44.本気のお稽古
夢主名前設定
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夢主は一度木刀を下ろし、ふぅっ……と大きく息を吐いて気持ちを落ち着かせ、構え直した。
今度は何とか形になっている。
「い、いきます……」
静かに言うと、斎藤に向け木刀を振り下ろした。
つもりなのだが……
「ひやぁぁっっ……?」
訳もわからぬうちに道場の床に転がり、気付けば右手首を斎藤に掴まれていた。
「えぇっ……えぇえっ?」
何が起きたか全く理解出来なかった。
夢主が振り下ろしにいった時、斎藤は自らの木刀から右手を離した。
そして向かってくる木刀を流れるようにすり抜け、斎藤の右手が夢主の右手首を掴む。
斎藤は手首を掴んだまま、己の体を反転させつつ夢主の手を沈めながらひねった。
夢主は木刀を落とし、体ごとねじられ床に転がったのだ。
ひっくり返った夢主のすぐ横で、斎藤が手首を掴んだまま腰を落とし、片膝を付いていた。
左手には木刀を持ったまま、一瞬の出来事だった。
「フッ、お前知らなかったのか、天然理心流は何でもあり。刀を構えても足が飛んでくる、剣を落としても拳を構える。木刀を構えたからといって木刀で受ける決まりは無い。聞いた事ないか」
「あ……あります……けどっ、斎藤さんは、いっ、一刀流?ではないのですか」
「フン、流派が何であろうが、実戦でやる事は同じだ。お前は今、俺の木刀しか見ていなかった。だから隙が出来た。そういう事だ」
ぷぅっと頬を膨らませて夢主は斎藤を見ている。
打ち込みの練習だと思っていた。
それに始めたばかりでそこまで要求されても出来るわけが無いと拗ねた。
「それにな、俺は向かっていかなくても良いと思うがな、そんな必要は……」
斎藤は消えそうな声でぽつりと呟いた。
「えっ」
「いや、何でもない。女が敵と向き合ったら、相手によっては殺される前に手篭めにされると覚悟しておけ。お前みたいなのは特にな。嫌なら必死で逃げろ」
「は……ぃ……」
「男ならば死して誇りを守れ。そう言いたい所だが、お前は違う。命を守る為に敵に取り入ったっていい、従順に従い受け入れるふりをして、助けが来るのを待つのも悪くは無い。俺は捜すのは得意だ。……命だけは捨てるな」
「はぃ……」
斎藤は真面目な顔で静かに伝えた。
絶対に生きろ、命を粗末にするなと。
「死ななければ、必ず見つけ出す。本当に美しい物は決して穢れはしない」
「斎藤さん……」
自分の身にそんな修羅場が訪れるなど想像もつかない。
だがもしそんな時が来たら、諦めずに俺を待っていろ、斎藤の言葉は夢主にそう聞こえた。
「お待たせしましたー!わっ、斎藤さん!何してるんですか!目を離すとすぐにこれですっ!!」
戻ってきた沖田が目にしたのは、斎藤が夢主の手首を掴んで床に押し倒している光景、に見えた。
「おっ、沖田さんっ、誤解ですっ!あの、大事な事を教えていただいたんですっ」
「だっ大事なことっ」
沖田は赤くなった顔を歪めて二人を見た。
「はいっ、その剣術の……です!あ、私もお水、飲んできますねっ!」
説明しきれず困った夢主は斎藤に手を離してもらい、誤魔化して立ち上がった。
すれ違いざま、沖田に苦笑いを向けて道場を出て行った。
「あぁっ、沖田さん変な誤解を……戻る頃には落ち着いてるかなぁっ」
夢主は顔を火照らせて飛び出したが、やがて急ぎ足を緩め、時間を掛けて歩いて行った。
今度は何とか形になっている。
「い、いきます……」
静かに言うと、斎藤に向け木刀を振り下ろした。
つもりなのだが……
「ひやぁぁっっ……?」
訳もわからぬうちに道場の床に転がり、気付けば右手首を斎藤に掴まれていた。
「えぇっ……えぇえっ?」
何が起きたか全く理解出来なかった。
夢主が振り下ろしにいった時、斎藤は自らの木刀から右手を離した。
そして向かってくる木刀を流れるようにすり抜け、斎藤の右手が夢主の右手首を掴む。
斎藤は手首を掴んだまま、己の体を反転させつつ夢主の手を沈めながらひねった。
夢主は木刀を落とし、体ごとねじられ床に転がったのだ。
ひっくり返った夢主のすぐ横で、斎藤が手首を掴んだまま腰を落とし、片膝を付いていた。
左手には木刀を持ったまま、一瞬の出来事だった。
「フッ、お前知らなかったのか、天然理心流は何でもあり。刀を構えても足が飛んでくる、剣を落としても拳を構える。木刀を構えたからといって木刀で受ける決まりは無い。聞いた事ないか」
「あ……あります……けどっ、斎藤さんは、いっ、一刀流?ではないのですか」
「フン、流派が何であろうが、実戦でやる事は同じだ。お前は今、俺の木刀しか見ていなかった。だから隙が出来た。そういう事だ」
ぷぅっと頬を膨らませて夢主は斎藤を見ている。
打ち込みの練習だと思っていた。
それに始めたばかりでそこまで要求されても出来るわけが無いと拗ねた。
「それにな、俺は向かっていかなくても良いと思うがな、そんな必要は……」
斎藤は消えそうな声でぽつりと呟いた。
「えっ」
「いや、何でもない。女が敵と向き合ったら、相手によっては殺される前に手篭めにされると覚悟しておけ。お前みたいなのは特にな。嫌なら必死で逃げろ」
「は……ぃ……」
「男ならば死して誇りを守れ。そう言いたい所だが、お前は違う。命を守る為に敵に取り入ったっていい、従順に従い受け入れるふりをして、助けが来るのを待つのも悪くは無い。俺は捜すのは得意だ。……命だけは捨てるな」
「はぃ……」
斎藤は真面目な顔で静かに伝えた。
絶対に生きろ、命を粗末にするなと。
「死ななければ、必ず見つけ出す。本当に美しい物は決して穢れはしない」
「斎藤さん……」
自分の身にそんな修羅場が訪れるなど想像もつかない。
だがもしそんな時が来たら、諦めずに俺を待っていろ、斎藤の言葉は夢主にそう聞こえた。
「お待たせしましたー!わっ、斎藤さん!何してるんですか!目を離すとすぐにこれですっ!!」
戻ってきた沖田が目にしたのは、斎藤が夢主の手首を掴んで床に押し倒している光景、に見えた。
「おっ、沖田さんっ、誤解ですっ!あの、大事な事を教えていただいたんですっ」
「だっ大事なことっ」
沖田は赤くなった顔を歪めて二人を見た。
「はいっ、その剣術の……です!あ、私もお水、飲んできますねっ!」
説明しきれず困った夢主は斎藤に手を離してもらい、誤魔化して立ち上がった。
すれ違いざま、沖田に苦笑いを向けて道場を出て行った。
「あぁっ、沖田さん変な誤解を……戻る頃には落ち着いてるかなぁっ」
夢主は顔を火照らせて飛び出したが、やがて急ぎ足を緩め、時間を掛けて歩いて行った。