45.眠れない刺激
夢主名前設定
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そっと衝立の向こうへ回り、夢主の枕元へ腰を落とした。
夢主は斎藤から体を逸らすように部屋の奥を向いている。
本当に寝ているのか、起きているのか。
目を閉じて動かないが、寝息とは違う呼吸が繰り返されている。
斎藤は反応が無い夢主を黙って見つめた。
……自分の……ものに……俺の……
土方の言葉に動かされた斎藤、夢主の無垢な横顔を眺めていると、今度はいつかの沖田の言葉が思い浮かんだ。
休息所で斎藤の悪い冗談に返した言葉だ。
沖田の優しく美しい理想。
俺にはそんなもの……斎藤はあの時、そう思って聞いていた。
――惚れた女を押し倒したらどうだ。満たされるだろうよ……
――愛しい人が自分の下で泣きながら嫌がっているのに抱いてしまうなんて……
心も体も……全てを委ねてくれる……受け入れて曝け出して応じてくれる……
だからせめて、優しく……大事にしてあげたいじゃないですか……
幸せだって、感じて欲しい……
沖田の言葉が頭を過ぎ去ると、夢主はほんの少し顔を近付けた。
「夢主……」
小さく呼び掛けるが夢主は静かに横たわっている。
――私、とっても幸せです……
静かな横顔に、斎藤は以前そう言いながら嬉し涙を一雫、垂らして笑った夢主を思い出した。
「お前は今も幸せか」
そう言うと爪の甲で夢主の頬を撫でるように触れた。
瞬間、夢主の目元が動いた気がした。無意識の反応か。
狸寝入りをしているならば……随分と上手いな。
斎藤は手を離すと心の中で笑った。
夢主はずっと目を閉じているうちに本当に意識を失いかけていた。
斎藤が帰ったと悟った時、咄嗟に体を横向け、部屋の奥を向いた。
少しでも起きている事を悟られないようにしたつもりだった。
そして眠気を思い出そうと何も考えずに目を瞑っていた。それが功を奏して自然と気配を消せたのだ。
斎藤が隣にいる緊張は隠しきれなかったが、夢主にしては上出来だった。
やがて斎藤が傍に寄って来るのを感じたが、目を開けてはいけないと自分に強く言い聞かせていた。
夜の巡察帰りは皆気持ちが昂ぶっている。そんな話をよく聞いたものだ。
屯所内の空気でそれが嘘ではなかったと実感していた。
斎藤も例外ではないのかもしれない。
だから夢主はひたすら目を閉じて、目を閉じてと、心の中で念じていた。
目が合えば良くない事が起きてしまう、そんな恐れがあった。
所が不意に聞こえた斎藤の言葉に、夢主は耳を疑った。
「お前は今も幸せか」
言葉の直後に頬に感じた冷たくて硬い斎藤の爪の感触。
ぞくりとすると共に、胸の奥がじわり熱くなるのを感じた。
……幸せです……一緒にいられる今この時が……
目を開き、斎藤に手を伸ばしたい気持ちが湧いてきた。
それでも夢主は自分で決めた事を守ろうとした。
……今はまだ、その時が来るまで……斎藤さんにとって大事なその時が来るまでは……
時が来るまで決して求めない。
夢主が自分に言い聞かせていると、満足したのか斎藤が立ち上がる衣擦れの音がした。
斎藤が自分の床に戻ったと分かり、ほっと安堵すると共に切なさも感じてしまった。
重くなった瞼を薄っすら開き、触られた頬を静かになぞってみた。
斎藤から受ける感触はいつも痺れと温かさを伴う。
夢主は目を閉じて、本当の眠りに落ちていった。
夢主は斎藤から体を逸らすように部屋の奥を向いている。
本当に寝ているのか、起きているのか。
目を閉じて動かないが、寝息とは違う呼吸が繰り返されている。
斎藤は反応が無い夢主を黙って見つめた。
……自分の……ものに……俺の……
土方の言葉に動かされた斎藤、夢主の無垢な横顔を眺めていると、今度はいつかの沖田の言葉が思い浮かんだ。
休息所で斎藤の悪い冗談に返した言葉だ。
沖田の優しく美しい理想。
俺にはそんなもの……斎藤はあの時、そう思って聞いていた。
――惚れた女を押し倒したらどうだ。満たされるだろうよ……
――愛しい人が自分の下で泣きながら嫌がっているのに抱いてしまうなんて……
心も体も……全てを委ねてくれる……受け入れて曝け出して応じてくれる……
だからせめて、優しく……大事にしてあげたいじゃないですか……
幸せだって、感じて欲しい……
沖田の言葉が頭を過ぎ去ると、夢主はほんの少し顔を近付けた。
「夢主……」
小さく呼び掛けるが夢主は静かに横たわっている。
――私、とっても幸せです……
静かな横顔に、斎藤は以前そう言いながら嬉し涙を一雫、垂らして笑った夢主を思い出した。
「お前は今も幸せか」
そう言うと爪の甲で夢主の頬を撫でるように触れた。
瞬間、夢主の目元が動いた気がした。無意識の反応か。
狸寝入りをしているならば……随分と上手いな。
斎藤は手を離すと心の中で笑った。
夢主はずっと目を閉じているうちに本当に意識を失いかけていた。
斎藤が帰ったと悟った時、咄嗟に体を横向け、部屋の奥を向いた。
少しでも起きている事を悟られないようにしたつもりだった。
そして眠気を思い出そうと何も考えずに目を瞑っていた。それが功を奏して自然と気配を消せたのだ。
斎藤が隣にいる緊張は隠しきれなかったが、夢主にしては上出来だった。
やがて斎藤が傍に寄って来るのを感じたが、目を開けてはいけないと自分に強く言い聞かせていた。
夜の巡察帰りは皆気持ちが昂ぶっている。そんな話をよく聞いたものだ。
屯所内の空気でそれが嘘ではなかったと実感していた。
斎藤も例外ではないのかもしれない。
だから夢主はひたすら目を閉じて、目を閉じてと、心の中で念じていた。
目が合えば良くない事が起きてしまう、そんな恐れがあった。
所が不意に聞こえた斎藤の言葉に、夢主は耳を疑った。
「お前は今も幸せか」
言葉の直後に頬に感じた冷たくて硬い斎藤の爪の感触。
ぞくりとすると共に、胸の奥がじわり熱くなるのを感じた。
……幸せです……一緒にいられる今この時が……
目を開き、斎藤に手を伸ばしたい気持ちが湧いてきた。
それでも夢主は自分で決めた事を守ろうとした。
……今はまだ、その時が来るまで……斎藤さんにとって大事なその時が来るまでは……
時が来るまで決して求めない。
夢主が自分に言い聞かせていると、満足したのか斎藤が立ち上がる衣擦れの音がした。
斎藤が自分の床に戻ったと分かり、ほっと安堵すると共に切なさも感じてしまった。
重くなった瞼を薄っすら開き、触られた頬を静かになぞってみた。
斎藤から受ける感触はいつも痺れと温かさを伴う。
夢主は目を閉じて、本当の眠りに落ちていった。