楽しんでみたい。
「構わんさ。一度様子を見ているからな。二度目なら大丈夫だ」
言い切る斎藤はとても落ち着いている。
本当に大丈夫みたい……
夢主は頷くと猪口を手に取った。
「斎藤さん、ありがとうございます。とっても嬉しいです……」
「フフッ、たまにはいいな」
二人で外を歩く事も、こうして二人向かい合い酒を嗜む事も、たまにはいい。
斎藤は心の底から強く思った。
「……乾杯」
照れて夢主は乾杯と言い、斎藤に向かって両手で猪口を軽く掲げた。
斎藤も僅かに猪口を持ち上げて応え、そっと酒を含んだ。
「美味い」
「はぃ……美味しいです……」
「お前は花が好きか」
「お花……はぃ……好きですよ。詳しくはありませんが……」
「そうか。梅もそうだったが、桜を眺めるお前が余りに楽しそうだったのでな」
「ふふっ、桜とっても綺麗でした」
恥ずかしそうに笑いながら二口目の酒を含んだ。
「それに初めてお前を目にした時も、花があしらわれた物を着ていたな。確か青い小花だった」
確か、と言ったが斎藤は一度しか見ていないあの服をはっきりと覚えていた。
目の前で下ろされた背中の奇妙な金具、するりと床に落ちた見慣れぬ衣服。
最後は脱力した夢主に苦労しながら着せてやったのだ。
不思議な形の不思議な触り心地の美しい衣服。忘れようがなかった。
「ぁ……あの……服ですね……」
考えるように夢主の言葉が止まり、斎藤はその服を着て受けた仕打ちを思い出したのかと顔を曇らせた。
だが、ばつの悪い思いで失言を認めようとした時、夢主はふふっと笑って顔を上げた。
「はぃ、おきにいりの、服なんですよっ」
あの日以来その服は折り畳まれ、白い布に包まれている。普段は触れぬよう、誰の目にも留まらぬように夢主の手元にしまわれていた。
自分が生きていた世界の証のような気がして大切にしている。
にこりと答える姿に、もう心のわだかまりは無いのかと、斎藤はほっと息を吐いた。
「また、あの服、きたいなぁ……」
「っ……そうか。似合っていたな」
自分の呟きに斎藤が一瞬戸惑いを見せた気がしたが、夢主が顔を上げるといつもの平静を保った顔が見えた。