45.眠れない刺激
夢主名前設定
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心の奥の満たされないもの……もしかしたら両親は忙しく働いていたのかもしれない。
下に弟妹がいて、甘えたい気持ちを自ら抑えていたのかもしれない。
そんな分からない自分の幼少期を想像して、赤く染まり目には涙の溜めた顔から、ふっと笑みが溢れた。
「淋しがり屋で甘えん坊とは、手の掛かる女だな」
「す、すみませんっ……」
そう言いながら顔を上げてみると、斎藤は至って満足そうな顔で夢主を見つめていた。
「俺は構わんがな」
「っ……はぃ……」
斎藤の言葉で堪えていた涙が溢れてしまった。
下を向いて隠すように幾筋かの涙の痕を拭き取った。
「やれやれ、言ったそばから手の掛かる」
「すみませっ……」
斎藤はおもむろに夢主に何かを差し出した。斎藤の手拭いだ。
「ほらよ」
「すみません……ありがとぉ……ございま……」
俯いたまま斎藤の手から手拭いを受け取った。
顔を隠して涙を拭くが何度も涙が零れ、なかなか顔が上げられない。
「フッ、それから、お前は泣き虫だな」
「……っはい……ふふっ……」
涙を拭いながら赤い顔で笑って、素直に頷いた。
「さぁ、話はこれまでだ。おい、涙を拭き終えたら手を貸せ」
「は、はぃっ……手ですか……」
夢主が涙を拭き取る間に、斎藤が薬を取り出してきた。
「あぁっ……」
「今日も塗ってやる」
「で、でも……」
「いいから」
昨夜の事を思い出して躊躇したが、素直に手拭いを置いて手を差し出した。
今夜も眠れなくなったらどうしよう、今日は斎藤さんずっと一緒なのに……
そんな思いが頭の中を渦巻いた。
薬を塗り始めた斎藤だが、夢主は昨夜と少し違う感覚を覚えた。
不思議そうに見ている夢主に斎藤が訊いた。
「どうした」
「あの……昨日となんだか……違います……」
今日は優しく夢主の手を覆うようにそっと、斎藤の手の熱で薬を広げて塗っている。
「フッ、昨日みたいなのがいいか」
「い、いえっ!今日のがいいですっ……」
「そうか」
「き、昨日のは……わざとだったんですか……」
「あぁ、少し悪戯が過ぎたな、すまん」
夢主が恨めしそうな顔で覗き込むと、斎藤は楽しそうにククッと喉を鳴らして笑った。
「だが、気持ち良かったろう」
斎藤は少し意地悪な目つきでニッと笑った。
「きょ、今日みたいな優しい塗り方が好きですっ!」
「そうか、残念だな」
なかなか良い感度をしていると思ったんだがな、斎藤は心の中で呟いて笑った。
「昨日はおかげさまで寝付けなかったんですよ……変なのはもうやめて下さい……」
「そうか。やはり起きていたんだな」
斎藤はフッと目を細めて呟いた。
その細くなった斎藤の目から逃げるように目を逸らすと、斜めに俯いて夢主は本音を話した。
「はぃ……。正直、怖かったんです……起きてちゃいけないと思って……斎藤さんを、見ちゃいけないのかなって……」
「そうか。まぁ、それで正しいだろうな。もし俺が戻った時に目が覚めていても、昨夜のように寝た振りをしていろ」
顔を上げると斎藤に真っ直ぐ見据えられており、夢主は小さく頷いた。
「夜の巡察は激しいからな。時に昂ぶる事もある。昨日はそんな気分では無かったがな。まぁ寝ていれば俺は何もしない」
斎藤の言葉を聞きながら心臓の音が大きくなっていくのを感じた。
もし起きていたらどうなるのか、怖くて訊けなかった。
「そんな顔をするな。俺はな、お前を傷付けたくはないんだ」
夢主の恐れを見抜いたのか、静かな声だった。
薬を塗り終えると、斎藤はふっと口角を上げた。
微笑まれて、夢主は体が固まってしまう。力強くて優しい微笑だった。
「あっ、ありがとうございます……。ぁのっ……斎藤さんっ……」
「なんだ」
自分を見つめて言葉を待つ斎藤の姿に、夢主は体の中で高まる熱を感じた。心地よい温かさだ。
「私……今、幸せです」
「……そうか」
穏やかに告げると、斎藤も柔らかい表情で一言応えた。
それで充分だと、心満ち足りた顔付きだった。
