46.お花見
夢主名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
暫くの間、落ち着いた温かい時間が過ぎた。
斎藤ものんびり夢主とその周りの景色を楽しんで見える。
しかし前触れもなく、冷たい風が吹き始めた。
突然吹いた冷風に夢主は肩を縮めて震えた。
「寒くなってきましたね……」
「花でも拾って帰るか」
花びらで散る桜、散るにはまだ早い季節。風の悪戯か鳥の啄みか、花のまま落ちた桜がある。
斎藤はおもむろに屈み、まだ少ない落花の中から、花弁が揃い汚れのない綺麗なものを選んで二つ拾い上げた。
「風邪を引く前に行くぞ」
「はぃ」
夢主の返事を確認すると、斎藤は歩き出した。
大きな手の中に二つ、守られるようにして桜の花が揺れている。
斎藤の後ろをついて歩く夢主の頬はずっと緩んだまま、にこやかな面持ちで壬生寺を後にした。
屯所に着くと、部屋に戻る前に斎藤は寄り道をした。
勝手元で小さな椀に水を張り、拾った桜の花を浮かべたのだ。
「これを持って先に戻っていろ」
そう言って差し出された椀を夢主は両手で受け取った。
水の上に並んで浮かぶ桜を眺める夢主、ほのかに鼻の頭が赤い。冷たい風で少し冷えてしまった。
「すぐ戻るから、暖かくしていろ」
赤い鼻をクッと小さく笑うと斎藤はまた外へ出て行った。
体が冷えた夢主は椀を抱えて風が吹き込まない暖かい部屋へ急いだ。
部屋に入って椀を置き、斎藤から貰った藍色の半纏を羽織るとやっと落ち着いた気がして、ふぅっと小さく息を吐き、その場に座り込んだ。
運んできた桜の花が揺れていた。
「斎藤さんどこに行ったのかな……」
すぐ戻ると言ったが、どこへ出向いたのか全く見当もつかない。
夢主は何をするでもなく、花を眺めてのんびりと斎藤を待っていた。
四半刻ほど経った頃、ようやく戻ってくる音が聞こえた。
斎藤らしき影が障子戸の前で立ち止まり、どうしたのかと腰を上げかけた時、声がした。
「おい、開けろ」
「はぃっ」
手が塞がっているのか、斎藤に言われた通り障子を開けた。
「おかえりなさ……っ、あぁっ……」
「待たせたな」
ニヤリ、口元を歪めた斎藤が手にしていたのは酒の用意だった。
「お、お水……ですか?」
斎藤が部屋に入ると夢主はそっと障子を閉めて、盆に首を伸ばした。
以前、斎藤が共に月見を楽しめるように酒の変わりに水を用意してくれた。あの夜の再現だろうか。
鼻を擽る酒の香りを感じ、夢主は顔を離した。
「いや、俺のとお前の酒だ。お前の酒、前に沖田君と探したからな。今回は早かったぜ」
「えっ、お酒なんですか……」
「嫌か」
斎藤はふっと穏やかな笑みを見せて言うと、すぐにいつもの悪ぶった笑みに戻った。
斎藤ものんびり夢主とその周りの景色を楽しんで見える。
しかし前触れもなく、冷たい風が吹き始めた。
突然吹いた冷風に夢主は肩を縮めて震えた。
「寒くなってきましたね……」
「花でも拾って帰るか」
花びらで散る桜、散るにはまだ早い季節。風の悪戯か鳥の啄みか、花のまま落ちた桜がある。
斎藤はおもむろに屈み、まだ少ない落花の中から、花弁が揃い汚れのない綺麗なものを選んで二つ拾い上げた。
「風邪を引く前に行くぞ」
「はぃ」
夢主の返事を確認すると、斎藤は歩き出した。
大きな手の中に二つ、守られるようにして桜の花が揺れている。
斎藤の後ろをついて歩く夢主の頬はずっと緩んだまま、にこやかな面持ちで壬生寺を後にした。
屯所に着くと、部屋に戻る前に斎藤は寄り道をした。
勝手元で小さな椀に水を張り、拾った桜の花を浮かべたのだ。
「これを持って先に戻っていろ」
そう言って差し出された椀を夢主は両手で受け取った。
水の上に並んで浮かぶ桜を眺める夢主、ほのかに鼻の頭が赤い。冷たい風で少し冷えてしまった。
「すぐ戻るから、暖かくしていろ」
赤い鼻をクッと小さく笑うと斎藤はまた外へ出て行った。
体が冷えた夢主は椀を抱えて風が吹き込まない暖かい部屋へ急いだ。
部屋に入って椀を置き、斎藤から貰った藍色の半纏を羽織るとやっと落ち着いた気がして、ふぅっと小さく息を吐き、その場に座り込んだ。
運んできた桜の花が揺れていた。
「斎藤さんどこに行ったのかな……」
すぐ戻ると言ったが、どこへ出向いたのか全く見当もつかない。
夢主は何をするでもなく、花を眺めてのんびりと斎藤を待っていた。
四半刻ほど経った頃、ようやく戻ってくる音が聞こえた。
斎藤らしき影が障子戸の前で立ち止まり、どうしたのかと腰を上げかけた時、声がした。
「おい、開けろ」
「はぃっ」
手が塞がっているのか、斎藤に言われた通り障子を開けた。
「おかえりなさ……っ、あぁっ……」
「待たせたな」
ニヤリ、口元を歪めた斎藤が手にしていたのは酒の用意だった。
「お、お水……ですか?」
斎藤が部屋に入ると夢主はそっと障子を閉めて、盆に首を伸ばした。
以前、斎藤が共に月見を楽しめるように酒の変わりに水を用意してくれた。あの夜の再現だろうか。
鼻を擽る酒の香りを感じ、夢主は顔を離した。
「いや、俺のとお前の酒だ。お前の酒、前に沖田君と探したからな。今回は早かったぜ」
「えっ、お酒なんですか……」
「嫌か」
斎藤はふっと穏やかな笑みを見せて言うと、すぐにいつもの悪ぶった笑みに戻った。