45.眠れない刺激
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沖田もいなくなり静かになり、そろそろ眠ろと腰を上げた時、部屋を空けていた斎藤が戻ってきた。
「戻ったぞ。もう寝るか」
部屋に入るなり斎藤が声を掛けた。
「そこで沖田君とすれ違って酒の席に誘われたが断っておいたぞ。行きたかったか」
断ったばかりの酒席、斎藤も誘われ断っていた。
夢主は小さく首を振った。
「先程、沖田さんがいらしてお誘い下さったんですけど……私も断っちゃいました」
少し苦笑いをしながら首を傾げた。
「そうか。まぁ見知らぬ客人に会うのも疲れるだろう。お前は気を遣いすぎるからな」
そう言うとするりと羽織りを脱いだ。斎藤も寝巻に着替えるようだ。
気付いた夢主は静かに体を背けた。
しゅるしゅると背を向けていても帯や紐を解く様子が音で伝わる。
いつもの事だが、この音を聞いている間は緊張して体が強張ってしまう。
斎藤の動く音が止まり、着替えが終わったのかと夢主は恐る恐る確認した。
斎藤は食事と同様、着替えもとても早い。
しっかりと寝巻を着終えて、身頃の合わせを整えていた。
「あっ……」
「どうした」
後ろから漏れた夢主の声に、斎藤は振り返った。
「すみません……何でもないんです……ただ……」
斎藤の寝巻きの袖が捲れ、肘の辺りまで見えていた。
そこで、斎藤の腕についた刀傷に目が行ってしまったのだ。
「あぁ、これか。慣れんのか」
「はぃ……すみません。自分に無いものなのでつい……」
時々ふと目にする斎藤の体の傷、その度に声を漏らしてしまう。
「痛くは……無いのですよね……いつ頃の傷なのか、覚えてるんですか」
夢主は斎藤を見上げた。斎藤は自分の腕の傷を見ている。
「全てでは無いが、おおよそは覚えているな」
「そうですか……」
夢主は心配そうな表情を見せた。
「見てみるか」
「い、いえっ……」
そんなに気になるのならと、斎藤が夢主の前にしゃがみこみ、右腕を差し出した。
斎藤の傷をこんな間近で目にするのは初めてだ。
捲った袖から伸びた逞しい腕には、幾つかの刀傷がくっきりと残っていた。
夢主は無意識に傷へ手を近づけるが、触れられずに手が止まる。
傷痕を見つめる表情は曇っていた。
「ご自愛下さいね……」
無茶な戦いを繰り返しているのではないかと不安が湧き起こる。
不死身なのは分かっていても、体に傷が増えていくのは見ていて辛い。
そして夢主の顔の翳りには、己の過去が思い出せない……そんな現実も含まれていた。
幾度の戦いで受けた傷、その自らの歴史をしっかりと認識している斎藤。
それに引き換え自分は。
そんな想いに気が付いた斎藤は、右手の袖を元に戻すと夢主の前に改めて座り直した。
「お前にだって傷の一つや二つはあるだろう」
「えっ?」
「膝小僧を見てみろ。ぱっと見分からなくとも、よく見れば一つや二つ、消えずに残っているんじゃないのか」
「あ……」
夢主は斎藤から隠すように、背中を向けて着物の裾をちらりと捲った。
自分の膝をじっくりと確認する。
「戻ったぞ。もう寝るか」
部屋に入るなり斎藤が声を掛けた。
「そこで沖田君とすれ違って酒の席に誘われたが断っておいたぞ。行きたかったか」
断ったばかりの酒席、斎藤も誘われ断っていた。
夢主は小さく首を振った。
「先程、沖田さんがいらしてお誘い下さったんですけど……私も断っちゃいました」
少し苦笑いをしながら首を傾げた。
「そうか。まぁ見知らぬ客人に会うのも疲れるだろう。お前は気を遣いすぎるからな」
そう言うとするりと羽織りを脱いだ。斎藤も寝巻に着替えるようだ。
気付いた夢主は静かに体を背けた。
しゅるしゅると背を向けていても帯や紐を解く様子が音で伝わる。
いつもの事だが、この音を聞いている間は緊張して体が強張ってしまう。
斎藤の動く音が止まり、着替えが終わったのかと夢主は恐る恐る確認した。
斎藤は食事と同様、着替えもとても早い。
しっかりと寝巻を着終えて、身頃の合わせを整えていた。
「あっ……」
「どうした」
後ろから漏れた夢主の声に、斎藤は振り返った。
「すみません……何でもないんです……ただ……」
斎藤の寝巻きの袖が捲れ、肘の辺りまで見えていた。
そこで、斎藤の腕についた刀傷に目が行ってしまったのだ。
「あぁ、これか。慣れんのか」
「はぃ……すみません。自分に無いものなのでつい……」
時々ふと目にする斎藤の体の傷、その度に声を漏らしてしまう。
「痛くは……無いのですよね……いつ頃の傷なのか、覚えてるんですか」
夢主は斎藤を見上げた。斎藤は自分の腕の傷を見ている。
「全てでは無いが、おおよそは覚えているな」
「そうですか……」
夢主は心配そうな表情を見せた。
「見てみるか」
「い、いえっ……」
そんなに気になるのならと、斎藤が夢主の前にしゃがみこみ、右腕を差し出した。
斎藤の傷をこんな間近で目にするのは初めてだ。
捲った袖から伸びた逞しい腕には、幾つかの刀傷がくっきりと残っていた。
夢主は無意識に傷へ手を近づけるが、触れられずに手が止まる。
傷痕を見つめる表情は曇っていた。
「ご自愛下さいね……」
無茶な戦いを繰り返しているのではないかと不安が湧き起こる。
不死身なのは分かっていても、体に傷が増えていくのは見ていて辛い。
そして夢主の顔の翳りには、己の過去が思い出せない……そんな現実も含まれていた。
幾度の戦いで受けた傷、その自らの歴史をしっかりと認識している斎藤。
それに引き換え自分は。
そんな想いに気が付いた斎藤は、右手の袖を元に戻すと夢主の前に改めて座り直した。
「お前にだって傷の一つや二つはあるだろう」
「えっ?」
「膝小僧を見てみろ。ぱっと見分からなくとも、よく見れば一つや二つ、消えずに残っているんじゃないのか」
「あ……」
夢主は斎藤から隠すように、背中を向けて着物の裾をちらりと捲った。
自分の膝をじっくりと確認する。