「ふふっ」
夢主は潤った手を擦り、斎藤に微笑み返した。
この晩は、とても心地よい眠りに付く事が出来た。
下に弟妹がいて、甘えたい気持ちを自ら抑えていたのかもしれない。
そんな分からない自分の幼少期を想像して、赤く染まり目には涙の溜めた顔から、ふっと笑みが溢れた。
「淋しがり屋で甘えん坊とは、手の掛かる女だな」
「す、すみませんっ……」
そう言いながら顔を上げてみると、斎藤は至って満足そうな顔で夢主を見つめていた。
「俺は構わんがな」
「っ……はぃ……」
斎藤の言葉で堪えていた涙が溢れてしまった。
下を向いて隠すように幾筋かの涙の痕を拭き取った。
「やれやれ、言ったそばから手の掛かる」
「すみませっ……」
斎藤はおもむろに夢主に何かを差し出した。斎藤の手拭いだ。
「ほらよ」
「すみません……ありがとぉ……ございま……」
俯いたまま斎藤の手から手拭いを受け取った。
顔を隠して涙を拭くが何度も涙が零れ、なかなか顔が上げられない。
「フッ、それから、お前は泣き虫だな」
「……っはい……ふふっ……」
涙を拭いながら赤い顔で笑って、素直に頷いた。
「さぁ、話はこれまでだ。おい、涙を拭き終えたら手を貸せ」
「は、はぃっ……手ですか……」
夢主が涙を拭き取る間に、斎藤が薬を取り出してきた。
「あぁっ……」
「今日も塗ってやる」
「で、でも……」
「いいから」
昨夜の事を思い出して躊躇したが、素直に手拭いを置いて手を差し出した。
今夜も眠れなくなったらどうしよう、今日は斎藤さんずっと一緒なのに……
そんな思いが頭の中を渦巻いた。
薬を塗り始めた斎藤だが、夢主は昨夜と少し違う感覚を覚えた。
不思議そうに見ている夢主に斎藤が訊いた。
「どうした」
「あの……昨日となんだか……違います……」
今日は優しく夢主の手を覆うようにそっと、斎藤の手の熱で薬を広げて塗っている。
「フッ、昨日みたいなのがいいか」
「い、いえっ!今日のがいいですっ……」
「そうか」
「き、昨日のは……わざとだったんですか……」
「あぁ、少し悪戯が過ぎたな、すまん」
夢主が恨めしそうな顔で覗き込むと、斎藤は楽しそうにククッと喉を鳴らして笑った。
「だが、気持ち良かったろう」
斎藤は少し意地悪な目つきでニッと笑った。
「きょ、今日みたいな優しい塗り方が好きですっ!」
「そうか、残念だな」
なかなか良い感度をしていると思ったんだがな、斎藤は心の中で呟いて笑った。
「昨日はおかげさまで寝付けなかったんですよ……変なのはもうやめて下さい……」
「そうか。やはり起きていたんだな」
斎藤はフッと目を細めて呟いた。
その細くなった斎藤の目から逃げるように目を逸らすと、斜めに俯いて夢主は本音を話した。
「はぃ……。正直、怖かったんです……起きてちゃいけないと思って……斎藤さんを、見ちゃいけないのかなって……」
「そうか。まぁ、それで正しいだろうな。もし俺が戻った時に目が覚めていても、昨夜のように寝た振りをしていろ」
顔を上げると斎藤に真っ直ぐ見据えられており、夢主は小さく頷いた。
「夜の巡察は激しいからな。時に昂ぶる事もある。昨日はそんな気分では無かったがな。まぁ寝ていれば俺は何もしない」
斎藤の言葉を聞きながら心臓の音が大きくなっていくのを感じた。
もし起きていたらどうなるのか、怖くて訊けなかった。
「そんな顔をするな。俺はな、お前を傷付けたくはないんだ」
夢主の恐れを見抜いたのか、静かな声だった。
薬を塗り終えると、斎藤はふっと口角を上げた。
微笑まれて、夢主は体が固まってしまう。力強くて優しい微笑だった。
「あっ、ありがとうございます……。ぁのっ……斎藤さんっ……」
「なんだ」
自分を見つめて言葉を待つ斎藤の姿に、夢主は体の中で高まる熱を感じた。心地よい温かさだ。
「私……今、幸せです」
「……そうか」
穏やかに告げると、斎藤も柔らかい表情で一言応えた。
それで充分だと、心満ち足りた顔付きだった。
「ふふっ」
夢主は潤った手を擦り、斎藤に微笑み返した。
この晩は、とても心地よい眠りに付く事が出来た。